Merle Travisのトラヴィス・ピッキングを極める:初心者向けのおすすめレコードと聴き方ガイド
はじめに — Merle Travisとは何者か
Merle Travis(メル・トラビス、1917–1983)はアメリカのカントリー/フォーク系ギタリスト兼シンガーソングライターで、いわゆる「Travis picking(トラヴィス・ピッキング)」というフィンガースタイルの原型を確立した人物です。作曲家としても優れ、「Sixteen Tons」や「Dark as a Dungeon」など、後世に多大な影響を与えた楽曲を生み出しました。本稿ではレコード(LP/ヴァイナル含む)で楽しむのに特におすすめしたい作品を中心に、聴きどころや選び方のポイントを詳しく解説します。
おすすめレコード一覧(厳選)
Folk Songs of the Hills(1947、代表作)
Merle Travisの名を広く知らしめた記念碑的作品。彼の歌作りの才とギター奏法がコンセプト的にまとまったアルバムで、「Sixteen Tons」「Dark as a Dungeon」「Nine Pound Hammer」などの代表曲が収められています。アメリカ西部/炭鉱労働を題材にしたテーマ性、静かな語り口と緻密なギター伴奏が同居する聴きごたえのある一枚です。
聴きどころ:
- 歌唱とギターが一体化した"語り"のような表現。
- トラヴィス・ピッキングの基本フレーズやベースラインの扱い方がよく分かる。
- 同時代のカントリーブルースや労働歌の文脈で作品を味わえる点。
ギター・インスト/技巧を味わうための選盤(例:Walkin' the Strings / Guitar Instrumentals)
トラヴィスのギター技巧、インストルメンタルをじっくり聴きたいなら、器楽中心の収録がある盤を選ぶと効果的です。代表的なナンバーとして「Cannonball Rag」などの速弾き・ピッキング曲がレパートリーに含まれていることが多く、テクニックを学ぶプレイヤーにも人気があります。
聴きどころ:
- ベースの親指弾きとメロディの交差する構造を鮮明に確認できる。
- 右手(ピッキング・パターン)の微妙なニュアンス、テンポの揺れを楽しむ。
編集盤・ベスト(The Best of / The Merle Travis Collection 等)
初めて聴くなら編集盤やベスト盤が効率的。主要曲やヒット曲、入手困難なシングル音源をまとめて聴けるので、Merle Travisの幅(歌もの・インスト双方)を短時間で把握できます。リマスター盤やボックスセットは音質面でも利点があるため、CDや高品質なアナログ再発を検討する価値があります。
聴きどころ:
- 時代ごとの音作りの変化、録音クオリティの差を比較できる。
- 代表曲以外の隠れた名曲や未発表・レア音源を収めたものもある。
ボックスセット/全集(例:Bear Familyなどによる全集)
コレクターや研究目的であれば、レーベル系の完全盤/箱物がおすすめ。シングル曲、ラジオ用録音、未発表トラック、詳細なブックレットが付属することが多く、作品の時系列的な変遷や制作背景を深く理解できます。
聴きどころ:
- デモや別テイクにより曲の成立過程や編曲の変遷が見える。
- ブックレットの解説で当時の文脈(レーベル状況、共演者)を学べる。
各アルバムを深掘り:聴き方と注目ポイント
1) 歌詞と背景に注目する(作品理解を深める)
Merle Travisの多くの歌は炭坑労働や労働者の生活を主題としています。歌詞に込められた社会的メッセージや比喩表現を読み解くことで、同時代のアメリカ社会の姿が浮かび上がります。英語の歌詞が苦手でも、曲ごとに短く訳してメモしておくと理解が深まります。
2) トラヴィス・ピッキングの「構造」を聴き分ける
特徴は、親指で低音(ベース)を一定のパターンで刻み、他指でメロディや装飾音を入れること。次の点に注意して聴いてみてください:
- ベースラインが鼓動のように曲全体を支えているか。
- メロディがどのタイミングで浮かび上がり、どのように伴奏と交代するか。
- テンポの揺れやための付け方(歌に合わせてギターが柔軟に変化する様子)。
3) 記録としての盤を比較する(オリジナル盤 vs リイシュー)
オリジナルの10インチ盤や初期LPは歴史的価値が高い一方で、録音の古さゆえに高域や低域の情報が限られることがあります。リイシューやリマスター盤は音像の明瞭さが向上している場合が多く、ギターのニュアンスを聴き取りやすくなります。購入時は「オリジナルの雰囲気」を優先するか、「演奏の細部を聴き取りたいか」を基準に選ぶと良いでしょう。
ヴァイナル購入時の実用アドバイス(盤そのものの世話以外)
- エディション情報をチェック:オリジナル盤、再発/リマスター、編集盤(曲目が異なる場合あり)を確認する。
- ブックレットやライナーノーツの有無:曲解説や録音年が記載されていると理解が深まる。
- 曲目リストを参照して目的のテイク(シングル・アルバム・デモなど)が入っているか確かめる。
- コレクション目的なら、信頼できるレーベル(大手リマスター、Bear Familyのような専門レーベル)を優先するのが無難。
おすすめの聴き順(初心者向け)
- まずは編集盤・ベスト盤で代表曲を把握する(出発点として最適)。
- その後、代表作「Folk Songs of the Hills」を通して聴き、歌の文脈を掴む。
- インスト中心の盤でギターの細部(トラヴィス・ピッキング)を集中して聴く。
- さらに興味が湧いたらボックスセットや未発表音源で史的経緯を掘り下げる。
代表曲・キートラック(入門リスト)
- Sixteen Tons — Merle Travis作。後に多数のカバーで有名に。
- Dark as a Dungeon — 炭鉱労働の厳しさを歌った名曲。
- Nine Pound Hammer — 労働歌・伝承歌の系譜にある力強い一曲。
- Cannonball Rag — ギター・インストの代表作。トラヴィス・ピッキングの教科書的フレーズを含む。
まとめ:何を選ぶかは「聴きたい経験」で決める
Merle Travisの魅力は「歌」「語り」「ギター技巧」が一体となったところにあります。まずは代表曲を押さえた編集盤で親しみ、その上で「歌中心(Folk Songs of the Hills)」か「ギター中心(インスト集)」か自分の興味に合わせて深掘りするのが王道です。コレクターであればボックスセットやオリジナル盤で史的価値を楽しむのも良いでしょう。
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