レス・マッキャン (Les McCann) とは?ソウルジャズの名ピアニストの名盤と聴き方ガイド
Les McCannとは
Les McCann(レス・マッキャン)は、アメリカのピアニスト/シンガーで、ソウルジャズを代表する人物の一人です。ジャズの即興性とゴスペルやR&B由来のグルーヴを強く融合させた演奏スタイルと、温かく訴えかける歌声で幅広い聴衆を魅了しました。とくに1969年のライヴ盤『Swiss Movement』とそこでの代表曲「Compared to What」が彼の名を世界に知らしめ、以後のキャリアでソウル・ジャズからファンク/スピリチュアルな領域まで多彩に展開しました。
経歴の要点(概観)
- 1930年代生まれ(20世紀中盤から活動)。トリオ編成によるライヴ活動で注目を集める。
- 1960年代から70年代にかけて多数のリーダー作を発表。ライヴ盤やクロスオーバー作で人気を獲得。
- 1969年モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音『Swiss Movement』で大ブレイク。共演のテナリスト、エディ・ハリスとの相互作用が強く印象に残る。
- 1970年代はエレクトリック・キーボードやファンク、スピリチュアルな要素を取り入れ、時代のクロスオーバー志向に応えた作品を制作した。
演奏スタイルと魅力(深掘り)
Les McCannの音楽的魅力は大きく分けて「ピアノ(鍵盤)」「歌」「グルーヴ/構成力」の三点に集約できます。
1) ピアノ(鍵盤)
- ゴスペルやブルースの影響を色濃く残したフレージング:短い呼吸で繰り返すリフやペンタトニック的なメロディラインを多用し、聴き手の心に直球で届く表現力を持つ。
- リズム感重視のコンピング:ドライヴ感のあるリズムでソロを支え、バンド全体のグルーヴを牽引する役割を果たす。
- 1970年代以降はエレクトリック・ピアノやエフェクトを導入し、サウンドの幅を拡大した。
2) 歌(ヴォーカル)
- 温かくソウルフルなバリトン〜テナーの中間域の声質。ジャズ的な即興とソウル的な感情表現を自然に結びつける。
- 政治・社会的メッセージや人間味のある語り口を歌に乗せることが多く、聴衆に強い共感を与える。
3) グルーヴ/構成力
- ジャズの即興性だけで終わらず、明確なビート感と繰り返しのリフで「聴かせる」編曲をする点が特徴。これによりライブ盤はロック/R&Bのファン層にも届いた。
- 楽曲の起伏を大きくとったドラマティックな展開—静と動の対比やコーラス的な部分の効果的使用—で、ライブ体験を濃密にする。
代表曲・名盤とその魅力
- Swiss Movement(1969)
モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。共演はエディ・ハリス(テナー)ら。アルバム全体の熱量と即興のスリル、そして社会的メッセージを含んだ「Compared to What」のインパクトが決定的で、ジャズの商業的な成功例の一つになった。 - Compared to What(曲)
本作は政治的・時代的メッセージを帯びた歌詞と、McCannの力強い歌唱が噛み合い、ヴァイブスの強いプロテストソングとして広く知られるようになった。ライヴならではのエネルギーが魅力。 - Invitation to Openness(1971)
大編成や長尺トラックを含むスピリチュアル寄りの実験的作品。即興性と叙情性を同時に追求し、当時のジャズ/スピリチュアルミュージック志向の潮流に応じた一枚。 - Layers(1973)
ファンク/ソウルの要素を強く打ち出したアルバムで、エレクトリックなサウンドが前面に出る。後年のアシッドジャズ/ヒップホップ世代から再評価されることが多い作品。
コラボレーションと影響
Les McCannはエディ・ハリスとの共演で広く知られますが、他にも多くのミュージシャンと交流し、ライブ演奏での即興の応酬を通じて互いに刺激し合いました。彼のソウルフルな表現は、1970年代以降のファンク/ソウル・ジャズや、1990年代以降のアシッドジャズ/ヒップホップのサンプリング・カルチャーに影響を与えています。具体的には、グルーヴ重視の jazz-funk や、歌心を大切にするジャズ歌手たちにとっての先駆的存在といえます。
ライブでの魅力
録音以上にライヴでの訴求力が高いアーティストです。観客との即時的なコミュニケーションを大切にし、曲の中で語りかけたり、コール&レスポンスを誘ったりする場面が多く、会場全体を一つのムードにまとめ上げます。エネルギッシュなピアノと歌の直球で聴衆を引き込むスタイルは、ジャズクラブだけでなくフェスティバルなど大きな場でも強力に作用します。
聴きどころのガイド(初めて聴く人へ)
- まずは『Swiss Movement』を通してライヴでのエネルギーと「Compared to What」の強烈さを体感する。
- 次に『Layers』や『Invitation to Openness』で70年代以降のエレクトリック/ファンク志向を確認する。録音年代ごとのサウンド変化が掴める。
- ボーカルとピアノの両面を意識して聴く:同じフレーズがピアノと歌で交互に現れる場面や、楽曲のリズムをピアノがどう支えているかに注目することで、McCannの持ち味が見えてくる。
なぜ今聴くべきか
Les McCannの音楽は、ジャズ好きだけでなくソウル/R&B、ファンク、さらには現代のヒップホップやアシッドジャズの愛好家にも響く普遍性を持っています。生々しいライヴ感と人間的な温かさ、社会的メッセージ性を併せ持つため、時代やジャンルを超えて共感を呼ぶ力があるからです。特に、音楽に「感情の直接性」と「グルーヴ」を求めるリスナーにとっては格好の入り口となります。
ディスクガイド(入門的セレクション)
- Swiss Movement(1969) — ライヴの代表作。必聴。
- Compared to What(シングル/収録曲) — 社会的なメッセージを伝える代表曲。
- Invitation to Openness(1971) — スピリチュアル/実験的サイド。
- Layers(1973) — ファンク/エレクトリック志向の名盤。
- 初期のLes McCann Ltd.ライヴ録音 — トリオでのストレートなソウルジャズを味わえる。
まとめ
Les McCannはソウルフルな歌声と直感的に訴えかけるピアノ、そして強力なグルーヴ感を武器に、ジャズとソウルの境界を自在に行き来した稀有なアーティストです。ライヴ録音にその真価が現れるタイプで、社会的なメッセージ性や、その時代の空気を濃く反映した楽曲も多く残しました。古いレコードから現代のリイシューまで、時代を超えて聴き継がれる価値があるミュージシャンです。
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