Richard Hell & the Voidoids徹底解説:Blank GenerationとDestiny Streetを軸にするパンク史と聴き方ガイド
Richard Hell & the Voidoids — おすすめレコード 深堀コラム
1970年代後半のニューヨーク・パンク/ポストパンク・シーンを語るうえで、Richard Hell & the Voidoids(以下Voidoids)は外せません。Richard Hell(本名リチャード・マイヤーズ)は、ファッションやリリック、ヴォーカル/パフォーマンスで“パンクの思想”を体現した存在であり、Voidoidsはその具現化でした。本コラムでは、代表作を中心に作品ごとの聴きどころ、音楽的特徴、歴史的文脈、初心者におすすめの聴き方や買い方のポイントを解説します。
背景とバンドの特色
Richard HellはTelevisionやHeartbreakersでの短い在籍を経て、自身のバンドVoidoidsを結成しました。ギターのロバート・クイン(Robert Quine)やイヴァン・ジュリアン(Ivan Julian)、ドラムのマーク・ベル(Marc Bell、後のMarky Ramone)らの演奏は、パンクの粗削りな勢いと高度なギター・インタープレイを同居させています。
- ギターワーク:QuineとJulianのツイン・ギターはノイズとメロディを同時に鳴らす独特の掛け合いが特徴。
- リリック:Hellの歌詞は自己の虚無感やアイデンティティ、都市生活の断片を詩的に切り取る傾向がある。
- スタイル:見た目や態度も含めて“Blank Generation”という概念=帰属しない世代の宣言を体現。
必聴アルバム:Blank Generation(1977)
Voidoidsのデビュー・フルアルバムで、彼らの代表作。パンクのアンセムとなったタイトル曲「Blank Generation」を筆頭に、歌詞の切れ味、ギターの緊張感、Hellの語りに近い歌い方が鮮烈に残ります。ニューヨークのクラブ・シーンから直接放たれたような粗さと、演奏面での洗練が同居する一枚です。
- 代表曲:Blank Generation(タイトル曲) — 世代の無所属感を如実に表したフレーズとフック。
- 注目曲:Love Comes in Spurts — ギターのドラマ性と刹那的なリリックが印象的。
- 聴きどころ:ツイン・ギターの掛け合い、曲によって見せる冷笑的なトーンと激情の対比。
- おすすめ聴取順:タイトル曲で世界観を掴み、その後ロック寄りの曲→スロウで詩的なナンバーへと進むとバランスが良い。
2ndアルバム:Destiny Street(1982)
Blank Generationの衝撃から数年を経てリリースされた作品。音楽性はやや洗練され、ポップな要素や楽曲構成の緻密さが強調されています。生々しさは抑えられる場面もありますが、Hellのソングライティングの幅が広がったことを感じさせるアルバムです。
- 特徴:曲によってはポップ寄りのメロディと知性を兼ね備え、初期の荒々しさとは異なる成熟が見られる。
- 聴きどころ:歌詞の内省性と、Voidoidsとしての演奏力を活かした緻密なアンサンブル。
- おすすめの聴き方:Blank Generationと比較しながら、Hellの作家性とバンドの変化を確認する。
シングル/コンピレーションで押さえておきたい音源
バンドのシングルや編集盤にはアルバム未収録曲やライブ・バージョン、初期の録音が含まれていることがあり、バンドの成長やニューヨークの現場感を追うのに役立ちます。初期シングル群はパンクの初期衝動をダイレクトに伝えてくれます。
- 初期シングル:舞台となるクラブでの刺激的な演奏を伝える録音が多い。
- 編集盤/ベスト:曲の系譜を追うのに便利。ブックレットで当時の解説や写真が付く再発盤は参考になる。
楽曲解釈と歌詞の読み方
Hellの歌詞は断片とイメージの連鎖で構成されることが多く、直線的な物語よりむしろ感情や態度の“宣言”として受け取ると理解が深まります。「Blank Generation」はタイトル自体がコンセプト。孤立や反抗ではなく“帰属しないことを選ぶ”姿勢が滲みます。
- 詩的要素:都市の風景、孤独、愛憎などを短いフレーズで切り取り、反復と断絶で効果を生む。
- 音と意味の関係:ギターの不協和音や切れ味のあるリズムが、歌詞の緊張感を増幅させる。
初心者へのおすすめの聴き方
初めてVoidoidsに触れるなら、まずはBlank Generationのアルバム全体を通しで聴くことを勧めます。そこで世界観を掴んだら、シングルやDestiny Street、編集盤で異なるアプローチやライブ感を比較すると深く楽しめます。
- ステップ1:Blank Generation(アルバム)を一度通して聴く。
- ステップ2:気に入った曲のシングルやライブ音源を聴き比べる。
- ステップ3:Destiny Streetで作風の変化や成熟を確認する。
購入時の選び方(音質・版別の選択)
コレクション目的なら初期オリジナル盤に価値がありますが、音質や資料(解説や未発表曲)を重視するなら、ライナーノーツやボーナス・トラックが充実した信頼できるリイシュー盤もおすすめです。まずは中身(収録曲・ボーナス・解説)を確認して、自分の目的に合った盤を選びましょう。
Voidoidsが後世に与えた影響
Voidoidsの影響はパンクという枠だけでなく、ポストパンク、オルタナ、インディ・ギター・バンドの美学、そしてパンク・ファッションや自己表現の面まで広がっています。Richard Hellの文学的な視点と“帰属しない”という宣言は、以後の多くのミュージシャンにとって重要な参照点になりました。
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参考文献
- Richard Hell — Wikipedia
- Blank Generation (album) — Wikipedia
- Richard Hell & the Voidoids — AllMusic
- Richard Hell & the Voidoids — Discogs
- Pitchfork(レビューや歴史的文脈の参考として)


