Mayhem のレコード完全ガイド:時代別おすすめ盤と聴き方・選び方
はじめに — Mayhem をレコードで聴く意味
ノルウェー出身のブラックメタル・バンド Mayhem は、極端な音楽性と波乱に満ちた歴史で金字塔的な存在となりました。彼らの音楽は単なる「速くて激しい」だけでなく、暗黒的な美学、実験的な音響処理、そして時代ごとに変化する表現が混ざり合っています。本稿では、コレクションとして価値があり、音楽的にも理解を深められるおすすめレコードを中心に、作品ごとの聴きどころや時代背景、購入時の選び方の観点から深掘りして解説します。
Mayhem の概略(短め)
Mayhem は1980年代半ばに結成され、初期のデモ/EP群の衝撃的なサウンドを起点に、90年代前半のブラックメタル確立期で重要な役割を果たしました。活動は途切れることなく続き、90年代の激変(メンバーの死や犯罪)を経て、2000年代以降も音楽性を拡張し続けています。レコードで追うことで、スタジオ制作/ライヴ録音/時代ごとの制作姿勢の違いをより明確に感じ取れます。
おすすめレコード(必携・主要作)
Deathcrush(EP, 1987)
Mayhem の初期衝動がそのまま封じ込められた代表的EP。粗い録音、凶暴で挑発的な楽曲群は、後のブラックメタル規範に多大な影響を与えました。初期のスラッシュ/ハードコア的な勢いとブラックメタルとしての非和声性の混在が聴きどころです。コレクター的には初期プレスの12インチを探す価値が高く、サウンドの「生臭さ」を重視するならオリジナル盤が魅力です。
聴きどころ:荒削りなギター、低温で不穏なボーカル表現、初期ブラックメタルの空気感。
De Mysteriis Dom Sathanas(アルバム, 1994)
Mayhem の“公式”ファースト・フルアルバムにして、ブラックメタル金字塔の一つ。ミステリアスで陰鬱、かつ作曲の骨格が明確な楽曲群が特徴です。曲ごとのダイナミクス、アンビエント的な間の使い方、そして暗黒の詩情が強く出ており、ジャンル入門者にも本作を通じてブラックメタルの美学を理解しやすいでしょう。
聴きどころ:冷たいリフ、劇的な展開、代表曲「Freezing Moon」などの名曲群。さまざまな再発があるため、音質・ライナーノーツ・ボーナス収録曲を比較して購入するのがおすすめです。
Live in Leipzig(ライヴ盤)
1989〜1990年前後のライブを収録した名盤で、初期ラインナップのリアルな演奏を捉えています。スタジオ作品とはまた違う切迫感と熱量があり、歴史的価値も高い一枚。ライブ録音ならではの粗さや臨場感を重視するコレクターにとって重要な作品です。
聴きどころ:ライヴにおける緊張感、曲の原点的な解釈、そしてステージ上の生々しさ。
Grand Declaration of War(2000)
ミニマルで実験的・アヴァンギャルドな方向へ大きく舵を切った作品。リズムや構造の面で従来のブラックメタルとは違う取り組みが見られ、評価が分かれるアルバムでもあります。Mayhem が単純な過去の焼き直しではないことを示す重要作です。
聴きどころ:複雑な曲構成、前衛的アプローチ、既存のフォーマットへの挑戦。
Ordo Ad Chao(2007)
暗黒性を極限まで研ぎ澄ました、現代的かつ陰鬱な名盤。低域を強調した重厚な音像、雰囲気を重視したプロダクションにより、従来の「速さ」「荒さ」以外の恐怖感を引き出しています。近年のブラックメタル的な音響実験を志向するコレクターにおすすめです。
聴きどころ:密度の高いサウンドスケープ、抑圧的な雰囲気、ヴォーカルの表現力。
Esoteric Warfare(2014)/Daemon(2019)
近年作として、バンドがどのように21世紀のブラックメタルと対峙しているかを示す作品群。サウンドは多様で、往年の要素と現代的な音響処理が混在します。ディスコグラフィーの「現在」を押さえる上で重要です。
聴きどころ:最新の制作による音質、現行ラインナップの演奏力、曲ごとの多様なアプローチ。
さらに踏み込んだ選び方:どのプレス/盤を狙うか
オリジナル初期プレスは歴史的価値が高く、コレクターズアイテムとして魅力的。ただし音質が粗い場合があるので「音の生々しさ」を重視するか「音質のクリアさ」を重視するかで選び分けるとよいです。
公式リイシュー(デラックス盤やリマスター版)は、ライナーノーツや未発表曲、音質改善を含むことが多く、鑑賞用として合理的。購入前に収録内容とマスターの違いを確認してください。
ライヴ盤やブートレグ類は歴史資料としての価値が高い一方、倫理的・法的に問題のある流通もあります。購入時は出自と内容(例えば過去に物議を醸したジャケット写真を含むもの等)を把握しておくことを推奨します。
作品ごとの“聴き方”ガイド(深堀りポイント)
初期(Deathcrush〜初期デモ):アナーキーな衝動とロウ・テイストを楽しむ。楽曲の核は短く、インパクト重視。
De Mysteriis 周辺:構築美と暗さの両立。メロディラインや曲の展開に注目し、各パートの空間処理(間やひずみ)を見ると面白いです。
2000年代以降:プロダクションや構成の実験に注目。鳴らし方やミックスの違いが作品の解釈を大きく変えます。
注意点(倫理・購入時の心構え)
Mayhem は音楽的に重要ですが、メンバー周辺の事件や一部のリリースの扱われ方に関して物議を醸してきた歴史があります。特に一部のブートレグ(例:自殺の肖像を表紙に使った等)は倫理的に問題があり、購入や展示には配慮が必要です。単にコレクションとしての希少性だけでなく、作品が持つコンテクストを理解した上で入手・鑑賞してください。
まとめ
Mayhem のレコードを集めることは、ブラックメタルという音楽史の重要な潮流をヴィニールで辿ることに他なりません。初期の荒々しさ、90年代の大作、そして21世紀の実験性──各時代ごとに異なる魅力があるため、目的(鑑賞用/研究用/収集用)に応じてオリジナル盤やリイシューを選ぶと良いでしょう。今回挙げた作品群は、音楽的な理解を深め、ディスコグラフィーの核を押さえるのに最適です。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Mayhem — 日本語版ウィキペディア
- Encyclopaedia Metallum: The Metal Archives — Mayhem
- Discogs — Mayhem(ディスコグラフィー)
- AllMusic — Mayhem


