リック・ウェイクマンの軌跡:Yesとソロで拓くプログレの革新とシンセサウンドの拡張
リック・ウェイクマン(Rick Wakeman)とは
リック・ウェイクマン(Rick Wakeman、1949年5月18日生)は、イギリスのキーボーディスト、作曲家、プロデューサーであり、プログレッシブ・ロックを代表する人物の一人です。特に1970年代におけるシンセサイザーとキーボードの表現拡張に多大な影響を与え、バンド「Yes」の主要メンバーとして、またソロ作での大作指向のコンセプト作品により高い評価を受けてきました。
経歴と主要な活動の軸
前史とセッションワーク:幼少期からピアノ教育を受け、ポップ/セッションミュージシャンとしてキャリアを積んだ後、1960年代後半から1970年代初頭にかけて様々なバンドやセッションに参加しました。
Yes加入とブレイク:1971年にYesのメンバーとして参加し、「Fragile」(1971)や「Close to the Edge」(1972)といった名盤の成立に寄与。複雑なアレンジとシンフォニックなサウンドをバンドにもたらしました。
ソロ活動の隆盛:1973年発表の「The Six Wives of Henry VIII」を皮切りに、歴史や神話を題材とした大作コンセプトアルバム(例:「Journey to the Centre of the Earth」1974、「The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table」1975)を次々発表し、ソロ・アーティストとしての地位を不動のものにしました。
後年の活動:ソロ、リユニオン、セッション、テレビ出演、著書執筆、ツアー活動と精力的に活動を続け、クラシック/ロックの橋渡しや機材開発への提言など、多方面で影響を与えています。
音楽性と魅力の深掘り
リック・ウェイクマンの魅力は単に“速い指”や“派手な機材”に留まりません。以下の要素が彼を特別にしています。
クラシック的素養とロックの融合:幼少期からのクラシック音楽教育が、彼の作曲・編曲の基盤になっています。クラシック的な構築力とロックのダイナミズムを自然に結びつけることで、シンフォニックで劇的な楽曲を作り出します。
シンセサイザーと鍵盤楽器の表現拡張:モーグ、ミニモーグ、ハモンドオルガン、メロトロン、グランドピアノなどを駆使し、当時としては革新的な音色設計とレイヤーを実現しました。機材を“効果”として使うだけでなく、作曲の中心的素材として扱っています。
ドラマ性とストーリー志向:歴史・神話・冒険といった大きな物語性を伴ったアルバムを作り続けたことが、聴き手に“物語を聴く”体験を提供します。交響的配置やテーマの反復など、演劇性の高い構成が特徴です。
テクニックと歌心の両立:高いテクニックを見せながらも、決して自己陶酔に陥らず、メロディ(歌心)を重視する点がファンを広げています。テクニカルなパッセージも楽曲のために機能します。
ステージ・パフォーマンスとキャラクター:トレードマークのマントや派手な衣装、誇張されたステージングで観客を惹きつける表現力も魅力の一つです。視覚と音響の両面で“ショー”を構築します。
代表作とおすすめアルバム(解説付き)
The Six Wives of Henry VIII(1973)
器楽中心に仕上げられたソロ第1作。各王妃をテーマにした7つのインストルメンタルが並び、ウェイクマンのキャラクター性と構築力が凝縮されています。シンセサイザーを主役に据えた当時のインパクトは大きい。Journey to the Centre of the Earth(1974)
ジュール・ヴェルヌの小説を基にしたライブ・アルバム兼コンセプト作。フルオーケストラと合唱団を伴った壮大なスケール感で、ロックとクラシックを融合させた野心作です。The Myths and Legends of King Arthur and the Knights of the Round Table(1975)
ケルト/中世風の旋律や物語性を前面に出したコンセプト・アルバム。シンフォニックで叙事詩的な表現が好きなリスナーに強く薦められます。Yes期の参加作(Fragile, Close to the Edge など)
Yesの白熱したアンサンブルと構築性にウェイクマンの鍵盤が溶け込み、名曲群の重要な一要素となっています。「Roundabout」などの楽曲でのソロパートは特に有名です。近年作と多様なコラボレーション
後年もライブ録音、コンセプト作品、映画音楽的アプローチなど、多様なプロジェクトを発表。スタジオ技術やアレンジにおける成熟が感じられます。
演奏・作曲における具体的特徴
テーマの扱い:短いモチーフを発展させ、劇的なクライマックスへと導く手法が多用されます。反復と変奏によって物語性を生み出すのが得意です。
オーケストレーション感覚:キーボードでオーケストラの役割を果たすようなアレンジが特徴。複数の鍵盤音色を重ねて実質的な“ミニ・オーケストラ”を構築します。
シグネチャー・サウンド:グランドピアノの豪快なタッチ、プロトシンセサイザーのリード、メロトロン風のパッドなどを組み合わせた厚みのある音造りが「らしさ」を作ります。
ライブとパフォーマンスの魅力
ウェイクマンのライブは“視覚的な劇”でもあります。大型のキーボードステーションを操り、しばしば演奏中に演劇的な振る舞いやコスチューム演出が加わります。楽曲そのもののドラマ性に加え、視覚演出が観客に強い印象を残します。また、ソロとバンドの双方で異なる編成を取ることで、原曲の再構築や即興的な展開を楽しめる点も魅力です。
影響と評価、後進への影響
キーボード奏者への影響:プログレやシンセ・ミュージックの後続世代に対して、楽器を“音色のオーケストラ”機能として用いる考え方を浸透させました。
ジャンルを超えた評価:ロック界だけでなくクラシック寄りのリスナーや映画音楽ファンからも支持され、ジャンル横断的な評価を得ています。
教育的側面:楽曲構成やシンセサイザーの使い方に関する発言・著述が多く、若手ミュージシャンにとっての学びの源泉ともなっています。
リスナーへのおすすめの聴き方
コンセプトを先に知る:アルバムが物語を持つものが多いので、歌詞やテーマ(歴史や物語)を事前に軽く調べると没入感が増します。
ヘッドフォンで音の層を追う:多層的なアレンジが特徴なので、ヘッドフォンで細部のシンセ、メロトロン、ピアノの重なりを確認すると新たな発見があります。
ライブ録音での比較を楽しむ:スタジオ盤とライブ盤でのアレンジの違いや即興性を比較すると、ウェイクマンの表現の幅がはっきり分かります。
パーソナリティとエピソード
ウェイクマンは冗談交じりのトークや自身のユーモアを公に語ることで知られており、公私にわたるエピソードや逸話も多く、親しみやすい一面があります。一方で音楽制作に対しては緻密でプロフェッショナルな姿勢を貫くため、その二面性がファンに愛されています。
まとめ:なぜリック・ウェイクマンを聴くべきか
リック・ウェイクマンは、キーボードを用いてロックをより大きな“語りの場”に拡張した先駆者です。クラシック的な作曲能力、革新的なサウンド・デザイン、舞台芸術的な演出が融合した彼の作品は、単に“弾けるキーボード”以上の体験を提供します。プログレッシブ・ロックやシンフォニック、シンセ音楽の源流を知りたい人、音楽の劇的表現を楽しみたい人にとって必聴のアーティストです。
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