Zappの聴き方ガイド—ロジャー・トラウトマンのトークボックスが生んだ80年代ファンクとGファンクへの影響を深掘り
イントロダクション — Zappとは何か
Zapp(ザップ)は、リーダーのロジャー・トラウトマン(Roger Troutman)を中心に1970年代末から1980年代にかけて活動したアメリカのファンク/R&Bバンドです。ロジャーのトークボックス(talk box)を前面に出したサウンド、強烈なグルーヴとシンセ・ファンクの融合は、当時のダンス・ミュージックに新しい方向性を与え、のちのヒップホップ/Gファンクに多大な影響を残しました。本コラムでは、Zapp(とロジャー・トラウトマン)を深掘りしつつ、レコード(アルバム)ごとの聴きどころとおすすめ盤を紹介します。
Zapp(1980年) — デビュー作の衝撃
おすすめ理由:Zappのセルフタイトル・デビューは、グループの代名詞ともいえる「More Bounce to the Ounce」を含む、シンプルかつ強烈なファンクの声明です。トークボックスを用いたヴォーカル表現、太いベースライン、シンセのワンフレーズがループする作りは、それまでのブラック・ミュージックにない“機械的でありながら生々しい”躍動感を生み出しました。
- 代表曲:More Bounce to the Ounce、I Can Make You Dance
- 聴きどころ:1曲目の持続するファンク感、ロジャーのトークボックスのイントロダクション、ダンス・フロアを意識したアレンジ
- 影響:ヒップホップでのサンプリング源として頻繁に使用され、のちのGファンク成立にも寄与
Zapp II(1982年) — よりダンサブルに
おすすめ理由:前作の路線を踏襲しつつ、よりダンス寄りのアレンジやポップな側面を強めた2作目。シングル・カットされた楽曲が多く、クラブでの浸透力が高い作品です。
- 代表曲:Dance Floor(ダンスフロアでの鉄板)、Do Wa Ditty
- 聴きどころ:シンセ・リフとホーンの使い分け、曲ごとのテンポ感のバリエーション
- 影響:ダンス・ミュージックとしての汎用性が高く、ラジオやクラブでのヒットを重ねた
Zapp III(1983年) — 実験と安定の狭間
おすすめ理由:グループとしての熟練が見える一方で、曲ごとに異なるアプローチを試みたアルバム。ファンク・ナンバーだけでなく、スロウやR&B寄りの曲もあり、バンドの幅を感じられます。
- 代表曲:曲名の選定はボリュームがありますが、アルバム全体の流れを通してトラウトマンのシグネチャーが堪能できます
- 聴きどころ:中~後期のシンセ使いや、ヴォーカルの処理、バラードの表現
The New Zapp IV U(1985年) — 名曲「Computer Love」を含む成熟期
おすすめ理由:このアルバムには代表的なスロー・チューン「Computer Love」が収録されており、トークボックスを用いたメロウなR&Bの傑作として広く知られています。テクノロジーへの関心が高まる時代背景と相まって、情感豊かなシンセ・アレンジが光ります。
- 代表曲:Computer Love(シンセ・バラードの完成形)、I Want to Be Your Man(ロジャーのソロとしても知られる)
- 聴きどころ:スロー・ナンバーのアレンジ、トークボックスのメロディ展開、シネマティックなシンセワーク
- 影響:R&Bのスロウ・ジャムとして継承され、後のアーティストにも多くカバー/参照された
Roger Troutman ソロ作 — 「The Many Facets of Roger」(1981)と「Unlimited!」(1987)
おすすめ理由:Zapp名義とはまた違うロジャー個人の音楽観を掘り下げたい場合、ソロ作は必須です。特に「The Many Facets of Roger」は多彩な表現を、「Unlimited!」は80年代後期のプロダクションを反映した作風が魅力です。ロジャーのトークボックス表現がよりパーソナルに、リード・ヴォーカルやソングライティングにフィーチャーされています。
- 代表曲:I Want to Be Your Man(いくつかのバージョンが知られる)、Ain't Nobody Better
- 聴きどころ:ソロ名義ならではのヴォーカル表現と、個人的なリリック/メロディの深さ
Zappの聴き方・注目ポイント(ジャンル的、歴史的観点から)
- トークボックスの使い方:ロジャー・トラウトマンの最大の個性。楽器的役割を果たすだけでなく、歌の一部としてメロディ/感情表現を担う。
- サンプリング文化との関係:More Bounce to the Ounceなどはヒップホップでの頻繁なサンプリング源。Zappのグルーヴを起点に新しい楽曲が生まれ続けている。
- Gファンクへの橋渡し:ウェストコーストのアーティスト(Dr. Dreら)がGファンクを作る際に参照した要素が多く、Zappのシンセ使いやリズム感はそのまま進化していった。
- ダンス vs バラードの両面性:アルバムごとにダンスフロア狙いのトラックと、情緒的なスロウのバランスが取られている点に注目すると、バンドの表現の幅が見える。
おすすめの聞き比べプラン
初めてZappに触れる人は、以下の順で聴くと彼らの進化と幅がよく分かります。
- 1. Zapp(1980) — 原点と代表曲を体感
- 2. Zapp II(1982) — ダンス性の拡張
- 3. The New Zapp IV U(1985) — メロウで成熟した側面(Computer Love)
- 4. Roger Troutman ソロ作 — 個人表現とアレンジの多様性
文化的・歴史的な意義
Zappは単なるファンク・バンドにとどまらず、80年代以降のブラック・ミュージックにおける“音色”と“表現方法”を刷新しました。トークボックスを中心とした声の楽器化、シンセを用いたループ感、そしてダンサーやクラブに向けたグルーヴ設計は、長年にわたりサンプリングやリバイバルの対象となり続けています。現在のR&B/ヒップホップの一部サウンドは、Zappの遺産なしには語れません。
まとめ:どのレコードから入るべきか
最初に聴くならセルフタイトルのZapp(1980)を強く推奨します。ファンクの本質と、ロジャー・トラウトマンのトークボックスという“武器”が最もストレートに伝わる一枚です。その後、ダンス性を求めるならZapp II、メロウさを味わいたければThe New Zapp IV U、個人の表現を深めたければRoger Troutmanのソロ作へ進むと、Zappの全体像がつかめます。
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参考文献
- Zapp (band) — Wikipedia
- More Bounce to the Ounce — Wikipedia
- Zapp — AllMusic
- Zapp — Discogs
- Roger Troutman — Wikipedia
- Zapp — WhoSampled (サンプリング情報)


