All(オール)徹底解説:メロディック・ハードコアの名盤と魅力を解剖する入門ガイド
All — プロフィールと魅力の深堀りコラム
All(オール)は、アメリカのメロディック・ハードコア/パンク・ロック・バンドで、その起源は1980年代後半にさかのぼります。Descendents のコア・メンバーであるビル・スティーブンソン(Dr)、スティーヴン・エガートン(G)、カール・アルヴァレス(B)が、ボーカリストのマイロ・オーカー(Milo Aukerman)が学究の道へ去ったことをきっかけに結成したプロジェクトがルーツです。バンド名「All」はDescendents の楽曲・概念にもとづく“完全さ(All)”という哲学から取られており、音楽的にもテーマ的にも“全力で突き詰める”姿勢を表しています。
主要メンバーと沿革(概略)
- 中心メンバー:ビル・スティーブンソン(Dr)、スティーヴン・エガートン(G)、カール・アルヴァレス(B)。3人はDescendents時代からの盟友で、演奏面・制作面でバンドの中核を担っています。
- ボーカルは時代とともに変遷。初期はデイヴ・スマリー(Dave Smalley)が参加し、その後スコット・レイノルズ(Scott Reynolds)、さらにチャド・プライス(Chad Price)が加入して現在まで続いています。各シンガーの個性が、アルバムごとの表情に大きく影響しています。
- マスコット「Allroy」:All期に登場するキャラクターで、アルバムやアートワークに繰り返し登場しバンドのビジュアル・アイデンティティを形成しました。
音楽性と魅力の核
All の魅力は、パンクのエネルギーを保持しつつ「メロディ」と「演奏の精度」を高度に両立している点にあります。以下がその主要な特長です。
- 高密度のメロディック・パンク:シンプルなコード進行に頼らず、掛け合いやメロディラインを重視した楽曲構成。キャッチーさと疾走感の両立が得意です。
- テクニカルかつタイトな演奏:ビルの切れ味あるスネアや細かいフィル、エガートンの精緻なギター・アレンジ、アルヴァレスの特徴的なベース・ラインが集合して“職人的”なバンドサウンドを作ります。
- ボーカルの変化が生む多様性:各ボーカリストの声質やフレージングが違うため、アルバムごとの表情が大きく変わるのも聴きどころの一つです。スマリー期はシンプルでストレート、レイノルズ期はメロウかつエモーショナル、プライス期はよりソリッドでロック寄り、という印象を受けることが多いです。
- ユーモアと内省のバランス:ラブソングや日常の愚痴、自己批評をユーモラスに切り取る歌詞と、時に冷静な人生観が混在しており、聴き手に共感を与えます。
- DIY的な精神とプロフェッショナルな制作感の両立:ツアー中心の地道な活動を続けながら、メンバーは制作面でも高いクオリティを追求してきました。ビル・スティーブンソンはプロデューサー/エンジニアとしても活躍し、音作りに大きく寄与しています。
代表作・名盤(選)
All は複数のアルバムを通じて独自の世界を築いてきました。ここでは入門にも適した代表的な作品を挙げ、その魅力を解説します。
- Allroy Sez(1988)
All 名義での初期作のひとつ。初期のエネルギーと荒削りな魅力が感じられる作品で、バンドとしての方向性が明確になっていく過程を聴くことができます。Allroy キャラクターの登場も印象的。
- Allroy’s Revenge(1989)/Allroy Saves(1990)
いずれも“Allroy”期に当たる作品群で、メロディの強化と楽曲バラエティが特徴。曲ごとに表情を変えつつも統一感のあるサウンドメイクが光ります。
- Percolater(1992)
より練られたアレンジと音質の向上が感じられる作品。ポップな要素とハードコア的テンションがうまく混ざり合い、幅広いファン層に訴えかけます。
- Breaking Things(1993)
スコット期の成熟が見えるアルバム。荒々しさと構築的なメロディが同居し、ライブでの強度も高い楽曲が揃います。シングル曲やライブ定番曲も多い時期です。
- Pummel(1995)/Mass Nerder(1998)/Problematic(2000)
チャド・プライス期の作品群。ボーカルの“渋さ”や曲の完成度が増し、90年代後半から2000年代初頭にかけてのバンドの安定期を象徴します。ムードの幅が広く、ポップ/ロック寄りのアプローチも見られます。
ライブとツアー精神
All はライブバンドとしての信頼も厚く、緻密でありながら爆発力のあるパフォーマンスを武器に世界中でツアーを続けてきました。観客との距離感が近く、長期に渡るツアーで培われた“息の合った演奏”は、レコーディング音源とはまた違った魅力を体感させてくれます。メンバーのプロフェッショナルな演奏技術が、ライブでの安定感と高いテンションを支えています。
制作面・プロダクションの特徴
- ビル・スティーブンソンはドラマー以上にプロデューサー/エンジニアとしての評価も高く、サウンドのキレと密度を作る中心人物です。後に設立される The Blasting Room といった制作拠点での経験が、All の録音クオリティに反映されています。
- ギター/ベースのアレンジは緻密で、単純なパンクの枠を超えた構成力があります。そうした楽器隊の完成度が、ボーカルの表現をより引き立てる構図になっています。
All の影響力と位置づけ
All(およびDescendents)は、90年代以降のポップ・パンク/メロディック・ハードコアの潮流に大きな影響を与えました。シンプルな激情だけでなく、メロディと演奏技術を重視する姿勢は多くのバンドに受け継がれ、ポップ寄りのパンクやメロディック・シーンの基盤のひとつとして評価されています。
初めて聴く人への入門ガイド
- 「まずは名盤アルバムを1枚」:入門には『Allroy Sez』か『Percolater』あたりが手ごろです。All の基本的な魅力(メロディ、エネルギー、職人的演奏)が掴みやすいです。
- 「ボーカルで聴き比べる」:デイヴ・スマリー期、スコット・レイノルズ期、チャド・プライス期で印象が変わるので、各期の代表作を1曲ずつ聴いてみるとバンドの多面性がよく分かります。
- 「ライブ音源も体験する」:スタジオ盤の緻密さとライブでの解放感が違うのもAllの面白さ。ライヴ盤やライブ映像でエネルギーを味わってください。
まとめ(All の“魅力”を一言で言うと)
All の魅力は「職人的な演奏力とメロディを、パンクの即時性と結びつけたバランス」にあります。サブカル的なDIY精神とプロフェッショナルな制作力を併せ持ち、ボーカリストの交代による表情の変化も含めて長年にわたり聴き手を惹きつけてきました。パンクの熱量を好きだけれど単調さは避けたい、というリスナーには特に刺さるバンドです。
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