クラスCアドレスとは?歴史・定義・実務運用とCIDR移行の完全ガイド
概要
「クラスCのIPアドレス」とは、かつて使われていたクラスフル(classful)IPv4アドレッシングにおけるネットワーククラスの一つで、小規模ネットワーク向けに設計されたアドレスブロックを指します。現在はCIDR(可変長サブネットマスク)による運用が主流でクラス区分自体は廃れているものの、運用や教育の文脈では今なお頻繁に参照されます。本コラムでは、定義・技術的な性質・歴史的背景・実務での使われ方や注意点まで、できる限り詳しく解説します。
クラスフルアドレッシングの背景
初期のインターネット(ARPANET/初期のTCP/IP)では、IPアドレス空間を固定長のクラス(A/B/Cなど)に分ける方式が採られていました。これは管理と設計を簡便にするためのもので、ネットワークサイズに応じてアドレスを配布する考え方です。クラスAは大規模、クラスBは中規模、クラスCは小規模向けといった区分でした。しかしこの方式はアドレスの浪費やルーティングテーブルの爆発的増大を招き、1993年のCIDR(RFC 1519)導入により段階的に置き換えられました。
クラスCの定義と範囲
クラスCアドレスは、先頭ビットが「110」で始まるIPv4アドレスの集合です。10進表記での第一オクテットは192〜223の範囲に相当します。より具体的には、
- 範囲:192.0.0.0 〜 223.255.255.255
- 先頭ビット表現:110xxxxx(第一オクテット)
- 標準的なサブネットマスク(デフォルト):255.255.255.0、すなわちプレフィックス長 /24
/24 のネットワーク(=クラスCネットワーク相当)では、アドレスは256個あり、そのうち一般的にネットワークアドレス(xxx.xxx.xxx.0)とブロードキャストアドレス(xxx.xxx.xxx.255)が予約されるため、ホストに割り当て可能なアドレス数は通常254台分となります。
技術的な詳細(数値で見るクラスC)
- 1クラスCネットワーク当たりのアドレス数:256(2^8)
- ホストに割り当て可能なアドレス数(通常):254(ネットワークアドレスとブロードキャストを除く)
- クラスCに属する総アドレス数:536,870,912(IPv4全体の1/8、4,294,967,296 ÷ 8)
- クラスC相当の /24 ブロック数(全IPv4に対する /24 単位):2,097,152 ブロック(全 /24 ブロック 16,777,216 のうち 1/8)
- 代表的なプライベートアドレス(RFC 1918):192.168.0.0/16(これはクラスCの複数ブロックをまとめた /16。家庭用ルータでよく使われる 192.168.0.0/24 や 192.168.1.0/24 はこの範囲に含まれる)
具体例:/24(クラスC相当)の計算と表示
例としてネットワーク 192.168.1.0/24 を見てみます。サブネットマスク 255.255.255.0(2進で 11111111.11111111.11111111.00000000)と IP をAND演算するとネットワークアドレスが求まります。
- ネットワークアドレス:192.168.1.0
- 利用可能なホスト範囲:192.168.1.1 〜 192.168.1.254
- ブロードキャストアドレス:192.168.1.255
このように /24 は小規模オフィスや家庭用ネットワークのサイズと合致するため、長年にわたり広く使われています。
クラスCの実務での利用例
- 家庭/小規模オフィス:ルータの標準LANセグメントとして 192.168.0.0/24 や 192.168.1.0/24 を採用
- ドキュメント用アドレス:192.0.2.0/24 はドキュメントやサンプルに使われる(RFC 5737)
- 小規模セグメント分割:企業内で部門ごとに /24 を割り当てることで管理しやすくする運用
- NATとの組合せ:プライベートなクラスCブロックをグローバルIPv4へ変換(NAPT/NAT)してインターネット接続
制限点とCIDRによる移行
クラスフル方式の問題点は、利用実態とアドレス配分の不一致によるアドレスの浪費や、ルーティングテーブルの増大です。たとえば、ある組織が「約500台のホスト」を必要とする場合、クラスフルではクラスB(65,536アドレス)を丸ごと割り当てる必要があり巨大な無駄が発生しました。これを解決するためにCIDR(Classless Inter-Domain Routing、RFC 1519)が導入され、柔軟なプレフィックス長でアドレスを割り当て・集約(ルート集約=スーパーネット化)できるようになりました。
現在の実務ではプロバイダやRIR(地域インターネットレジストリ)からはCIDRベースのプレフィックス(例:/22、/23、/24 等)で割り当てが行われ、旧来のクラス区分は説明や学習で参照されるに留まります。
よくある誤解と注意点
- 「クラスC = 192.168.x.x だけ」ではない:クラスCの範囲は 192.0.0.0 〜 223.255.255.255 であり、192.168.0.0/16 はその一部にすぎません。
- 「/24 のホストが必ず254台しか使えない」:通常はネットワーク・ブロードキャストを除いて254台ですが、特殊な運用(例:ブロードキャストを別扱いする特定プロトコルや RFC 3021 の /31 を使ったポイントツーポイント)では異なることがあります。
- 「クラスCの概念は廃止」:技術的にはCIDRの普及でクラス区分は非推奨ですが、ネットワーク設計や運用説明、歴史的理解のために参照され続けています。
まとめ
クラスCは、かつてのクラスフルIPv4設計において小規模ネットワーク向けに定められたアドレスクラスで、先頭ビットが110(第一オクテット 192〜223)に該当し、デフォルトマスクは /24(255.255.255.0)です。現在はCIDRにより柔軟な割当が行われているため、実運用では「クラスCに固執する必要はない」ものの、/24 単位での区切りや 192.168.x.x 系の家庭用ルータといった文脈で、クラスC相当の考え方は依然として重要です。設計やトラブルシューティングの際には、クラスの概念とCIDRの両方を理解しておくことが有益です。


