ジェリー・ロール・モートン入門ガイド:初期ジャズの編曲と即興を理解する厳選レコードと聴き方

はじめに — ジェリー・ロール・モートンとは

Jelly Roll Morton(ジェリー・ロール・モートン、1890–1941)は、ニューオーリンズ出身のピアニスト/作曲家で、ラグタイム、ブルース、初期のジャズを結びつけたパイオニアの一人です。彼自身が「私はジャズを発明した」と語ったことで物議を醸しましたが、実際には即興と編曲の橋渡しを行い、バンド編成での緻密なアレンジや「ストップタイム」「ブレイク」「コール&レスポンス」を巧みに取り入れた点で大きな影響を残しました。

おすすめレコード(厳選)

1) Jelly Roll Morton & His Red Hot Peppers — 1926–1928(レッド・ホット・ペッパーズのスタジオ録音)

概要:モートンが作曲家/編曲家としての才を最も鮮明に示す一連のスタジオ録音です。小編成ながら緻密なアンサンブルと即興が融合し、当時のダンス音楽とコンサート音楽の中間に位置する洗練を聴かせます。

  • 聴きどころ:Black Bottom Stomp(圧巻のアンサンブルとソロ)、Dead Man Blues(劇的なエンディングと対位法的アレンジ)、Doctor Jazz(ディテール豊かなリズム変化)
  • なぜ重要か:作曲としての完成度、楽器間の掛け合い、スタジオ・ワークでの「最終形」がここに示されます。モートンの「ジャズ=作曲+即興」の思想が最もわかりやすく聴けます。

2) The Library of Congress Recordings(1938年のロング・インタビュー/ソロ演奏)

概要:アラン・ロマックス(Alan Lomax)らによるライブラリー・オブ・コングレス収録で、モートンの語り(自伝的エピソード)とソロピアノ演奏が聴けます。音楽史的な証言としての価値が高い資料です。

  • 聴きどころ:自身の曲解説やニューヨーク/ニューオーリンズ時代のエピソード、ソロでのイントロ・リズム解説やバージョン違いの演奏。
  • なぜ重要か:モートン自身の言葉で楽曲や奏法の背景を語る点が何より貴重。演奏だけでなく歴史的コンテクストを理解したい人に必携。

3) Complete 78s / Chronological Complete Collections(1920s〜1930sの全録音集)

概要:78回転のセッションを網羅したボックス/全集。Red Hot Peppersの名演に加え、ソロや他のバンドでの録音も多数収録され、モートンの全貌を追えるコレクションです。

  • 聴きどころ:年代順に聴くことで、スタイルの変遷(ラグからニューオーリンズ・スタイル、後期の成熟)を追える点が魅力。
  • なぜ重要か:断片的ではなく通史として聴けるため、学術的にもリスナーの理解を深めます。余裕があれば全集レベルでの鑑賞をおすすめします。

4) 入門用ベスト/コンピレーション盤(いきなり全曲より要点を)

概要:最初に触れるならシングルCDやストリーミングの「ベスト」がおすすめ。代表曲を厳選して聴けるため、まずモートンの音世界に親しむには効率的です。

  • 代表収録曲:King Porter Stomp、Wolverine Blues、Grandpa's Spells、Black Bottom Stomp、Dead Man Bluesなど。
  • なぜ重要か:短時間でモートンの「型」と「独自性」を把握でき、その後で全集や図録的資料に深掘りする流れが自然です。

各レコードの聞き方・注目ポイント(音楽そのものにフォーカス)

以下はレコード再生機器や盤の扱いではなく、音楽的にどう聴くかのガイドです。

  • 編曲を見る聴き方:Red Hot Peppersの曲は「誰が何をしているか」を意識して聴くと面白い。旋律楽器のメロディ、トロンボーンやクラリネットのカウンターライン、リズムセクションの支え方を分離して追ってみてください。
  • ソロ演奏の対比:スタジオ録音の即興とライブラリー録音のソロ演奏を比較すると、モートンの「型」と「即興の伸び」の差が見えてきます。ソロでは構成的にフレーズを積み重ねる傾向が強く、バンドではアンサンブルでの役割分担が明確です。
  • 作曲・テーマの反復と変奏:モートンは短いフレーズを繰り返しながら変形させていくのが上手です。初回はテーマを追い、2回目以降は各楽器の装飾やリズムの変化に注目しましょう。
  • 歌詞・語りの文脈:ライブラリー収録の語りや一部の歌ものを読むと、曲に込められた社会的・地理的背景(ニューオーリンズのダンスホール文化、黒人コミュニティの言語表現など)が理解できます。
  • 録音の時代性を味わう:初期の録音は音質やステレオ感が現代とは異なります。音質の限界を「当時の演奏表現の生々しさ」として受け止めることで、より深く楽しめます。

おすすめの聴き順

初心者向けにステップを挙げます。

  • 1. 入門ベストで代表曲に触れる(短時間で印象を把握)
  • 2. Red Hot Peppersのスタジオ録音(編曲とバンドの完成度を聴く)
  • 3. Library of Congress録音(語りとソロで背景・解説を得る)
  • 4. 全集や年代順コレクションで通史的に聴く(発展と変化を見る)

注目すべき代表曲(短い解説付き)

  • Black Bottom Stomp — 劇的でダイナミック、バンドの完全なまとまりを示す名曲。
  • Dead Man Blues — 劇的なアレンジ、場面転換がドラマティックな一曲。
  • King Porter Stomp — 後のスウィングにも影響を与えた楽曲。編曲の骨格がよくわかる。
  • Wolverine Blues — ブルースとラグの要素が混ざった、聴き心地の良いモード。
  • Grandpa's Spells — 物語性のあるピアノ動機と変幻自在のリズム処理が魅力。

まとめ — なぜモートンを聴くべきか

Jelly Roll Mortonは単なる「ピアニスト」ではなく、初期ジャズにおける編曲家・作曲家としての役割を確立した人物です。彼の録音群を通じて聴くことで、ラグタイムからジャズへと移行する過程、バンド内での作曲的思考、ニューオーリンズ音楽の都市的文脈が手に取るように理解できます。まずは代表曲で魅力をつかみ、興味が湧いたらライブラリックな資料や全集に進むのが良いでしょう。

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参考文献