キーワードプランナー徹底解説:SEO・広告運用を両立させる実務ガイド
はじめに — キーワードプランナーとは何か
「キーワードプランナー(Keyword Planner)」は、Google が提供するキーワード調査ツールで、主にGoogle 広告(Google Ads)向けに作られています。広告出稿時のキーワード選定や入札(CPC)見積もり、検索ボリュームの把握、季節性の確認、キーワード候補の発見などが行えます。もともとは広告運用を支援するためのツールですが、SEO やコンテンツ企画の初期調査にも広く利用されています。
主な機能・表示項目の解説
- キーワード候補(Keyword ideas):指定した語句やURLから関連するキーワード候補を列挙します。複数条件(地域、言語、検索ネットワーク)で絞り込めます。
- 平均月間検索数(Average monthly searches):過去の一定期間における平均的な月間検索回数を表示します。長期平均を基にしているため短期の急変は反映されないことがあります。
- 競合性(Competition):そのキーワードの広告入札競争の程度を「低/中/高」などで示します(有料検索における競争度)。SEO の難易度を厳密に示すものではありませんが参考になります。
- ページ上部の入札額(Top of page bid):広告が検索結果の上部に表示されるための目安となる入札価格(低〜高の範囲)を示します。地域・期間・入札戦略により変動します。
- 検索ボリュームの地域・端末分解:地域(国や都道府県)や検索ネットワーク、期間で絞り込み、傾向を確認できます。
- 予測(Forecasts):プランにキーワードを追加して予算や入札単価を設定すると、想定されるクリック数・インプレッション・推定費用・平均CPCなどの予測値が提示されます(広告配信前のシミュレーション)。
キーワードプランナーへのアクセス方法(手順)
- Google アカウントで Google Ads(ads.google.com)にログインする。
- 画面上部の「ツールと設定(Tools & settings)」をクリック。
- 「プランニング(Planning)」カテゴリ内の「キーワード プランナー(Keyword Planner)」を選択。
- 「新しいキーワードを見つける(Discover new keywords)」か「検索ボリュームと予測を確認する(Get search volume and forecasts)」のいずれかを選択して調査を開始。
※Google Ads アカウントがあれば基本的に無料で利用できますが、アカウントの状態(課金情報の有無、アクティブなキャンペーンの有無)によって表示される情報の詳細度に差が出ることがあります。
具体的な使い方(実務的フロー)
- ステップ1:シードワードの準備
自社の商材やサービスを表す語、顧客が使いそうな語句、競合サイトのURLなどを用意します。 - ステップ2:地域・言語・期間を設定
対象のマーケット(日本全国、都道府県、市区町村など)と期間(過去12か月など)を設定して精度を上げます。 - ステップ3:キーワード候補を取得
「新しいキーワードを見つける」で候補を抽出し、関連度・検索数・競合性を比較します。 - ステップ4:フィルタリングと絞り込み
検索ボリュームの閾値や除外キーワードでノイズを減らします(例:「無料」や「求人」など除外したい語)。 - ステップ5:プランに追加して予測を実行
広告予算や入札単価を設定して、クリック数や費用の見積もりを確認します。これにより広告投資対効果(見込み)の判断材料が得られます。
メトリクスの読み方と注意点
- 平均月間検索数は過去データの平均:直近の急増・急落は平均値に薄められるため、季節性が強いワードは期間を調整して確認してください。
- “競合性”は広告競争の指標:有料広告マーケットでの競合度を示すため、SEO(オーガニック検索)での難易度をそのまま示すものではありません。
- 検索ボリュームの“幅表示”について:アカウントの設定やアクティビティにより、正確な数値の代わりに範囲(例:1K–10K)が表示されることがあります。これはGoogleの仕様で、特に広告アカウントが非アクティブな場合に起きやすいです。
- 推定入札額は変動する:提示される「ページ上部の入札額」はあくまで過去の傾向に基づく目安で、実際の入札戦略や品質スコア、競合の動きで大きく変わります。
