ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)のプロフィールと代表作:音楽的魅力と影響を徹底解説

Jack DeJohnette — プロフィール

ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette、1942年生まれ)は、アメリカを代表するジャズ・ドラマー、作曲家、バンドリーダー、マルチ・インストゥルメンタリストです。シカゴ出身でピアノを学んだのちドラムに転向し、1960年代後半から現在に至るまで、モダン・ジャズ、フュージョン、アヴァンギャルド、ECM系の静謐な音風景まで幅広いシーンで活躍してきました。

略歴の要点

  • シカゴでの音楽教育と初期活動:ピアノを基礎に持ち、リズムとハーモニー双方の理解を深める。
  • 1960年代〜:チャールズ・ロイドらとの活動やニューヨーク進出により注目を集める。
  • 1960〜70年代:マイルス・デイヴィスやキース・ジャレットらとの重要な共演で国際的な評価を確立。
  • 1970年代以降:リーダー作や「Special Edition」「Gateway」などのグループで独自のサウンドを展開。
  • 近年:世代を超えた共演・プロジェクトを続け、演奏・作曲・教育の面で長年にわたり影響力を持ち続ける。

音楽的魅力(何が特別か)

ディジョネットの魅力は、単にテクニックの卓越性にとどまらず、ドラミングの「音楽的役割」を再定義する点にあります。以下にその主要な要素を挙げます。

  • メロディックなドラミング:ドラムを単なる時間の刻みではなく、旋律や対話の相手として扱う。「メロディを歌うように叩く」感覚が持ち味です。
  • ハーモニー的な感覚:ピアノ経験に裏打ちされた和声感覚が、リズムだけでなく楽曲全体の構築に反映されます。
  • スペースとダイナミクスの自在さ:余白を生かす演奏で、音数を抑えた瞬間の強さや、唐突な爆発的エネルギーのコントラストを巧みに作ります。
  • リズムの多層化(ポリリズム):複数のリズムを重ね、時間感覚を柔軟に揺さぶることで、聞き手に独特の推進力と浮遊感を与えます。
  • ジャンル横断的アプローチ:ポスト・バップ、フリー、フュージョン、ワールド・ミュージックなどの要素を自然に取り込み、どの文脈でも「音楽を優先」する姿勢を保ちます。
  • 指向性のある音色作り:シンバル、スネア、タム、手やブラシといった多様な奏法でテクスチャーを刻み、曲ごとに異なる「気配」を生み出します。

代表的な共演とプロジェクト

ディジョネットは数多くの名だたるアーティストと共演しており、それが彼の音楽的幅を広げる礎になっています。

  • マイルス・デイヴィス(Miles Davis) — 1960年代末からの共演で、当時のジャズの枠を越えた試みに参加。
  • キース・ジャレット(Keith Jarrett) — スタンダーズ・トリオ(Keith Jarrett Trio)での長年にわたる共演は、彼のバランス感覚と即興力が最もよく表れた場の一つ。
  • ゲートウェイ(Gateway)トリオ — ジョン・アバークロンビー、デヴィッド・ホーランドとのトリオは、緊密で対話的なインタープレイの好例。
  • スペシャル・エディション(Special Edition) — 自身のリーダー・グループで、作曲や編曲の面でもリーダーシップを発揮。
  • その他:チャールズ・ロイド、ジョン・コルトレーン世代以降の多くのプレイヤーとのセッションにも参加。

おすすめの入門盤・名盤(聴きどころ)

彼の多面的な魅力を知るには、いくつかの代表作や共演作を段階的に聴くのが効果的です。ここではジャンルや編成ごとにピックアップします。

  • Keith Jarrett Trio — Standards(代表的なトリオ演奏)
    トリオでの繊細なインタープレイ、ディジョネットの“伴奏としてのドラミング”と即興対話を堪能できます。
  • Gateway(Gateway Trio)
    ジョン・アバークロンビーとデヴィッド・ホーランドとのトリオ作品。より自由で即興的、かつ緊密なアンサンブルに注目。
  • Special Edition(リーダー作)
    ディジョネットの作曲・編曲センス、リーダーとしての方向性が明瞭に示されたアルバム群。
  • マイルス・デイヴィスとの共演録音
    若きディジョネットの柔軟性とドラム表現の拡張を知る上で必聴(具体作は諸説あるため、クレジットを確認の上でお聴きください)。
  • 近作/プロジェクト(例:Made in Chicago 等)
    成熟期の総括的な視点や地元シカゴへの回帰を感じられる作品もおすすめです。

実際に聴くときのポイント

ディジョネットの音楽を深く味わうための着目点を挙げます。

  • ドラミングの「歌」を聴く:単発のフィルではなく、テーマに寄り添う継続的な語りかけを探してみてください。
  • 空白(間)の扱い:音が鳴っていない瞬間が音楽の構造を支えることが多いです。沈黙の意味を味わってください。
  • 楽曲ごとの役割変化:同じドラマーでも、トリオでは伴奏的に、リーダー作では主導的に振る舞うなど役割が変わります。比較してみると発見が多いです。
  • 共演者との対話:特にピアノやベースとの掛け合いで、ビートが会話の一部になっている瞬間を聴き逃さないでください。

影響とレガシー

ディジョネットの影響はテクニックの継承だけでなく、音楽に対する姿勢の伝播にあります。彼が示した「ドラマーはリズムを刻む以上の役割を担える」という考え方は、以降の多くの若手ドラマーに受け継がれ、ジャズのみならず現代音楽全般の演奏観にも影響を与えました。また、演奏家としての長寿(多数の世代と共演)と、常に新しい音楽的文脈を取り入れる柔軟さも彼の大きな遺産です。

聴き手への提案

入門者はまず短いトラックでディジョネットのサウンドを掴み、中級者以降はライブ録音や長尺の即興演奏で彼の対話力と時間感覚の変容を追うと良いでしょう。可能なら映像(ライブ映像)で手元の動きや表情を観察すると、なぜあの音が出るのか、より深く理解できます。

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参考文献