キャノンボール・アダレイの名盤ガイド:時代順・スタイル別のおすすめレコードと聴きどころ

イントロダクション — キャノンボール・アダレイとは

キャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley, 1928–1975)は、アルト・サクソフォンを吹くジャズ・アーティストとして1950〜60年代のハード・バップ/ソウル・ジャズの最前線に立った存在です。温かく人懐こいサウンド、ブルースに根ざしたフレーズ、そして弟のナット・アダレイ(コルネット)を中心にしたクインテットでの強いアンサンブル感が特徴で、ジャズ・ポピュラリティの拡大にも貢献しました。本稿では、彼の音楽世界を理解するうえで特に聴くべきおすすめレコードを時代順・スタイル別に深掘りして紹介します。

おすすめレコード一覧(解説付き)

  • Somethin' Else(Blue Note, 1958)

    なぜ聴くべきか:キャノンボールの代表作かつBlue Noteの名盤。特筆すべきはマイルス・デイヴィスが参加している点で、アルトとトランペットの対話が非常に魅力的です。ハード・バップの洗練とブルージーな温度が同居します。

    ポイント:

    • 録音の質・演奏の充実度が高い(名曲「Autumn Leaves」「Love for Sale」等の解釈が秀逸)。
    • マイルス・デイヴィスとの共演は、キャノンボールのフレーズの暖かさが対照的に光る。
    • 入門盤として、またアルト・サックスの表現を学ぶレコードとして最適。
  • The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco(Riverside, 1959)

    なぜ聴くべきか:ライブ録音による圧倒的な熱量と観客との一体感で、ソウル・ジャズの代名詞的作品となった一枚。「This Here」などのヒットでジャズをよりポピュラーにした重要作です。

    ポイント:

    • ボビー・ティモンズ作の「This Here」は、ゴスペル感とリズムの躍動を絶妙に取り入れた名演。
    • クインテットの結束力(ナット・アダレイのホーン、ティモンズのピアノ、リズム隊)がよく分かる。
    • ライブならではのMCや観客反応も含めて、当時の空気感を味わえる。
  • Cannonball's Bossa Nova(1962)

    なぜ聴くべきか:60年代のボサノヴァ・ブームに触発された作品で、クインテットによるラテン〜ブラジル・フィールの取り入れ方が興味深い。多彩な編曲でキャノンボールの柔軟性が見える一枚です。

    ポイント:

    • ボサやラテン・リズムをジャズの即興と融合させる試み。
    • ポップス的な親しみやすさを持ちながら、演奏の質は高い。
  • Nippon Soul(Riverside, 1964、録音は1963年来日公演)

    なぜ聴くべきか:来日公演のライヴ録音で、海外での人気と日本の聴衆の熱狂を伝える記録的なアルバム。ジョー・ザヴィヌルが参加し、クインテットのサウンドが新たな色合いを帯びています。

    ポイント:

    • 来日ツアーならではの高揚感。アジアでのジャズ普及史を知るうえでも興味深い。
    • ジョー・ザヴィヌル加入後のサウンド変化(よりモダンでリズミックなアプローチ)。
  • Mercy, Mercy, Mercy! Live at "The Club"(Capitol, 1966)

    なぜ聴くべきか:ジョー・ザヴィヌル作のタイトル曲が商業的にも大ヒットし、キャノンボールの“ポピュラーな顔”を広く知らしめたアルバム。ソウルフルで都会的なグルーヴが際立ちます。

    ポイント:

    • 「Mercy, Mercy, Mercy」はシンプルながら強烈なキャッチーさでライブでも盛り上がる定番。
    • この時期の作品はラジオ受けもしやすく、ジャズ・リスナー以外にも届きやすい。
  • Why Am I Treated So Bad?(1967)

    なぜ聴くべきか:社会的テーマやゴスペル的要素を含む楽曲構成で、60年代後半の時代感とアーティストの関心が反映された作品です。表現の幅が広がる過程を感じられます。

    ポイント:

    • よりメッセージ性を帯びた選曲・演奏が増え、ソウルフルな感情表出が前面に出ている。
    • 当時のブラック・ミュージック勢と共鳴する側面があり、歴史的文脈としても興味深い。

各盤の“聴きどころ”をもう少し具体的に

Somethin' Else:マイルスとキャノンボールの音の掛け合い、曲ごとのテンポ感とアレンジの洗練。アルト・サックスの表現力を学びたい人にベスト。

San Francisco(ライブ):観客との一体感、演奏の躍動、グルーヴ。ジャズのライブ体験を味わうならまずこれ。

Nippon Soul:来日時の熱気、ザヴィヌルの切れ味あるアレンジ。バンドの編成変化を辿る好資料。

Mercy, Mercy, Mercy!:ラジオヒット曲の魅力、シンプルなメロディの強さ。ジャズでも“曲”の力を感じたいときに。

初めて買うなら・聴く順のおすすめ

  • 入門:Somethin' Else → The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco
  • 黄金期の発展を見る:San Francisco → Nippon Soul → Mercy, Mercy, Mercy!
  • より深く:各アルバムの追加トラックや別テイク、ライブ録音へ。

レーベル/プレスの目安(コレクター向けのヒント)

代表作はオリジナル・レーベル(Somethin' Else=Blue Note、1959前後のクインテット作=Riverside、1966以降のヒットはCapitolなど)を優先して探すと当時の音色・雰囲気が楽しめます。日本盤は音質・ライナーノーツの充実した良再発が多く出ていますので、CDや高品質なアナログ再発(正規リマスター)も検討すると良いでしょう。

聴く際の楽しみ方/注目点

  • ナット・アダレイとのホーン・ハーモニー(クインテット時代)に注目すると、アンサンブルの妙が見えます。
  • ジョー・ザヴィヌルやボビー・ティモンズなどピアニストの個性がサウンドに大きく影響するので、ピアノ奏者の変遷にも注目して聴くと面白いです。
  • スタジオ録音とライヴ録音での表現の違い(余白・MC・即興の伸び)を比較すると、キャノンボールの多面的な魅力がさらに分かります。

まとめ

キャノンボール・アダレイは「メロディックで聴きやすいアルト奏者」としてジャズの裾野を広げつつ、バンドとしての高い芸術性も維持した稀有な存在です。まずはSomethin' ElseとSan Franciscoを押さえ、そこからボサやザヴィヌル期、商業的成功期の作品へと広げていく聴き方をおすすめします。各盤には彼の“人間味”あふれるフレージングと当時のジャズ・シーンの空気が収められているので、時代背景も味わいながら聴いてみてください。

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参考文献