Suicide徹底解説:デビュー盤から中期作までの聴き方と名盤ガイド
はじめに — Suicideとは何者か
Suicide(アラン・ヴェガ/マーティン・レヴ)は、1970年代後半にニューヨークで活動を始めたデュオで、極限までそぎ落としたエレクトロニクスと挑発的なヴォーカルを武器に、パンク/ノー・ウェーヴ/インダストリアル/テクノへ大きな影響を与えた先駆者です。ギターをほとんど使わず、単純なシンセ/リズムボックスとライヴの「アクション」で観客の緊張感を作るスタイルは、その後の多くのアーティストに引用され続けています。
Suicideを聴くための視点
Suicideの音楽は「歌」と「サウンド・スケープ」が統合された表現です。歌詞は都市の暗さ/狂気を描くことが多く、曲は短く突き刺すような衝動を持ちます。レコードを聴く際は以下を意識すると理解が深まります。
- ミニマルなアレンジが意図的に不安感を生むこと(欠落と反復の効果)
- ヴォーカル表現が楽曲の「演劇性」を担っていること(Alan Vegaのシャウトや囁きが物語る)
- 当時のライブ・パフォーマンスは音の暴力性だけでなく、観客との対峙が重要な要素だったこと
おすすめレコード(深掘り解説)
1) Suicide — 「Suicide」(デビュー・アルバム)
この1977年作は、Suicideの代名詞的名盤。極端にシンプルなシンセ・ベース、ドラム・マシンの反復、そしてAlan Vegaの生々しい歌声がぶつかり合う。収録曲の中でも「Ghost Rider」「Cheree」「Rocket USA」「Frankie Teardrop」は特に重要で、後の電子音楽/ポストパンク以降の多くのミュージシャンに影響を与えました。
- 聴きどころ:冒頭からの即効性。1曲目から強烈に引き込まれる構成で、"Frankie Teardrop"の10分弱に渡る緊張の高まりは衝撃体験。
- 文化的意義:パンク的態度を電子楽器で表現した点が革新的。ライヴでの観客の反応(時に暴力的)が伝説化されているのもこの時期。
- 収集の目安:初期プレス/アナログはコレクターズアイテムですが、リイシューでも音のエッジは十分伝わります。
2) セカンド・アルバム(初期→中期の流れを知るために)
1977年のデビューの衝撃を受けた後の作品群は、より音響実験やプロダクションの違いが現れる時期です。音色の変化やヴォーカル表現の幅を確認することで、Suicideの「一貫性」と「変化」を同時に理解できます。
- 聴きどころ:初期のシンプルさから、より「曲」や「音響」の工夫が見える点を注視すると良い。
- 比較ポイント:デビュー盤と比べて何が変わったか(テンポ、メロディ感、ノイズの使い方など)を意識すると、彼らの進化が見える。
3) 中期以降のアルバム群(実験と多様化)
1980年代以降、Suicideは時にポップ的な構成を試みたり、逆にさらに実験的な方向に進んだりします。これは必ずしも「失速」ではなく、時代や個々の表現欲求に応じた自然な変化と捉えると理解しやすいです。
- 聴きどころ:各アルバムにおける生音・電子音のバランスの変化。曲構成が拡がることで、Alan Vegaの歌が楽曲内でどのような機能を果たすかが変化します。
- おすすめの聴き方:時系列で追い、初期の刃のような衝動と比較することで“何を残し、何を変えたのか”が見えてきます。
4) シングル/編集盤/ライブ盤(入門→奥深く入るために)
代表曲のシングルやライブ録音、編集盤はSuicideの「瞬間」を切り取った良い資料です。特にライブ盤は彼らのパフォーマンス性を知るうえで不可欠。また、編集盤には未発表テイクやシングル・バージョンが収録されることが多く、曲の別顔を楽しめます。
- 注目トラック:ライブでの「Ghost Rider」「Frankie Teardrop」「Dream Baby Dream(後に多くカバーされた曲)」などは違った表情が出ます。
- 活用法:最初はスタジオ盤で基礎を掴み、次にシングルやライブで表現の揺れを楽しむと理解が深まる。
各曲のポイント解説(代表曲ピックアップ)
Ghost Rider
短くタフなリフとVegaの語り/シャウトが直線的に届く曲。アニメ的でもある単純なフレーズが逆に強烈な印象を残す。
Frankie Teardrop
物語性の強い長尺曲。淡々と語る部分と爆発する部分の交錯が心理的圧迫感を生む。内容が過激なため聴くタイミングを選ぶ人もいますが、Suicideの美学を理解する上で極めて重要な作品です。
Cheree / Rocket USA
よりメロディックな側面を持つ曲。淡い感傷と冷たいサウンドの対比が魅力で、デビュー盤の中でも“聴かせる”瞬間を担っています。
聞き方・コレクションのコツ(音楽的な観点)
- 順を追って聴く:デビュー→シングル→中期以降、という流れで聴くと変化がわかりやすい。
- 歌詞とサウンドの関係に注目:サウンドが叩きつける不安感とVegaの語りがどのように相乗効果を生んでいるかを意識する。
- カバーや影響を辿る:Bruce SpringsteenやIggy Popなど、Suicideに触発されたアーティストの演奏やカバーを聴くと影響範囲が見えてくる。
おすすめの入門プラン(初めての人向け)
- まずデビュー・アルバムを一周(Suicideの世界観の全体像を掴む)
- 代表曲のシングルやライブ音源で別テイクを味わう
- 興味が出たら中期以降のアルバム/コンピやソロ作(Alan Vegaのソロ、Martin Revのソロ作品)にも手を伸ばす
関連するソロ活動と派生作品
Suicide本体の作品だけでなく、Alan VegaやMartin Revのソロ活動にもユニークな作品が多く、Suicideの文脈を補完してくれます。特にAlan Vegaはソロでよりポップ/ロック寄りの曲やコラボ作品を残しており、彼の歌の幅を知るのに役立ちます。
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(ここでは「エバープレイ」をレコード紹介やキュレーションの例として紹介します。)エバープレイは、アーティストの代表作や聴きどころをテーマ別にまとめて紹介するキュレーションの一例です。Suicideのようにジャンル横断的で捉えどころのあるアーティストは、入門〜ディープリスナーまで段階的に案内してくれるプレイリストや特集が便利です。
参考文献
- Suicide (band) — Wikipedia
- Suicide — AllMusic(バイオ/ディスコグラフィー)
- Suicide — Discogs(リリース一覧)
- Alan Vega obituary — The Guardian


