Don Cherryの世界音楽とフリージャズを味わう入門ガイド—おすすめアルバムと聴き方

Don Cherry — 簡単なイントロダクション

Don Cherry(ドン・チェリー、1936–1995)は、オーネット・コールマンの初期グループで知られるアメリカのトランペット奏者/即興演奏家です。フリージャズの文脈で名を上げつつも、欧亜・アフリカ・南米など世界各地の音楽を積極的に取り込み、「ワールド/グローバルな即興音楽」を自らの創作の中心に据えた点で特異な存在でした。ここでは彼のキャリアを通じて特に聴くべきレコード(LP/アルバム)をピックアップし、音楽的特徴、聴きどころ、初心者向けの入門順などを解説します。

聴く順序(おすすめの導入ルート)

  • まず「オーネット・コールマン」期の代表作を通してチェリーの出自を把握(背景理解)
  • 次にチェリーのリーダー初期作品でフリー即興の語法を学ぶ(構造化された長いスイートなど)
  • その後、デュオ/小編成の即興作で音色・間(ま)を見る
  • 最後に70年代以降のワールド融合/ECM系の穏やかな作へ進むと、チェリーの音楽的広がりが実感できます

1. オーネット・コールマンとの記録(背景理解のために)

Don Cherryのことを深く理解するには、まず彼がコールマンのグループで果たした役割を聴くのが近道です。特に「Lonely Woman」などの名曲を含むオーネットの初期作は、チェリーのフレーズ感覚、装飾音、自由度の高いアプローチがよくわかります。チェリーが「メロディの解体と再構築」にどう関わったかを感じてください。

2. Complete Communion — フリー即興リーダー初期の傑作

なぜ聴くべきか:チェリーがリーダーとして提示した“連続する小品がつながる一大構成”というアプローチが明確に出ている作品です。短いモチーフをつなげて長い物語を作るような作りは、後の多国籍要素を取り込んだ作風にもつながります。

  • 音楽の特徴:スイート状の連続曲、即興の緊張と解放、メロディ志向の即興
  • 聴きどころ:冒頭のテーマ提示〜即興による展開の作り方、各ソロの対話性
  • 入門として:チェリーの“リードの取り方”とフリー表現のバランスを掴むのに最適

3. Symphony for Improvisers — 野心的な即興構成の拡張

なぜ聴くべきか:タイトルが示す通り“即興家たちの交響”を志向した、より大きなスケールの試みです。集団即興の中でのダイナミクス、構成力の学習に適しています。

  • 音楽の特徴:長尺の組曲風トラック、様々なテンポやムードの交替
  • 聴きどころ:複数楽器間の対位法的瞬間や、チェリーの音色の変化に注目

4. Mu(エド・ブラックウェルとのデュオ) — 極限まで研ぎ澄まされた対話

なぜ聴くべきか:トランペット(コルネット)とパーカッションだけというシンプルさが、音の間・呼吸・リズムの取り方を露わにします。チェリーの音色の表情、音と余韻の取り扱いがよく分かる名作です。

  • 音楽の特徴:露出度の高いインタープレイ、リズムとの隙間で生まれる空気感
  • 聴きどころ:音の“余白”をどう使うか、パーカッションとの即興的な呼応

5. Eternal Rhythm/Where Is Brooklyn?(晩期前後の実験作)

なぜ聴くべきか:チェリーがより多声的・リズム中心のアプローチを試みた時期の作品。西洋ジャズの枠を超えて、アフリカや中東系のリズムを大胆に取り入れています。楽曲ごとに色合いが変わり、聴き手を飽きさせません。

  • 音楽の特徴:多様な打楽器、民族音楽的スケールの導入、実験的な編曲
  • 聴きどころ:楽器編成の変化と、それによって生まれる色彩感。チェリーの声や歌唱が入ることもあり、人間的な温度が増します

6. Organic Music Society — ワールド/コミュニティ志向の思想作

なぜ聴くべきか:ここでチェリーは単なる“音色の取り込み”ではなく、音楽を通じたコミュニティ/儀礼性を意識します。歌や祈りのようなトラックが混在し、ジャズの枠にとらわれない広がりが体験できます。

  • 音楽の特徴:歌唱、民族楽器、集団参加的な即興
  • 聴きどころ:ある曲は瞑想的に、ある曲は祝祭的に振る舞うため、曲ごとの場面転換を楽しんでください

7. Brown Rice/Relativity Suite — エレクトリック化/楽曲志向の深化

なぜ聴くべきか:エレクトリック楽器やソングライティング的要素が強まり、より「ポップ/ファンク」的な側面やアレンジ志向も見られる期です。チェリーの多様性(ジャズからソウル、ファンク、世界音楽への横断)が最もわかりやすく出る領域でもあります。

  • 音楽の特徴:エレクトリックな音響、リズムのグルーヴ、まとまりのある楽曲構造
  • 聴きどころ:メロディの親しみやすさ、リズムトラックと管楽の掛け合い

8. Codona(コドナ)シリーズ — コラボレーションの集大成(ECM)

なぜ聴くべきか:Collin Walcott(シタール/パーカッション)とNaná Vasconcelos(パーカッション/歌)とのトリオによるプロジェクトで、チェリーの“世界音楽的ミニマリズム”が高次に結実しています。ECMレーベルのサウンドプロダクションも相まって、透明感のある音像が魅力です。

  • 音楽の特徴:ミニマルな反復、音色の対比、エアリーな録音
  • 聴きどころ:各メンバーの即興が隙間に響き合う様、民族楽器と管楽器の融合

聴き方のコツ(具体的)

  • 全体の流れを重視:ひとつのアルバムを曲順どおりに通して聴くと、チェリーが意図した物語性が見えてきます。
  • 反復と異化に注目:短いモチーフの反復・変形がチェリーの表現術の核です。細部の変化を追ってください。
  • 声と非西洋楽器を大切に聴く:歌や打楽器の使い方に彼の思想(共同体性、儀礼性)が表れます。
  • 比較聴取:オーネット・コールマン作とチェリーのリーダー作を往復して聴くと、影響と独自化が理解しやすいです。

盤選びのアドバイス(内容中心)

  • 初期作はオリジナルのアナログ収録の空気感が魅力。リマスター盤だと音像が現代的にクリアになる反面、当時の空気は薄れることがあります。
  • CodonaなどのECM録音は、レコーディングの透明感そのものが音楽表現の一部なので、音質の良い盤・デジタル配信での再生もおすすめです。
  • 各アルバムの再発盤にはボーナストラックや未発表音源が付くこともあるので、解説やトラックリストをチェックして選んでください。

まとめ:Don Cherry を聴く価値

Don Cherryの音楽は「ジャズ」という枠組みを基盤としながらも、即興という原理を通じて世界各地の音楽的要素を“共存”させる試みです。リズム、声、楽器の組み合わせを通して、聴き手を既存ジャンルを超えた音の場へ誘います。初期の鋭いフリー即興から、晩年の穏やかで深遠なワールドミュージック的世界まで、幅広い表情を持つため、何度も繰り返して聴くほど新しい発見があります。

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参考文献