Professor Longhair の名盤を深掘り:ニューオーリンズ・ピアノの聴きどころとおすすめレコード選び
Professor Longhair(プロフェッサー・ロングヘア)おすすめレコード 深掘りコラム
Henry Roeland "Roy" Byrd、通称 Professor Longhair(プロフェッサー・ロングヘア、略称 Fess)は、ニューオーリンズ・ピアノの象徴的存在です。1918年生まれ、1980年没。彼のピアノはブルースやラテン(ルンバ/マンボ)を土台に、特徴的な左手のリズムと独特のシンコペーションでニューオーリンズのダンス感覚を作り上げました。本コラムでは「聴くべきレコード」を中心に、楽曲ごとの聴きどころ、盤の選び方(どのリイシュー/オリジナルを狙うか)などを深掘りして解説します。
Professor Longhair を知るための代表曲(まずはここから)
Tipitina — 彼の代表曲中の代表曲。原曲は50年代に録音されたシンプルながら中毒性の高いピアノ・フレーズと歌メロが特徴で、ニューオーリンズの地名やカルチャーを象徴する存在になりました。Fess のピアノ語法が最もクリアに出る一曲です。
Big Chief — マルディグラやインディアン・ソサイエティ(ニューオーリンズ特有の文化)との結びつきを色濃く感じさせるナンバー。リズムとコール&レスポンスの楽しさが際立ちます。
Go to the Mardi Gras / Mardi Gras in New Orleans — 祝祭性の高い楽曲群。Fess の音楽がニューオーリンズの祝祭(マルディグラ)と不可分であることを示す名曲群です。
Tipitina(別テイクやライブ) — 同曲でもテイク違いやライブでは表情が大きく変わるため、複数バージョンを比べることで彼の即興性やアレンジ感覚をより深く理解できます。
おすすめレコード(入門〜コレクター向けのピック)
1950s シングル群(オリジナル45rpm/78rpm)
なによりも原初のエネルギーを味わうなら、50年代に出たオリジナル・シングル(当時の45回転盤/78回転盤)は外せません。特に“Tipitina”を含むオリジナル盤は音色の質感、演奏の瞬発力が強く残っており、歴史的価値も高いです(入手難度は高め)。Rock ’n’ Roll Gumbo(1970年代の復活期のアルバム)
70年代に入ってからの復活期の録音は、Fess が若い世代やフェスティバルで再評価されて以降の仕事を示しています。録音クオリティが向上しており、演奏の勢いを鮮明に捉えた良盤が多い点が魅力です。入門用として音質と演奏のバランスが良いリイシューを選ぶと良いでしょう。Crawfish Fiesta(最晩年のスタジオ録音)
晩年に録られたスタジオ録音は、Fess の成熟したピアノ・ワークと歌心が結実したもの。オリジナルの雰囲気を保ちながらも録音品質が高く、現代的リスニングでも楽しめます。演奏メンバーやアレンジによりニューオーリンズ色が濃く出ており、彼のレパートリーが豊富に聴けます。編集盤・コンピレーション(The Complete Recordings / Best of 等)
初心者には信頼できるレーベルによる編集盤(まとまったベスト/コンプリート集)がおすすめ。代表曲からレアトラックまで広くカバーしているため、まずは一枚で彼の変遷を掴めます。解説(ライナーノーツ)や音源元の明記がしっかりしているものを選ぶと良いです。ライヴ録音(フェスティバル音源など)
Fess はステージで本領を発揮するタイプのプレイヤーです。ライブ盤では観客との掛け合いや即興の妙が聴け、スタジオ盤と別の魅力があります。ライブならではの荒削りなエネルギーを楽しみたいコレクターにおすすめです。
各盤の「聴きどころ」をもっと詳しく
ピアノ・フレーズの反復と変化
Fess の魅力は、一見シンプルに見える反復フレーズに細かな装飾やズレを入れていくことにあります。繰り返されるビートの中で微妙にタイミングを前後させたり、右手の即興で歌心を乗せたりする点に注目してください。ルンバ/ラテン系のグルーヴ
左手の「タムバオ」的なリズムや、ラテンの要素を取り入れたグルーヴ感はニューオーリンズならでは。これはただのブルース・ピアノとは異なる独特のダンス性を生みます。ボーカルとピアノの一体感
Fess の歌はピアノ伴奏と不可分です。歌のフレージングとピアノの応答(コール&レスポンス)が濃密に絡み合う瞬間を聴き取ると、彼の表現の幅がより分かります。編成による表情の違い
ソロ風味のトラック、ピアノ+ホーン隊、コーラスを伴った歌物…と、編成によって楽曲の色合いは大きく変化します。アルバムごとに編成を意識して聴くと、ニューオーリンズ音楽の多様性がよく見えます。
レコード選びのポイント(どの盤を買うかの判断基準)
音源の出所/マスター情報を確認する
信頼できるリマスター、あるいはオリジナル・マスターからの復刻であるかどうかは重要です。解説やクレジットが充実している盤は、音源の出自が明確なことが多く安心です。ライナーノーツの有無
Fess のような歴史的アーティストは文脈(誰と演っているか、いつどこで録ったか)が楽しみを左右します。解説が詳しい盤は聴取体験を深めてくれます。オリジナル盤 vs リイシュー
音のエッジや“当時の空気感”を重視するならオリジナル盤の魅力は大きいですが、針ノイズや経年劣化を嫌うなら良質なリイシュー(信用できるレーベルによる)やリマスター盤を選びましょう。複数テイクを比較する習慣をつける
同じ曲の別テイク/ライブを比べると、アレンジの違いやその日のムードが明確に分かります。Fess の場合、曲ごとの即興性がとても高いので比較は学びになります。
聴き方のアドバイス(深掘りリスニング)
まずは代表曲を繰り返し聴いて「フレーズのクセ」を覚える。次に別テイクやライブでそのフレーズがどのように変化するかを追いかけると、Fess の即興性や表現の幅が見えてきます。
バンド編成ものはリズム隊(ドラム/ベース)やホーンとの絡みを重点的に聴くと、ニューオーリンズのアンサンブル感が理解しやすくなります。
歌詞よりも演奏の“間”や“間合い”に耳を傾けると、彼がダンスミュージックとしてどのように場を作っているかが分かります。
まとめ:何を揃えるべきか
入門者はまず信頼できるコンピレーション(ライナーノーツが充実した編集盤)で代表曲を押さえ、次に復活期のアルバム(70年代以降の良音質なスタジオ盤)や名演が収められたライブ盤を一つ二つ。コレクターを目指すなら50年代のオリジナル・シングルや、別テイクが多数含まれるボックスセットを狙うのが理想的です。いずれにしても、Fess の魅力は“演奏の瞬間”にあるので、複数バージョンを聴き比べることを強くおすすめします。
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参考文献
- Professor Longhair - Wikipedia
- Professor Longhair | AllMusic
- Tipitina's Foundation(Tipitina に関する情報)
- Professor Longhair | Britannica


