Concentus Musicus Wienの原典主義とHIP演奏を徹底解説—歴史・特徴・名盤ガイドと聴きどころ

Concentus Musicus Wienとは

Concentus Musicus Wien(コンチェントゥス・ムジクス・ウィーン、以下CMW)は、1953年にニコラウス・ハノンクルト(Nikolaus Harnoncourt)とアリス・ハノンクルト(Alice Harnoncourt)によってウィーンで創設された古楽アンサンブルです。バロック以前から古典派にいたるまで“原典主義”に基づく演奏を追求し、当時主流であったロマンティックな解釈とは一線を画す新鮮な音楽表現を提示して、世界的な古楽復興と歴史的演奏解釈(Historically Informed Performance:HIP)運動の草分け的存在となりました。

歴史と発展

CMWは創設当初から、ヴィオラ・ダ・ガンバやヴィオローネ、天然トランペット、コルネット、初期の木管楽器など当時の楽器や奏法を研究し、実際の演奏に取り入れることで知られました。1960〜70年代にはモンテヴェルディやバッハといった作曲家の作品で注目を集め、録音活動や国際ツアーを通じてその名を広めました。

創設者のニコラウス・ハノンクルトは指揮者・音楽学者として、アリスは第一ヴァイオリン奏者・教育者としてCMWの音楽性を牽引しました。ハノンクルトは2016年に亡くなり、アリスも後に逝去しましたが、彼らの仕事は多くの後進の奏者とアンサンブルに影響を与え続けています。

音楽的特徴とアプローチ

  • 原典(史料)主義に基づく解釈:楽譜や当時の奏法書・楽器を丹念に調べ、作曲当時に近い音色や発音、装飾を復元することを重視します。
  • オリジナルまたは復元楽器の使用:現代楽器とは異なる倍音構造やアタックをもつ古楽器がもたらす音色を活かし、各声部の透明性を高めます。
  • リズム感と音楽的レトリック:語りかけるようなフレージングや、テキストに対する強い表現意図(レトリック)を伴った自然なテンポ変化が特徴です。
  • 柔軟なアンサンブルサイズ:作品や様式に応じて室内楽的な小編成から合唱を伴う大編成まで柔軟に編成を変え、常に作品の本質を模索します。
  • 通奏低音(バッソ・コンティヌオ):チェンバロやオルガン、リュート系低音楽器の組合せによる多彩な伴奏表現で和声進行とリズムを支えます。

代表曲・名盤の紹介

以下はCMW(主にニコラウス・ハノンクルト指揮時代)を代表する録音例と、その聴きどころです。各録音は当時のHIPの先駆的事例として影響力が大きく、現在でも入門や再発見にふさわしい名盤とされます。

  • モンテヴェルディ:L'Orfeo(オルフェオ)

    初期オペラの傑作を歴史的楽器で再現した演奏。ドラマ性を重視しつつ、古楽器ならではの色彩と透明感で物語を描き出します。初期バロックの語法や通奏低音の扱いが学べます。

  • モンテヴェルディ:Vespro della Beata Vergine(ヴェスプロ、1610年の晩祷)

    宗教曲における多彩な合唱・独唱・器楽の対話が、古楽器アンサンブルの鮮やかな音色で再現されています。音響的な対比とレトリック表現が際立つ名演。

  • J.S.バッハ:マタイ受難曲(St Matthew Passion)

    大規模宗教曲を、バロック奏法に基づいて再解釈した演奏。ソロ歌手や合唱、室内オーケストラが緊密に連携し、物語の内面的ドラマが深く表現されます。

  • ヘンデル/バロック宗教曲・オラトリオ作品

    ヘンデルのオラトリオやコラール曲群における明瞭なリズム感と合唱・独唱のバランスは、CMWの得意分野の一つです。自然なテンポと装飾による歌唱表現が魅力です。

  • ハイドン/古典派作品(代表的演奏例)

    CMWはバロックだけでなく古典派作品にも歴史的奏法を適用し、新たな解釈を提示しました。ハイドンやモーツァルトの宗教曲や祝祭曲などで、古楽的な透明性が際立ちます。

演奏を聴くときのポイント(聴きどころ)

  • 音色の違いに注目:モダン楽器と異なる倍音の広がりやアタック感が表現の出発点になります。
  • アゴーギク(テンポやニュアンスの揺れ):局所的なテンポの変化や強弱が語りのように効いているかを聴き取ってみてください。
  • 通奏低音の役割:和声とリズムの支柱としての働き、さらに即興的装飾の有無を確かめると理解が深まります。
  • 声楽表現:装飾や発音がテキストの意味とどう結びついているかを意識すると、表現意図が明瞭になります。

CMWの影響とレガシー

CMWは古楽演奏の基準を引き上げ、楽器製作者、指導者、大学や音楽院での研究・教育にも大きな影響を与えました。多くの若手奏者や新しい古楽アンサンブルがCMWの録音や演奏スタイルから刺激を受け、現在のHIPの広がりを形作る一因となっています。

コンサートでの体験

CMWのコンサートでは、古楽器特有の親密で生々しい響きが会場に直接届きます。大音量や厚い弦楽ではなく、個々の声部が鮮明に浮かび上がる点が魅力。演奏会場も中規模の教会やサロンなど、音響的に楽器の細部まで感じられる場所が多く選ばれます。

おわりに

Concentus Musicus Wienは、単なる“復古的な再現”にとどまらず、過去の音楽を現代に生き生きと甦らせるための総合的な方法論を提示しました。声と器楽の語り合いを重視するその姿勢は、古楽入門者にも深い感銘を与え、長く楽しめる音楽体験を提供してくれます。まずは代表的な録音を数点聴いて、その音色や表情の違いを確かめてみてください。

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参考文献