Cat5eケーブル徹底ガイド:規格・性能・用途・認証・Cat6比較まで詳しく解説
Cat5eとは
Cat5e(Category 5e、カテゴリー5e)は、ツイストペア銅線ケーブルの規格の一つで、主にLAN(イーサネット)配線に使われます。通称「カテゴリ5エンハンスト(enhanced)」で、従来のCat5規格を改良して近端クロストーク(NEXT)などの性能要件を強化したものです。商用規格としてTIA/EIA-568の拡張(568-B.2-1)で定義され、最大周波数100MHzまでの伝送性能を保証します。Cat5eは1000BASE-T(ギガビットイーサネット)を100mの配線で安定してサポートできることから、オフィスや家庭のネットワーク配線で長年の標準として広く使われてきました。
規格と性能(主要スペック)
- 伝送帯域:最大100MHz(規格上)
- ペア数:4対(計8芯)ツイストペア
- 導体径:一般的に24AWG(ケーブル種類により若干変動)
- 最大配線長:100メートル(水平配線90m+パッチコードなどの予備10mを含む一般的な構成)
- 対応規格:100BASE-TX、1000BASE-T(IEEE 802.3ab)など
- 性能改善項目:NEXT(近端クロストーク)、PS-NEXT(パワーサムNEXT)、ACR(利得余裕)、遅延スキュー、挿入損失、リターンロス等がCat5より厳密に規定されている
Cat5eの歴史的背景
Cat5eは2000年代初頭にCat5の拡張として普及しました。Gigabit Ethernet(1000BASE-T)が広まるにつれて、従来のCat5では十分なクロストーク性能を保証できない場合があったため、TIA/EIA-568規格においてCat5eが導入され、パワーサム(複数ペアを同時に考慮する)測定などが加えられました。以降、Cat5eはコスト面と性能のバランスが良く、長期間にわたって一般的な配線選択肢となっています。
構造と種類
Cat5eケーブルは主にUTP(Unshielded Twisted Pair:無遮蔽ツイストペア)で提供されますが、環境やノイズ対策の必要性に応じてシールド付(FTP、STP、S/FTPなど)も存在します。導体は実装用途に応じてソリッド(単芯、主に壁内配線)とストランド(撚り線、パッチコード向け)があります。
- UTP:一般的かつ安価。オフィスや家庭で広く使われる。
- FTP(Foiled Twisted Pair):全体に箔シールドを施したタイプで外来ノイズに強い。
- STP:ペアごとや全体に編組や箔シールドを施したタイプ。高ノイズ環境向け。
- ジャケット分類:CMP(Plenum)、CMR(Riser)、CM(一般用途)など、建築基準に適合する難燃性の違いがある。
Cat5eで期待できる用途
Cat5eは以下のような用途に適しています。
- 100BASE-TX(Fast Ethernet)および1000BASE-T(Gigabit Ethernet)のLAN配線
- VoIP(IP電話)やビデオ会議、IPカメラの映像伝送(帯域要件により可否は検討が必要)
- PoE(Power over Ethernet):規格上は対応。給電量が高いPoE++などは配線の発熱や電圧降下に注意が必要
- 一般的なデスクトップ接続やスイッチ間接続
ケーブル長と実用上の注意点
イーサネットでの一般的な目安は100メートル(水平配線90m+パッチ合計10m)です。これを超えると伝送品質(遅延、減衰、エラー等)が発生する可能性が高くなります。長距離が必要な場合は中継機器(スイッチ、メディアコンバータ)を設けるか、光ファイバーなど別の伝送媒体を検討するべきです。また、施工時の以下ポイントに注意してください。
- 許容曲げ半径を守る(通常ケーブル直径の4倍以上が目安)
- ツイストのほどきすぎを避ける(コネクタ処理時のツイストの長さは規定内に)
- 過度なテンションや引き込みは導体損傷や特性悪化を招く
- 電源ケーブルとの平行配線はクロストークや誘導ノイズの原因となるため距離を取る
Cat5との違い、Cat6との比較
Cat5eはCat5からNEXTなどの性能要件を強化したもので、実運用上はギガビットを安定してサポートします。一方、Cat6はさらに高い周波数(最大250MHz想定)とより厳しい構造・シールド要件により、より高いヘッドルームと将来性を持ちます。簡単に比較すると:
- Cat5:旧規格。Cat5eの登場により現在はほとんど置き換えられている。
- Cat5e:コストパフォーマンスに優れ、1Gbpsまでの要求に十分対応。
- Cat6:ノイズ耐性・2.5/5Gbpsや将来の高速化に有利(ただし配線長や実装状況に依存)。
識別方法と購入時のチェックポイント
ケーブルの被覆には多くの場合「CAT5E」「CATEGORY 5E」等の印字があります。購入時は以下をチェックしてください。
- 印字でカテゴリーが明記されていること(偽表記に注意)
- ソリッド/ストランドの区別(用途に応じて)
- ジャケットの難燃等級(CMP/CMR/CM)と設置環境の一致
- メーカーや規格準拠の明示(TIA/EIAやISO/IECの適合情報)
- 必要に応じてシールドの有無(FTP/STP)や外径・曲げ半径
施工と認証(テスト)の重要性
Cat5e配線でも、端末処理(コネクタ圧着、モジュラージャックへの配線)や現場の配線方法次第で性能が出ないことがあります。単なる通信チェックではリンク確立しても性能(エラー率、スループット)が不足するケースがあるため、本格的な導入時はケーブル認証ツール(Fluke等のケーブルサーティファイア)でNEXT、PS-NEXT、遅延スキュー、挿入損失などを測定して合格を確認することが推奨されます。簡易的な確認はケーブルテスターでも可能ですが、厳密な保証は認証機器によります。
よくあるトラブルと対処法
- リンク速度が100Mbpsに固定される:スイッチやNICのネゴシエーション、ピン配線不良、クロストークやシールド不良を疑う。パッチケーブルを変えてみる。
- 断続的なパケットロス:端子の接触不良、ケーブル損傷、過度な曲げや引っ張りによる導体損傷。
- ノイズ干渉:電源ケーブル近傍やモータ等の高ノイズ源から距離を取るかシールドタイプに変更する。
- 高温環境でのPoE運用:電流によりケーブルが発熱するため、束ねすぎを避ける。高出力PoEでは導体断面が影響する場合あり。
導入判断の目安と今後の考え方
現時点での中小規模オフィスや家庭用ネットワークで1Gbpsを主な要件とするなら、Cat5eはコスト効果が高く妥当な選択です。将来的に2.5/5/10Gbpsを見越す、あるいは高密度で束ねる環境やノイズが多い環境ではCat6以上の選択を検討してください。また、配線のライフサイクルを20年以上と見積もる大規模施設では初期投資としてCat6/Cat6Aや光ファイバーを採用するケースも増えています。
まとめ
Cat5eは「100MHzまでの性能を持ち、ギガビットイーサネットを100mでサポートする」汎用性の高いツイストペアケーブル規格です。コスト面で優れる一方、施工品質や設置環境によっては性能が発揮されないこともあるため、適切な選定と施工、必要なら認証試験を行うことが重要です。将来の帯域要求や電力供給(PoE)量を踏まえて、Cat5eを採用するか上位規格へ投資するかを判断してください。
参考文献
- Wikipedia: Category 5e cable
- IEEE 802.3ab-1999 (1000BASE-T)
- TIA (Telecommunications Industry Association) Standards
- Fluke Networks: What is Cat5e cable?
- CommScope: Cat5eケーブルに関するガイド(参考資料)


