ジャック・デジョネット徹底ガイド:プロフィール・名盤・影響と聴き方のヒント

プロフィール

ジャック・デジョネット(Jack DeJohnette、1942年8月9日生まれ)は、アメリカ合衆国のジャズ・ドラマー、作曲家、マルチインストゥルメンタリストです。シカゴ出身で、1960年代後半から活動を始め、モダンジャズ、フリージャズ、フュージョン、ワールドミュージックまで幅広い音楽性を示してきました。演奏だけでなくバンドリーダー、作曲家としての作品も多数残し、ジャズ界で長年にわたり大きな影響力を持ち続けています。

略歴ハイライト

  • 1960年代:チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)カルテットに参加し国際的な注目を浴びる。
  • 1969年前後:マイルス・デイヴィスをはじめとする著名アーティストのレコーディングに参加(「Bitches Brew」などのエレクトリック期のセッションにも関与)。
  • 1970〜80年代:自身のリーダー作や「Gateway」(John Abercrombie、Dave Holland とのトリオ)、「Special Edition」などのグループで先鋭的な作品を発表。
  • 1980年代以降:キース・ジャレット(Keith Jarrett)トリオ(Gary Peacock と共に「Standards Trio」の一員)として長年活動し、スタンダードや即興表現の重要人物となる。
  • 2000年代〜現在:ECM などのレーベルでのリリースや若手との共演を続け、多彩な音楽的探究を継続。

音楽的魅力(何が特別か)

  • リズム言語の自由度と強度

    単なるタイムキープに留まらない「会話する」ドラム。複雑なポリリズムや変拍子も自然に取り入れつつ、ビートの芯を失わないため、即興ソロやアンサンブルを力強く牽引します。

  • メロディックなアプローチ

    スネアやタム、シンバルを用いて「音の高さ」やニュアンスでメロディを描くような表現をするため、ドラムがメロディ楽器のように聞こえる瞬間が多いのが特徴です。また、ピアノやキーボードを弾くこともあり、和声感覚が演奏に反映されます。

  • ダイナミクスと色彩感覚

    微細なルーディメンツから爆発的な盛り上がりまで幅広い音量変化を自在に操り、楽曲の情緒を繊細にコントロールします。ブラシ、マレット、スティックの使い分けやシンバルの扱いで独特の色彩を生み出します。

  • ジャンルを横断する柔軟性

    アバンギャルドからスウィング、ロックやファンク的な要素、ワールドミュージックの影響まで取り込み、場面に応じて音楽言語を切り替えられる点が魅力です。

  • リーダー/作曲家としての視点

    即興中心でありながら構成を意識した作曲やアレンジを行い、バンド全体のサウンドを俯瞰して導くリーダーシップを発揮します。複数の楽器を使うことでアンサンブルの色合いも自ら作り出します。

代表的なコラボレーションとその意義

  • チャールズ・ロイド・カルテット

    若手時代に国際的な注目を得た経験。グループでの多声的即興はデジョネットの表現の幅を広げました。

  • マイルス・デイヴィス

    エレクトリック期のセッションに参加することで、ロックやファンク的なリズム感や音響的な実験に影響を受け、以後の表現の幅を拡げました。

  • Gateway(John Abercrombie、Dave Holland)

    トリオ編成での密度の高い即興会話。空間を活かした演奏はECM的な美意識とも親和性が高く、アンサンブルの新たな可能性を示しました。

  • キース・ジャレット・スタンダーズ・トリオ(with Gary Peacock)

    スタンダード曲の演奏において、リズムとハーモニーを同時に深める名演を多数残し、トリオ形式の理想形の一つとして高く評価されています。

代表作・名盤(入門のためのおすすめ)

  • The DeJohnette Complex (1969)

    デジョネットの初期リーダー作。ドラミングだけでなく作曲家/マルチプレイヤーとしての側面が見える重要作です。

  • Gateway(Gateway) (1976)

    John Abercrombie、Dave Holland とのトリオ作品。緊密なインタープレイと空間の使い方が光ります。

  • Standards, Vol. 1(Keith Jarrett Trio) (1983)

    キース・ジャレットとの定番トリオ作品。スタンダード曲における三者の柔軟なやり取りが学べます(DeJohnette の伴奏美学がわかる代表作)。

  • Tin Can Alley(Jack DeJohnette’s Special Edition) (1980年代)

    デジョネットの「Special Edition」時代の代表作群は前衛性とファンキーさを兼ね備え、彼のリーダー作の魅力が詰まっています。

  • Sound Travels (2012)

    近年の傑作のひとつ。多彩なゲストとともに、伝統と現代性をつなぐ柔軟な音楽性を示しています。

  • Made in Chicago (2015)

    デジョネットのルーツであるシカゴの音楽家たちと共演した作品で、地域の音楽的伝統を祝福する内容です。

  • 参加作:Bitches Brew(Miles Davis)(1969)

    デジョネットの初期の重要な参加作。マイルスの電化路線におけるリズムの実験に関与しています。

聴きどころと楽しみ方

  • パターンより「会話」を聴く

    デジョネットはソロのスピードやフィルよりも、他楽器との対話(応答)を重視します。特にトリオや小編成では他の楽器が何を受け取り、どう返すかに注目して聴くと面白いです。

  • 音色の変化に耳を澄ます

    シンバルの擦り、スネアのタッチ、ブラシやマレットの使い分けなど、小さな音色の差が表情を作ります。細かなニュアンスに注目してください。

  • 曲の構造と空白(スペース)

    演奏の「間」やスペースの取り方が美学の一部です。音が鳴らない瞬間にも意味があることを感じ取ってみてください。

演奏スタイルから学べること(ミュージシャン/ドラマー向け)

  • リズム感とハーモニーを同時に考える習慣を持つこと(ピアノ演奏やコード感の理解が役立つ)。
  • アンサンブルを俯瞰して聴く力。自分が音を出すべきタイミングと引くべきタイミングの見極め。
  • ジャンルに囚われない柔軟性。異なる音楽的文脈から要素を取り入れて実験する姿勢。

影響とレガシー

ジャック・デジョネットは、単に優れたテクニシャンであるだけでなく、「ドラマーが音楽の中心的な語り手になり得る」という考えを体現してきました。多くの現代ドラマーが彼のアプローチ(メロディックな打楽器表現、ダイナミックなコントロール、ジャンルを越えた適応力)を学び、今日のジャズ/即興音楽に大きな影響を与えています。

結び

ジャック・デジョネットの音楽は、リズムの奥行きと音色の多様性、そして即興の自由を高い次元で融合させたものです。初めて聴く人はその「力強さ」と「繊細さ」の両方に驚くでしょう。代表作をいくつか聴き比べることで、彼が時代や編成によってどのように自分の音楽を変容させてきたかがよく分かります。

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参考文献