Howlin' Wolfの名盤ガイド:ブルースの歴史と聴きどころを解説するおすすめアルバム集

はじめに — Howlin' Wolfとは

Howlin' Wolf(本名:Chester Arthur Burnett)は、20世紀中盤のシカゴ・ブルースを代表する存在です。低く、獰猛で圧倒的なボーカル、ハブート・サムリン(Hubert Sumlin)らとの絡み合うギター、そしてウィリー・ディクソン(Willie Dixon)らの楽曲提供による強烈なコンテンツは、その後のロック/ブルース系アーティストに多大な影響を与えました。本稿では、レコード(アルバム)単位で聴く価値の高いおすすめ作品をピックアップし、各作の聴きどころや歴史的背景、選ぶ際のポイントを解説します。

Moanin' in the Moonlight(1959)

概要:Howlin' Wolfの最初期シングル群を集めた編集盤。1951〜56年のシカゴ録音を中心に収録されており、彼の“原石”としての魅力がダイレクトに伝わる一枚です。

  • おすすめ収録曲:Smokestack Lightnin'、How Many More Years、No Place to Go、I Asked for Water
  • 聴きどころ:荒々しく生々しいヴォーカルと、短くも鋭いギター・フレーズ。シカゴ・ブルースの誕生期を体感できます。
  • 歴史的意義:シングル中心の時代にアルバムという形でまとめられたことで、後世のリスナーにHowlin' Wolfの“核”を伝えた代表作。

Howlin' Wolf(1962) —(通称:自己タイトル盤)

概要:Chessレーベルから出た自己タイトルのスタジオ盤(1962年)。アルバム・フォーマットでのまとまった制作意図が感じられる作品です。

  • おすすめ収録曲:Sitting on Top of the World(Howlin' Wolf流アレンジ)、Little Red Rooster(自作ナンバーの別ヴァージョンに相当)、Back Door Man(後のロック・カヴァーでも有名)
  • 聴きどころ:より“演奏”と“アルバムの流れ”を意識した編集。ハブート・サムリンのギターがより際立ち、ウィリー・ディクソンの影響力が強く見える。
  • 注目ポイント:初期シングル群に比べると音像が整っており、Howlin' Wolfの表現幅を感じられる一枚です。

The Real Folk Blues(1965)

概要:Chessが1960年代に“フォーク/ルーツ志向”のムーブメントに合わせて再編したコンピレーション。シングルの名曲群をまとめており、入門編としても優秀です。

  • おすすめ収録曲:Killing Floor、Wang Dang Doodle、Spoonful(ウィリー・ディクソン作)など
  • 聴きどころ:演奏の起伏・名曲の集中度が高く、ブルースのダイナミズムを一度に味わえます。
  • 活用法:名曲を網羅的に聴きたい人や、Howlin' Wolf入門としての定番盤。

The Howlin' Wolf Album(1969)

概要:1969年に制作されたアルバムで、当時のプロデューサーによるよりポップ寄り・商業的なアレンジが施されています。賛否分かれる作品ですが、時代の転換点を示す興味深い記録です。

  • おすすめ収録曲:アルバム全体を通してのプロダクションの変化を聴くのが面白い。特定の“名曲”よりは時代性を感じるアルバムとして評価するのが妥当。
  • 聴きどころ:ブルースの“伝統”と“商業主義”が交差するポイント。Howlin' Wolfの歌は依然として強烈で、別の文脈での解釈を楽しめます。
  • 注記:ピュアな初期シカゴ・ブルースを期待すると違和感を覚える可能性あり。

The London Howlin' Wolf Sessions(1971)

概要:ロンドンで行われたセッション盤。エリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドら英国の有名ロック・ミュージシャンが参加し、クロスオーバー的な注目を集めた作品です。

  • おすすめ収録曲:Back Door Man(豪華ゲスト陣との共演)、Spoonfulなどクラシック曲の再演が中心
  • 聴きどころ:ロックのスーパースターと老練なブルースマンが共演することで生まれる緊張感。Howlin' Wolfの存在感が改めて際立ちます。
  • 歴史的意義:ブルースとロックの相互作用を象徴する一枚で、60〜70年代のブルース復興/評価の流れを掴むのに有益。

その他:コンピレーションとボックスセットのすすめ

Howlin' Wolfはシングル中心でキャリアを築いたため、まとまった編集盤やボックスセットは非常に有用です。複数年に跨るセッションを年代順で聴けるものや、詳細な解説・セッション情報が付いた紙もののあるエディションを選べば、楽曲の変遷と本人・仲間たちの関係性がよく分かります。

  • おすすめタイプ:年代順編集(early singles / complete sessions)や、ライナーで演奏者/日付が詳述されている再発盤
  • 注記:編集方針によって曲順やバージョンが異なるため、作品の“史料価値”を重視するか、“聴きやすさ”を重視するかで選ぶと良いです。

名作を聴く際のポイント(音楽的な見方)

Howlin' Wolfを深く楽しむには、以下を意識すると味わいが増します。

  • ボーカル表現:声の質感、間の取り方、シャウトの瞬間に注目する。声そのものが楽器になっています。
  • ギターとリズムの対話:Hubert Sumlinらのギターは常に“語り”をする。リズム隊(特にWillie Dixonのベース)との掛け合いを追うと構造が見えてきます。
  • 曲ごとのアレンジ差:同じ曲が別テイクや別時期で大きく異なることがある。複数バージョンを比較すると発見が多いです。

買い方・エディション選びの簡単な指針

(再生・保管に関する技術的な話は除く)

  • オリジナル・チェス盤は歴史的価値が高い一方、盤質や入手の難易度がある。リマスター再発は音源の整備や解説充実のメリットがあります。
  • ライナーノーツやセッション・データが充実しているエディションは、音楽的背景を理解するうえで有益です。
  • 複数の編集盤(年代別コンピ/アルバム)を併用すると、楽曲ごとの変遷や演奏の文脈をより立体的に掴めます。

Howlin' Wolfの影響と現在へのリンク

Howlin' Wolfの楽曲や歌唱法は、ローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベックなど多くのロック系ミュージシャンに取り上げられました。原曲の持つ“不穏さ”や“大胆さ”は、ロックのダイナミズム形成に直接的に寄与しています。原典に当たることで、現代のカヴァー曲やロック作品に込められた要素がより明確に見えてきます。

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参考文献