Miroslav Vitoušのベース表現をレコードで聴く:必聴盤と聴き方ガイド(Now He Sings, Now He Sobs/Weather Report/Infinite Search/Universal Syncopations)

序文:Miroslav Vitouš — 何が特別なのか

チェコ出身のベーシスト、Miroslav Vitouš(ミロスラフ・ヴィトウシュ)は、ヨーロッパ的な透徹した音楽観とジャズ/フュージョンのダイナミズムを融合させた稀有な存在です。アコースティック・アップライト・ベースの伝統的な役割にとどまらず、アルコ(弓奏)や自由なソロ、作曲性の高いリーダー作で独自の世界を切り拓いてきました。本コラムでは、彼の「レコードで聴くべき」おすすめ盤を選び、聴きどころや盤選びの観点を掘り下げます。(レコードの保管・再生メンテナンスの解説は省きます)

選定基準

  • 演奏的・歴史的な重要性(作・編曲、共演者、バンド形成など)
  • ベース表現の特徴がよく分かること(アルコ、ソロ、アンサンブルでの立ち居地)
  • レコードで聴くと音像や空気感が立ち上がる作品であること

必聴 1 — 「Now He Sings, Now He Sobs」 (Chick Corea Trio)

なぜ聴くべきか:Vitouš が国際的に注目を浴びる契機となったトリオ作品。ピアノの創造力とベースの即興応答、ドラムの推進力が三位一体になった名作です。

  • 聴きどころ:Vitouš のラインは単なる伴奏にとどまらず、即興ソロや対話的応答を通じて曲の構築に深く関与します。アルコ奏法やハーモニクスの使い方にも注目。
  • レコードでの魅力:トリオのレンジ感と空間表現がダイレクトに伝わり、ベースの輪郭や弓のニュアンスがより明瞭に聴き取れます。

必聴 2 — Weather Report(デビュー作・初期音源)

なぜ聴くべきか:Vitouš は Weather Report の共同創設者の一人で、初期のサウンド形成に大きく寄与しました。たとえ後期のフュージョン路線とは異なる場面でも、初期の実験性やアンサンブルの空気感は非常に興味深いです。

  • 聴きどころ:ベースが楽曲の骨格を支えつつ、自由度の高いアプローチで音響的な役割も担う点。キーボードやサクソフォン等との対話に注目すると、Vitouš の音楽的選択がよく見えます。
  • レコードでの魅力:初期録音のダイナミクスやライブ感、アンサンブルの立体感がレコード再生で映えます。

必聴 3 — Miroslav Vitouš(初期リーダー作/「Infinite Search」等)

なぜ聴くべきか:リーダーとしてのVitoušの視点が最も明確に出る作品群です。作曲面でも個性を打ち出し、アコースティック主体の抒情からフュージョン的な近代性まで幅広く表現します。

  • 聴きどころ:楽曲の構造、ベース・ソロの比重、アルコとピッチの使い方。リーダー作では伴奏楽器との絡み方も緻密で、ベースがメロディックに立つ瞬間が多いのが特徴です。
  • レコードでの魅力:制作当時の録音空間と演奏のニュアンスがそのまま伝わり、ビニール特有の重心のある低域が音楽性を助けます。

必聴 4 — Universal Syncopations(近年のECM〜リーダー盤)

なぜ聴くべきか:成熟した作曲観と多彩なゲストを迎えた近年作は、Vitouš の「現在地」を示す作品。伝統的なベース奏法と現代的アンサンブル感覚が融合しています。

  • 聴きどころ:アンサンブルでのリズムの食い方やポリリズム、ベースのソロが曲の骨組みをどう変えるか。弓での長いフレーズや空間演奏が印象的です。
  • レコードでの魅力:ECM 系列の録音は透明度と空間表現が売りで、繊細なタッチや残響感がよく出ます。

深掘り:Miroslav Vitouš のベース表現をどう聴くか

1) アルコ(弓)の利用:弓によるロングトーンやハーモニクスは、ただの伴奏を超えて「声」や「線」を生み出します。弓の入る箇所で音楽の色調が変わるので、注意深く聴くと作曲構造が見えてきます。

2) 即興と構成の境界:Vitouš はソロを展開する際にも「フレーズの完結性」を大事にします。長い即興の中にもテーマ的な回帰や対位法的手法が散見されるため、ただ派手な技術ではなく「語る」即興を意識して聴くと面白いです。

3) アンサンブル内の役割の多様性:ときにリズムを牽引し、ときにテクスチャを提供し、ときに旋律的に振る舞う。その切り替えを聴き取ると、ベースが単なる低音楽器ではないことが実感できます。

レコード選びの実践的ポイント(盤・エディションに触れる)

  • オリジナル・プレスの魅力:初期プレスは録音当時のマスタリング感が残り、演奏の躍動や温度感が強い場合が多いです。ただしノイズや経年劣化のリスクもあるため、状態をよく確認しましょう。
  • 再発/リマスター盤の利点:ノイズ低減やダイナミクス改善が図られていることがあり、現代のオーディオ環境で聴く場合に向くことがあります。ただしリマスタリングで音のバランスが変わることもあるため、好みで選んでください。
  • レーベル感:ECM系の盤は空間情報と解像度に富み、Weather Reportなどのアナログ期作品は厚みある低域を持つことが多いです。聴き比べがおすすめです。

入門〜深堀りのためのリスニング順

  • 入門:Chick Corea「Now He Sings, Now He Sobs」——トリオでのベースの役割を理解する。
  • 次の一歩:Weather Report(初期)——バンド内での創造的対話を体感する。
  • 深堀り:Vitouš のリーダー作(初期〜中期)——作曲性と個人表現をじっくり味わう。
  • 現在形:近年のリーダー作(例:Universal Syncopationsなど)——成熟した音楽語法と編成の巧妙さを聴く。

最後に:レコードで聴く価値

Miroslav Vitouš の音楽は「空間」「弓の余韻」「アンサンブルの呼吸」といった要素で多くを語ります。これらはレコードで再生した時に特に豊かに感じられるため、ヴィンテージ〜現代の良盤を通して段階的に聴き込むと、彼の多層的な魅力がより深く分かるはずです。

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参考文献