広告運用以外での活用法(SEO・コンテンツ戦略)
- コンテンツ企画のネタ出し:検索ボリュームと関連語を組み合わせて記事テーマを優先度付けできます。
- 検索意図(インテント)の仮説構築:関連キーワード群とその語尾(〜とは、〜やり方、〜購入など)からユーザーの意図を分類できます。
- 地域別の需要把握:地域別データを使い、ローカルSEOや店舗展開の優先地域を決められます。
- シーズナリティの確認:期間を絞って季節性(繁忙期)やプロモーション時期を把握し、コンテンツ公開や広告出稿のタイミングを最適化します。
よくある誤解と注意点
- 「数字=正確な検索回数」と思い込みすぎないこと。あくまで推定・平均値であり、リアルタイムの検索行動やノイズは含んでいません。
- 「高い検索ボリューム=簡単に流入できる」ではない。競合性や意図のミスマッチにより、流入獲得は難しい場合があります。
- キーワードプランナーはGoogle 検索のみを対象にしているため、Bing やSNS、Amazon 等の検索需要は別ツールで確認する必要があります。
API と自動化
大規模なキーワード調査や自動化を行う場合は、Google Ads API(旧 AdWords API)経由でキーワードプランナー関連のサービスを利用できます。API を使えばキーワードプランの作成、候補取得、予測の取得などをプログラムで実行し、社内データと連携した分析が可能です。開発時はAPIの利用制限や認証フロー(OAuth2)、クォータ等に注意してください。
他ツールとの併用(補完関係)
- Google Search Console:実際の検索クエリ(自サイトで発生したクリック数や表示回数)を確認し、Keyword Planner の推定と照合します。
- Google Trends:季節性や相対的な検索興味の推移を可視化できます。新たなトピックのブレイクアウトを見つけるのに便利です。
- サードパーティツール(Ahrefs、SEMrush、Moz、SimilarWeb 等):より詳細な競合分析や被リンク情報、キーワードの難易度スコアなどを補完して総合的に判断します。
実践的なベストプラクティス
- シードワードは多様に用意する(短い単語+ロングテール)ことで広い候補を得る。
- 地域・期間を戦略に応じて細かく設定する(例:キャンペーンは季節限定なら該当期間のみで確認)。
- キーワードのマッチタイプや否定キーワードを整理し、広告運用時の無駄クリックを減らす。
- Keyword Planner のデータを Search Console の実データで定期的に検証し、仮説をアップデートする。
- プランの予測を盲信せず、A/Bテストや小予算での検証を行い実績に基づく最適化を続ける。
限界と対処法
キーワードプランナーは強力ですが、下記の点に注意してください。
- 検索ボリュームの小さいニッチなクエリは表示されない・省略されることがある。対処法:Search Console やサイト内検索ログ、サードパーティのログを参照する。
- 表示が「範囲」になる場合がある。対処法:アカウントを最適化(有効な課金情報やキャンペーン運用)することで詳細表示が出る場合があるが、必ずしも保証されない。
- 広告以外のプラットフォームの需要はわからない。対処法:各プラットフォーム(Amazon、YouTube、SNS等)の専用ツールを併用する。
まとめ
キーワードプランナーは、Google 広告のために設計された信頼性の高いキーワード調査ツールで、広告出稿の計画立案やコンテンツ企画の第一歩として非常に有用です。ただし、表示される数値は推定値であり、広告競争の指標(競合性)や入札目安はあくまで過去データに基づく参考情報です。実務ではGoogle Search Console や Google Trends、サードパーティツールと組み合わせ、テストと検証を重ねることで初めて効果を最大化できます。
参考文献
- Google Ads — Keyword Planner(公式製品ページ)
- Google Ads API — Keyword planning(開発者向けドキュメント)
- Google Trends(トレンド確認ツール)
- Google Search Console(公式)
- Google Ads ヘルプ(公式サポート)


