リチャード・タウバー 徹底解説:オペラ・オペレッタ・リートを彩る20世紀の名テノール

リチャード・タウバー(Richard Tauber)とは

リチャード・タウバー(Richard Tauber, 1891–1948)は、20世紀前半に活躍したオーストリア出身のテノール歌手であり、オペラとオペレッタ、そして歌曲(リート)にまたがる多彩なレパートリーで知られます。リント(Linz)近郊の生まれで、音楽的な敏感さと美しい歌唱線(レガート)を武器に、ヨーロッパの舞台や当時の録音・映画を通じて広く人気を博しました。声の魅力とともに、語りかけるような表現力、非常に洗練されたドイツ語の発音と音楽的解釈が彼の大きな特徴です。

キャリアの概観と歴史的背景

タウバーはオペラとオペレッタの両方で活躍した“ハイブリッド”な歌手でした。第一次世界大戦後から第二次世界大戦前後にかけてのインターミッション期(特に1920–30年代)は、オペレッタが大衆文化の中心にあった時代で、タウバーはその隆盛を象徴する存在となりました。また、音声記録技術の発達やトーキー(音声映画)の普及期と重なったため、レコードや映画を通して広範な聴衆に届いた点も重要です。

1920–30年代にはフランツ・レハールなどオペレッタ作曲家との密接な共演があり、作曲家がタウバーのために役を当て書きすることもありました。一方で、ナチス台頭に伴う人種差別的政策の影響を受け、1930年代後半には活動拠点をヨーロッパ大陸から英国へ移すなど、政治的な波にも翻弄されました。

声と歌唱の魅力—何が特別だったか

  • 豊かなレガートと自然なフレージング:タウバーの最大の魅力は、息継ぎが自然で線が切れない“歌の線”です。旋律を途切れさせずに美しくつなぐ歌唱は、特にロマンティックなオペレッタやリートにぴったり合います。
  • 言語表現の明晰さ:ドイツ語での母語的な発音と強弱の置き方、語尾の処理などが非常に明快で、物語を伝える力に長けていました。
  • 表現の正確さと親密さ:誇張を避け、内面から自然に湧き上がる表現を重視するスタイルで、聴衆に直接語りかけるような親密さを生み出しました。
  • ジャンル横断性:オペラのアリアからオペレッタのアンコール曲、そしてシューベルトやリヒャルト・シュトラウスの歌曲まで、レパートリーの幅広さも特徴です。

代表曲・レパートリー(聴きどころ)

  • 「Dein ist mein ganzes Herz」 (フランツ・レハール/『笑顔の国(Das Land des Lächelns)』より):タウバーを象徴するアリア。情熱的かつ洗練された歌唱でオペレッタの魅力を示します。
  • シューベルトやシューマンの歌曲:繊細な語り口と音楽的解釈でリートでも高い評価を得ました。歌曲集では小品の中にある詩情が際立ちます。
  • オペラのレパートリー(モーツァルトなどの軽めのテノール役):重唱やアリアで見せる線の美しさが印象的です。
  • 映画・録音でのスタンダード曲:1930年代の音声映画やスタジオ録音を通じて、ポピュラーなメロディを多数残しています。

おすすめ名盤・録音(入門用・聴きどころの指針)

タウバーは多くのアナログ録音を残しており、現代ではコンピレーションやボックスセットでまとまった音源が入手できます。以下は初めて聴く人向けの指針です。

  • 「Dein ist mein ganzes Herz」を収録した代表的な歴史的録音(1920–30年代のスタジオ録音) — タウバーの歌の真骨頂が分かる一曲。
  • リート集のコンピレーション — シューベルトやシューマン、リヒャルト・シュトラウスの歌曲を含むもの。歌詞の語り口と繊細な音楽性が楽しめます。
  • オペレッタ集(レハール作品を中心に) — 舞台的魅力、軽快さと抒情性の両方を堪能できます。
  • 歴史的ライブ録音・ラジオ放送の復刻盤 — スタジオ録音とは異なる即興性や舞台での表現が伝わります。

芸術的影響と後世への遺産

タウバーは“歌うことの美しさ”を重視するテノール像を広め、オペレッタ歌唱のスタンダードを確立しました。後の世代の歌手や演出家に対し、ナチュラルな発声、言語表現の明確さ、物語性を重視するアプローチに影響を与えています。また、初期音声録音・映画を通じて大衆にクラシック音楽を届けた点でも、音楽の普及史における重要人物です。

現代のリスナーに向けた楽しみ方・聴きどころ

  • まずは代表曲(特に「Dein ist mein ganzes Herz」)を聴いてその声の美しさとフレージングを味わってください。
  • リートを通じて詩と音楽の結びつきを楽しむと、タウバーの言語表現の妙がより明確になります。
  • オペレッタ録音で当時の演奏習慣や舞台感覚を感じ取り、当時の文化的背景(20世紀初頭〜間の世紀の大衆芸術)を想像してみると面白いです。
  • できれば同一曲の異なる録音(スタジオ録音 vs. ライブ録音)を聞き比べて、表現の変化や即興的ニュアンスを楽しんでください。

タウバーを聴くときの注意点

歴史的録音の音質は現代録音とは異なります。ノイズや周波数の制約はありますが、それらを超えて歌唱の核心を味わうことが重要です。録音の古さを欠点と捉えるよりも、時代の息吹を伝える「歴史的証言」として捉えると楽しみが深まります。

まとめ

リチャード・タウバーは、技術と表現が高次元で結びついた歌手でした。彼の録音は20世紀前半の演奏実践や大衆とクラシックが交差した文化の一断面を今に伝えます。初めて聴く人は、まず代表曲とリート集を入口にして、オペレッタやライブ録音へと聴き進めると、タウバーの多面的な魅力をじっくり味わうことができるでしょう。

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参考文献