Heaven 17のプロフィールと代表曲を徹底解説 — 80年代シンセポップの名バンドの背景と影響

Heaven 17 — プロフィールと概要

Heaven 17(ヘヴン・セヴンティーン)は、1980年にイギリスのシェフィールドで結成されたシンセポップ/エレクトロ・バンドです。中心メンバーはマーティン・ウェア(Martyn Ware)とイアン・クレイグ・マーシュ(Ian Craig Marsh)(いずれも元The Human Leagueのメンバー)、そしてボーカリストのグレン・グレゴリー(Glenn Gregory)。彼らは電子音響とダンサブルなファンク感覚を融合させたサウンドで、1980年代のUKポップ/ニュー・ウェイヴ・シーンに独自の存在感を残しました。

結成の背景と名前の由来

Heaven 17は、The Human Leagueの分裂を経て生まれたプロジェクトで、創設者らは当初「British Electric Foundation(B.E.F.)」という名義でも活動していました。バンド名はアンソニー・バージェス(Anthony Burgess)の小説『A Clockwork Orange』に登場する架空のグループ名に由来するとされ、ポップ文化へのアンビバレントな視点を予感させる選択です。

サウンドの特徴と制作姿勢

  • シンセ主導のリズム&ファンク性:アナログ/初期デジタル・シンセとリズム・マシンを駆使しつつ、ブラック・ミュージックに根ざしたゴルベ感(groove)を強く打ち出しています。ディスコ/ファンクの要素を電子的に再解釈した点が魅力です。
  • ソウルフルなボーカル:グレン・グレゴリーの抑制の効いたソウルフルな歌唱が、機械的なトラックに人間味を与えています。時にコーラスやゲスト・シンガーを迎え、厚みのあるヴォーカル・アレンジが聴きどころです。
  • 政治的・社会的テーマ:歌詞には反ファシズムや社会批評を含む曲があり、ダンス感覚と政治意識が併存することが彼らの大きな特徴です。
  • 精緻なプロダクション:マーティン・ウェアらのサウンド・センスは緻密で、ミックスやサウンド・デザインに強いこだわりを感じさせます。電子楽器の可能性を活かしたレイヤー表現が豊富です。

代表曲と名盤(初心者向けガイド)

  • Penthouse and Pavement(1981)

    デビュー盤。政治色とダンサブルなサウンドを両立させた意欲作で、シングル“(We Don't Need This) Fascist Groove Thang”は反ファシズムを歌った問題作として注目を浴びました(当時BBCが放送禁止扱いにした経緯があります)。

  • The Luxury Gap(1983)

    商業的に最大の成功を収めたアルバム。シングル“Temptation”はUKチャート上位に入った代表曲で、エモーショナルなメロディとエレクトロ・ファンクの融合が秀逸です。ポップさと深みが同居する一枚です。

  • How Men Are(1984)

    洗練されたプロダクションとやや冷徹な社会観を併せ持つ作品。シングル“Crushed by the Wheels of Industry”など、批評的でモダンなトラックが並びます。

  • Pleasure One(1986)以降

    80年代半ば以降も活動を続け、音作りの幅やポップ性を模索する時期が続きます。ベスト/リマスター盤やライブ盤も彼らの理解を深めるのに有効です。

歌詞とテーマの深掘り

Heaven 17は表面的なダンス・チューンだけでなく、現代社会への批判や政治的メッセージを織り込むことを厭いません。例えば“(We Don't Need This) Fascist Groove Thang”のような曲は、ナショナリズムや権力に対する明確な立場表明を含んでおり、80年代の政治状況(当時の英米関係や国内政治)を背景にした強いメッセージ性を持っています。踊れるからこそ伝わる皮肉や諷刺、という手法が効果的に用いられています。

影響力とレガシー

  • シンセポップ/エレクトロニカの文脈で重要な存在として評価されており、その洗練されたプロダクションは後の世代のプロデューサーやアーティストに影響を与えています。
  • ダンスミュージックと社会的メッセージを結びつけるアプローチは、エレクトロニック・ミュージックの表現領域を拡張しました。
  • マーティン・ウェアらはB.E.F.などサイド・プロジェクトやプロデュース活動を通じて、他アーティストとの交流やコラボレーションも行い、シーン全体への波及効果を残しました。

ライブ/パフォーマンスの魅力

スタジオ・ワークの精密さとは異なる、即興的なエネルギーやアレンジの差異を楽しめるのがライブの醍醐味です。プログラミング重視の音作りをベースにしつつ、ホーンや生ドラム、コーラスなどを加えてダイナミックに演奏されることがあり、音源とは違う表情を見せることが多いです。

聴き方/楽しみ方の提案

  • 初めて聴くなら、まずは『The Luxury Gap』→『Penthouse and Pavement』の順で。ポップで聴きやすい曲から入ると全体像が掴みやすいです。
  • 歌詞に注目して聴く:踊れるビートの裏にある社会的な視点や批評精神を掘り下げると、楽曲の深みが増します。
  • プロダクションに耳を傾ける:シンセのレイヤー、リズム・プログラミング、ヴォーカルの処理など、音作りの妙を探るのも楽しいです。
  • リマスター盤や12インチ・ミックスを聴くことで、同じ曲でも別の魅力(長尺の展開やダンス寄りのアレンジ)を発見できます。

総括

Heaven 17は、ダンサブルなエレクトロ・サウンドと社会意識を高い水準で両立させたバンドです。80年代シンセポップの典型であると同時に、単なるノスタルジーにとどまらない思想性とサウンドの鋭さを持ち続けています。初期のアルバム群は今なお新鮮で、音楽的・史的観点の双方から再評価に値します。

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参考文献