レコードで聴くモンク入門:Thelonious Monkの名盤と聴き方ガイド
はじめに — モンクという孤高の音楽家
Thelonious Monk(セロニアス・モンク)は、ピアノ奏法・作曲・即興のすべてにおいて独自性を貫いたジャズの巨匠です。その音楽は一聴してわかる“モンク節”──角張ったリズム、間(あいだ)を生かしたユニークなフレージング、不協和音をいとわない和声感覚──で知られ、ビバップ以降のモダン・ジャズに決定的な影響を与えました。本稿では「レコードで聴くモンク」をテーマに、入門から深掘りまでおすすめの作品をピックアップし、それぞれの魅力を詳しく解説します。
代表曲・“モンク語法”のキーワード
’Round Midnight — モンクの代表曲。静寂と緊張感が同居する名バラード。
Blue Monk — ブルースをモンク流にほどよく捻った定番。
Straight, No Chaser — 強靭なリフと即興の絡みが光るナンバー。
Brilliant Corners — 複雑なリズム・和声進行が特徴の長尺作。
Epistrophy, Well You Needn’t — モンクの不協和・反復手法がよくわかる小品群。
おすすめレコード・詳細ガイド
Brilliant Corners(1957 / Riverside)
なぜ聴くべきか:構造の複雑さや編曲の独創性で知られるモンクの代表作。タイトル曲はリズム・セクションとピアノが高度にかみ合う長大作品で、モンク・ワールドの深度を体感できます。
聴きどころ:冒頭のテーマ提示から展開、即興への移行の仕方。特にタイトル曲の“テーマ+即興”の組み立ては教科書的。
おすすめプレス:オリジナル・リバーサイドLP(モノラル)を一度は聴いてほしいですが、入手困難なら信頼できるアナログ再発(名門のカッティング/リマスターを使ったプレス)を探すのが現実的です。
Monk’s Music(1957 / Riverside)
なぜ聴くべきか:同年のセッションながら、編成の豪華さと即興の自由さが際立つ一枚。モンクが交流した諸ミュージシャン(名だたるホーン奏者たち)とのやり取りから、彼の作曲とリーダーシップの幅を感じられます。
聴きどころ:『’Round Midnight』などの名演を含む、スタジオでの即興の空気感。楽曲ごとに表情が変わるのも魅力です。
Thelonious Monk with John Coltrane(諸版あり)
なぜ聴くべきか:モンクと若きジョン・コルトレーンが共演した重要な記録群。二人の相性の良さ、モンクの和声的な自由さにコルトレーンの熱量が触発される瞬間が聴けます。
聴きどころ:短編ながら即座に火花が散るセッション。モンクの伴奏に対するコルトレーンの反応、そして両者のフレーズ交換。
Monk’s Dream(1963 / Columbia)
なぜ聴くべきか:コロンビア移籍後の最初期のスタジオ作で、モンクの“円熟と普遍性”が明確になった一枚。音質・演奏ともに良好で、入門者にも聴きやすい。
聴きどころ:チャーリー・ラウズ(テナー)との長期間にわたる相性の良さが前面に出る点。同作はモンク楽曲のスタンダード化を示す側面もあります。
Thelonious Himself / Solo Monk(ピアノ独奏盤)
なぜ聴くべきか:モンクの“素”がもっともダイレクトに伝わるソロ・ピアノの記録。和声感覚、タッチ、間の取り方など、伴奏がいない分だけモンク自身の表現が露わになります。
聴きどころ:’Round Midnight を含む名曲のソロ解釈。ごく近距離で聴くモンクの表情—不安定さと確信の混在—が味わえます。
Misterioso(Live at the Five Spot, 1958 / Riverside)
なぜ聴くべきか:ライブ盤ならではの緊張感と即興の自由さが堪能できる重要作。少人数編成での対話的な演奏が魅力です。
聴きどころ:観客の反応が入るライブ録音で、即興の生々しさ、曲ごとに異なる空気感を堪能できます。
Underground(1968 / Columbia)およびStraight, No Chaser(1967 / Columbia)
なぜ聴くべきか:コロンビア期の中期以降の作品。プロダクションや編成の面でバラエティに富み、モンクの様々な顔を知るのに有効です。社会的メッセージやユーモアがより顕在化した曲もあります。
入門→中級→深掘り:聴く順のおすすめ
入門:Monk’s Dream、Brilliant Corners — 曲の明快さと演奏の完成度が高く、モンク入門に最適。
中級:Monk’s Music、Thelonious Monk with John Coltrane — 他の名手と交わることで見える新たな側面を味わう。
深掘り:ソロ・アルバム(Thelonious Himself / Solo Monk)、Misterioso(ライブ) — モンク個人の語法やライブの即興性に深く触れられる。
レコード選びのポイント(音楽的観点)
モンクはピアノのタッチや空気感が重要なので、音のディテールが出る良好なマスタリングを選ぶと表情がよく伝わります。
オリジナル・モノ盤(可能なら)には独特の空気感とダイナミクスがあることが多いですが、状態や入手性を考えると優れたアナログ再発を選ぶのも合理的です。
作曲の構成を理解したい場合は、歌詞カードやライナーノーツ(場面解説やセッション情報)が充実したエディションを選ぶと理解が深まります。
聴きどころの聴き方・注目ポイント
“間”を見る:モンクはフレーズ間の無音や間合いを効果的に使います。余白を恐れず、音が消える瞬間を聴いてください。
和声の“ずらし”に注目:トライアドやテンションを意図的にずらすことで生まれるスリルを感じ取ってみましょう。
対話性を観察:ホーン奏者との掛け合いやリズム・セクションとの微妙なやり取りが、モンクの名演の核心です。
コレクションの楽しみ方
モンクのディスコグラフィはセッションごとに編成や録音状況が変わり、同じ曲でも別録音で表情が大きく異なります。お気に入りの一枚を見つけたら、同曲の別バージョンを比較してみると、モンクの多面性がよく分かります。
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参考文献
- Thelonious Monk — Wikipedia
- Thelonious Monk — Biography (AllMusic)
- Thelonious Monk — Discogs
- Thelonious Monk — Sessionography (JazzDisco.org)
- Robin D. G. Kelley, "Thelonious Monk: The Life and Times of an American Original" (Harvard University Press)


