ジム・ケルトナーのドラミングを徹底解説:セッションドラマーの名盤と聴き方ガイド
ジム・ケルトナーとは
ジム・ケルトナー(Jim Keltner)はアメリカのセッション/スタジオ・ドラマーで、1960年代後半から現在に至るまでポップ、ロック、フォーク、ブルースなど幅広い現場で活動してきました。彼の名前はソロ・アーティストのアルバムでは前面に出ることは少ないものの、数多くの名盤で“曲の空気”を作る決定的な役割を果たしてきました。ジョン・レノンやジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ライ・クーダー、ランディ・ニューマン、トラベリング・ウィルベリーズなど、珠玉のコラボレーションが光ります。
ケルトナーのドラミングの特徴 — 何を聴けばいいか
グルーヴの“ゆるさ”と“正確さ”を併せ持つ大人のフィール:演奏の芯は堅く、しかしビートはきっちり硬直させずに曲の呼吸を作ります。裏拍を少し遅らせるような“後ノリ”や、軽いスネアのゴーストノートでリズムに柔らかさを与えるのが特徴です。
ダイナミクスのコントロールが巧み:曲の構造に合わせてスネアやシンバルの使い方を微妙に変え、ヴォーカルのニュアンスを損なわない“寄り添う”ドラミングをします。
シンプルだが“聴かせる”フィル:目立ちすぎない短いフィルや間の取り方で、曲の進行を自然に推し進めます。いわゆる“職人芸”的な美学が感じられます。
おすすめレコード(入門から深堀りまで)
以下は、ケルトナーのプレイを楽しめる代表的なレコード群です。どれも彼の“味”が分かりやすく出ている作品で、ジャンルや時期ごとの変化も追えます。参加クレジットの詳細は参考文献(AllMusic / Discogs 等)でご確認ください。
George Harrison — All Things Must Pass (1970)
解説:ジョージ・ハリスンのソロ初期の大作。複数の名ドラマーが参加する大規模なセッションの中で、ケルトナーは曲に温かみと推進力を与えるプレイを見せます。スロウからアップ・テンポまで、器用に曲の色合いを整える様子が聴き取れます。John Lennon — Walls and Bridges (1974)
解説:レノンのソロ期の重要作の一つ。ポップな曲から内省的なナンバーまで幅広く、ケルトナーの“寄り添う”ドラムがアルバムのムードを支えています。ヴォーカル中心の曲でのダイナミクス処理に注目してください。Traveling Wilburys — Traveling Wilburys Vol. 1 (1988)
解説:ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、トム・ペティらによるプロジェクト。あくまで“歌を立てる”バックビートとしての役割が求められる場面が多く、ケルトナーの堅実で柔軟なドラミングの良さが分かります。バンド感が強い曲での安定感を聴いてください。Ry Cooder 関連作(例:セッション参加曲群)
解説:ケルトナーはライ・クーダーのようなルーツ志向のアーティストと相性が良く、ブルージーでスワンプ寄りのノリを自然に出します。個々のアルバムではなく、クーダーのキャリアに散らばる共演トラックを通して“土着的なフィール”を堪能できます。Bob Dylan 関連作(セッション参加曲を抽出して聴く)
解説:ディラン作品の多くで、ケルトナーは歌詞とメロディを第一に考えたドラミングで支えています。アルバム単体でなく、複数アルバム/ツアーに渡る参加曲をまとめて聴くことで彼のアプローチの変化が見えてきます。Randy Newman / Neil Young / Eric Clapton 等のセッションワーク
解説:ケルトナーは数多くのアーティストのレコーディングに顔を出しています。ランディ・ニューマンのペン中心のアレンジ、ニール・ヤングの荒いロック、エリック・クラプトンのブルーズ寄りのトラックなど、ジャンルを超えて“曲を活かす”プレイが共通しています。
各レコードを聴くときのポイント(実践的な聴き方)
まずドラムの“音量”ではなく“置き方”に注目する:ケルトナーは爆発的な音量で目立つタイプではないので、スネアとバスドラムの配置、ハイハットやシンバルの入れ方を耳で追うと彼独自の決めごとが見えてきます。
歌との距離感を意識する:ボーカルのフレーズに合わせてシンバルやスネアの強さ・タイミングを変えている部分を見つけると、“ドラマーとしての勝負どころ”が分かります。
同じ曲の異なるテイク(デモやアウトテイク)が聴ける場合は比較を:スタジオワークでの微調整や、曲に応じたアプローチの違いが顕著に出ます。
ケルトナーのプレイを深堀りするための聴き方・課題
短いフレーズをループして分析:例えば8小節の繰り返しでスネアの入れ方やハイハットのアクセントを細かく聴き取り、表情の付け方を模倣してみてください。
ヴォーカル主体の曲とインスト主体の曲を交互に聴く:歌を“立てる”ときと楽器群を“牽引”する場面での違いが勉強になります。
同時代の他のセッションドラマー(ジム・ゴードン、ハル・ブレインなど)と比較してみる:プロダクションやアレンジの違いが、ドラマーの選択にもどのように影響したかが分かります。
まとめ
ジム・ケルトナーは“プレイヤーとしての品格”を持ったドラマーです。前に出るタイプの名手ではないものの、曲の肝となる呼吸を作り出す力は絶大で、名盤の影に必ずといっていいほど彼の存在がある――そんな見方で音盤を聴き直すと、新たな発見が生まれます。まずは上のおすすめレコード(および各アーティストのセッション参加曲)をきっかけに、彼のプレイの引き出しを一つずつ確認してみてください。
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