ブークレとは何か──素材・製法・着こなし・お手入れまで徹底解説
イントロダクション:ブークレ(bouclé)とは
ブークレ(フランス語:bouclé)は「輪」「カール」を意味する言葉に由来し、糸や布地の表面に小さなループ(輪)が規則的または不規則に現れる独特のテクスチャーを持つ素材の総称です。主にウールやモヘア、シルク、コットン、あるいは合成繊維を用いて作られ、ざっくりとした暖かさと立体的な表情が特徴です。ファッションやインテリア、家具張り地など幅広い分野で用いられ、クラシックなジャケットからモダンなチェアまでその存在感は強烈です。
語源と歴史的背景
「ブークレ」はフランス語で「曲がった」「輪になった」を意味し、19世紀から20世紀にかけてテキスタイルの一技法として広く認識されるようになりました。20世紀中盤、ココ・シャネルがツイードやブークレを用いたジャケットでこの素材のファッション性を高めたことで、ブークレは高級婦人服の定番となりました。以降、織物技術の発展とともに多様な原料や撚り方が生まれ、今日では多種多様なブークレ製品が流通しています。
製法と構造:どうやってブークレ特有のループができるのか
ブークレの外観は「ループのある糸(ブークレヤーン)」によって生まれます。代表的な製法は次の通りです。
- コア・アンド・スラブ方式:ひとつの太いコア糸に遊びのあるループ状のスラブ糸を撚り合わせることでループを作る。ループの大きさや間隔は撚り方や糸の太さで調整される。
- ループ形成工程:編み機や織機上で意図的に糸を緩ませてループを作る手法。主に織物で用いられる。
- 混紡・ブレンド:天然繊維と合成繊維を組み合わせることで、コストや耐久性、風合いを最適化する。
こうした工程により得られるループの形状や大きさ、密度により、もっちりしたものから細かいものまで多様なブークレの表情が生まれます。
素材別の特徴
- ウールブークレ:もっとも一般的。保温性が高く、ボリュームのある見た目。ジャケットやコートに多用される。
- モヘア/アルパカ混紡:光沢とふんわり感が出やすい。軽さと暖かさのバランスが良い。
- コットンブークレ:通気性があり、春夏向けの軽めのアイテムに使われることがある。
- 合成繊維(ポリエステル等):耐久性や価格面で有利。洗濯耐性を高めるために用いられる。
編み(ニット)と織(ウィーブ)の違い
ブークレは編み(ニット)素材としても織物としても作られます。ニットのブークレは伸縮性があり柔らかく、セーターやカーディガンに適しています。一方、織物のブークレは形を保ちやすく、ジャケットやコート、インテリア用途(張地やクッション)に向きます。購入時には用途に合わせて編み/織りを確認すると良いでしょう。
外観と機能性:なぜ選ばれるのか
- 視覚的な豊かさ:表面のループが陰影を作り、単色でも立体感が出る。
- 保温性と通気性のバランス:ループが空気を含むため断熱性がありながら、粗い織りだと程よい通気性もある。
- 耐久性と経年変化:ループは引っかかりやすい反面、天然繊維主体だと味わい深く経年変化する。
- 多用途性:フォーマルからカジュアル、インテリアまで幅広い表現が可能。
見分け方と品質チェックポイント
- ループの均一性:均一すぎると機械的で安っぽく見えるが、不均一すぎると粗悪に見える。用途によって好みが分かれる。
- 糸切れ・ほつれ:サンプルの端や裏地の縫い目を確認し、ループが簡単に抜けないかチェックする。
- 裏地と縫製:ジャケットやコートの場合、裏地がしっかりしていると構築感が出て長持ちする。
- ラベルの繊維混率:ウール度合い、合成繊維の割合、洗濯表示を確認する。
着こなしのコツ(メンズ・レディース共通)
ブークレは存在感が強い素材なので、合わせ方によって印象が大きく変わります。
- シンプルと合わせる:滑らかな素材(シルクシャツ、コットンT、レザー)と合わせるとテクスチャーの対比が美しい。
- ワントーンでまとめる:同系色で揃えるとブークレの質感が主役になりつつ上品さを保てる。
- ボリューム管理:ボトムをタイトにする、あるいはトップスをコンパクトにするなどシルエットでバランスを取る。
- アクセサリーは控えめに:ループがアクセントになるため、装飾は最小限にするのがおすすめ。
お手入れと長持ちさせるコツ
ブークレは素材・製法によって洗濯耐性が大きく異なりますが、基本的な注意点は共通しています。
- 洗濯表示を必ず確認:ドライクリーニング推奨のものが多い。
- 部分汚れは早めにスポットクリーニング:やさしい洗剤を使い、擦りすぎないこと。
- 家庭洗濯する場合:ネットに入れ、弱水流・低温で短時間脱水、平干し推奨。強い摩擦はループ抜けや毛羽立ちの原因。
- 毛玉やループの飛び出し:小さなハサミで根元を切るか、毛玉取り器で慎重に処理。無理に引っ張らない。
- 保管:湿気と虫害を避けるため風通しのよい場所で保管し、長期保管は不織布カバーや防虫剤を併用。
サステナビリティと選び方の視点
ブークレ素材の環境負荷は原料と生産プロセスに依存します。天然繊維は生分解性が期待できる一方で、羊毛生産に伴う土地利用や温室効果ガスの問題があります。合成繊維は耐久性や洗濯耐性で利点がある反面、マイクロプラスチックの懸念があります。購入時は次の点をチェックするとよいでしょう。
- オーガニックやトレーサブルなウール、生産者情報の表示
- リサイクル繊維や低環境負荷の染色プロセスを採用しているか
- 長く着られるデザインと製法(修理やリペアのしやすさ)
- ヴィンテージやリサイクル商品の活用:ブークレは古着で味が出ることが多く、リユースが有効
インテリアにおけるブークレの使い方
近年、家具業界でもブークレは人気素材です。チェアやソファの張地、クッションに用いると視覚的な温かみと居心地の良さを演出できます。ただし、日常的な使用や頻繁な摩擦のかかる場所ではループの引っかかりに注意が必要です。屋内のアクセント素材として部分的に取り入れるのがおすすめです。
まとめ:選び方のチェックリスト
- 用途(アウター/ニット/インテリア)を明確にする
- 繊維組成と洗濯表示を確認する
- ループの質感・均一性・縫製をチェックする
- 長く着るためのケア方法を確認する(ドライ/手洗い可等)
- サステナビリティ情報やリペア可否を考慮する


