ジム・ケルトナー:ポケット感と歌心で曲を支える名セッションドラマーの軌跡と名盤ガイド

プロフィール

ジム・ケルトナー(Jim Keltner)は、20世紀後半から21世紀にかけて最も信頼され、幅広く起用されたセッションドラマーの一人です。1942年生まれ(オクラホマ州タルサ出身とされる)で、ロック、フォーク、ブルース、カントリー、ポップスなど多彩なジャンルで活躍してきました。目立つ派手さよりも「歌を支える」「曲に寄り添う」プレイを信条とし、数多くのビッグネームのレコーディングやツアーに招かれてきました。

キャリアのハイライト

  • 1960〜70年代にロサンゼルス周辺のセッションワークで頭角を現し、多くのトップアーティストに重用されるようになりました。
  • ジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、エリック・クラプトンなど、いわゆる「大物」アーティストの作品に度々参加。アーティストのソロ作やプロジェクトで重要な役割を果たしました。
  • ジョン・ハイアットの名盤「Bring the Family」(1987年)での起用をはじめ、ライ・クーダー、ニック・ロウらとの共演が縁で、後にリトル・ヴィレッジ(Little Village)というスーパーグループの一員としてアルバムを発表しました。
  • 氏のキャリアは「幅広さ」と「持続性」に特徴づけられ、スタジオワークだけでなくライブにも多数参加しています。

ドラミングの特徴と魅力

  • 「ポケット感」:テンポやグルーヴの中心を外さない、安定した「ポケット」を刻む能力。曲に自然に馴染むタイム感が非常に高い。
  • 「歌心」:歌やメロディを第一に考えたプレイ。派手なフィルや速いフィンガーワークを多用せず、音楽全体の流れを大事にする。
  • ダイナミクスと質感の使い分け:ブラシ、スティック、マレットやシンバルの使い分けで、同じパターンでも曲ごとに微妙に色合いを変える。
  • ゴーストノートや微細なアクセントによる「味付け」:表面上はシンプルでも、聴き込むと細かいニュアンスで曲を引き立てている。
  • 柔軟性と引き出しの多さ:ロック、フォーク、ブルース、カントリー、R&B といった異なるスタイルで違和感なくプレイできる。
  • スタジオでの即興力と判断力:短いテイクで的確に最適なパートを作り上げるスキルが高く、制作上の時間とコストを節約する「思考するドラマー」でもある。

代表的な共演・名盤(入門ガイド)

ケルトナーは幅広いアーティストの作品に参加しているため、「彼を聴く」にはいくつかの切り口があります。以下は入門に適した例と、そこから聴き取れるポイントです。

  • John Hiatt — Bring the Family(1987)

    ケルトナーがリズム感と味付けで名を馳せた作品のひとつ。小編成のバンド編成での繊細なドラミングを聴けます。

  • Little Village — Little Village(1992)

    ジム・ケルトナーが参加したスーパーグループの唯一のフルアルバム。バンドメンバーとの化学反応を通じて、彼のプレイがバンドサウンドとどう融合するかが分かります。

  • Bob Dylan、John Lennon、George Harrison らとのセッションワーク(各アーティストのソロ作やスタジオ録音)

    大物アーティストのレコーディングでの控えめながらも決定的な貢献を多数聴けます。曲を尊重するアプローチが一貫しています。

聴きどころ — ケルトナーのプレイの観察ポイント

  • スネアやハイハットの“裏拍”の処理:ゴーストノートやスイートスポットを確認すると、彼の「余白を活かす」感覚がよくわかります。
  • シンバルワークとサウンドの選択:同じテンポでもシンバルの種類や叩き方で曲の質感が大きく変わることに注意して聴いてみてください。
  • ボーカルやギターとの対話:歌やリード楽器が前に出る瞬間に音量やフィルを抑えるなど、常に曲全体を見てプレイしているのが分かります。
  • 余白の扱い方:あえて手数を減らす瞬間こそ彼らしい味が出るため、静かなパートも重要な聴きどころです。

なぜ多数のアーティストがケルトナーを選ぶのか

  • 楽曲第一主義:アーティストやプロデューサーの意図を尊重し、曲を良くするために最適な選択をする。
  • 信頼性とスピード:短時間で求められるテイクを作ることができるため、レコーディング現場で重宝される。
  • 多ジャンル適応力:どんなスタイルにも違和感なく溶け込める稀有な“器用さ”。
  • 謙虚さとプロの姿勢:自己主張を抑えながらも確実に楽曲を支える姿勢が、長期にわたり仕事を呼び続ける。

まとめ

ジム・ケルトナーは「派手さ」ではなく「曲をより良くする力」で評価されるドラマーです。聴き手としては、彼のプレイを通じて「音楽そのものを前に押し出すためのドラム」という役割の重要性を再認識できるはずです。名プレイヤーにありがちな自己主張よりも楽曲全体の完成度を優先する姿勢は、現代の演奏やプロデュースでも学ぶべきポイントが多くあります。

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参考文献