トライアド徹底解説:基本理論から応用、実践例まで
トライアドとは
トライアド(triad)は、音楽理論における最も基本的な和音の一つで、三つの異なる高さの音が三度(third)の重なりで積み重なったものを指します。一般には根音(root)、第三音(third)、第五音(fifth)の三つで構成され、長三度と小三度の組み合わせにより長・短・増・減の4種類の基本的な性格を持ちます。トライアドは西洋音楽の和声進行の基礎であり、古典からポピュラー、ジャズまで幅広く応用されています。
トライアドの種類と構成
トライアドは第三度の積み重ねによって分類されます。一般的な4種類は次の通りです。
- 長三和音(メジャー・トライアド): 根音→長3度→完全5度。例: C-E-G(Cメジャー)。温かく安定した響き。
- 短三和音(マイナー・トライアド): 根音→短3度→完全5度。例: A-C-E(Aマイナー)。哀愁や内省的な響き。
- 増三和音(オーギュメント・トライアド): 根音→長3度→増5度(長3度+長3度)。例: C-E-G#。不安定で曖昧な響き。
- 減三和音(ディミニッシュト・トライアド): 根音→短3度→減5度(短3度+短3度)。例: B-D-F。緊張感と不安定さが強調される。
転回(インヴァージョン)と機能
トライアドは根音が低音にある根位置の他に、第三音が低音に来る第一転回(1st inversion)、第五音が低音に来る第二転回(2nd inversion)があります。転回は和声音の低音の動きや連結(ボイシング)を滑らかにする道具で、特にバスラインの効率的な動きや応用和声で重要です。第二転回は完全五度が下になるため、機能和声の文脈では進行によっては緊張を帯びますが、例えばパッサージョンやペダルポイントと組み合わせて使われます。
機能和声とローマ数字分析
トライアドは機能和声(Tonic, Subdominant, Dominant)を理解するうえで基礎です。メジャーキーにおける主要な三和音は次のように表されます(Cメジャーを例に)。
- I: C-E-G(トニック)
- ii: D-F-A(スーパートニック、マイナー)
- iii: E-G-B(ミディアント、マイナー)
- IV: F-A-C(サブドミナント)
- V: G-B-D(ドミナント、通常は主要三和音)
- vi: A-C-E(ラディアント、マイナー)
- vii°: B-D-F(導音の減三和音)
ローマ数字分析は和声機能を抽象化して理解・記述するのに便利で、転回は添え字(6, 6/4など)で表されます。例えば第一転回は6、第二転回は6/4です。
スケールとトライアドの対応
メジャー・スケールやナチュラル・マイナーなど、スケール上の各度に対して構築されるトライアドの性質は一定です。モード(ドリア、フリジアなど)に基づくトライアドの色合いも異なり、モード固有の第三度や第五度の位置が和音の性格を決定します。例えば、フリジア・モードでは第二度と六度の半音関係により特有の緊張感が生まれます。
倍音列と調律の観点
トライアドの響きは倍音列(ハーモニクスシリーズ)とも深く関連しています。完全5度や長3度は自然倍音列で強調される関係にあり、純正調(Just Intonation)ではより純粋な比率(長3度: 5/4、完全5度: 3/2)が与えられます。一方、平均律(Equal Temperament)ではこれらが若干分割されるため、楽器やジャンルによっては微妙な色合いの差が生じます。特に減三和音や増三和音は平均律と純正調で印象が変わりやすいです。
ボイシングと音の配置
同じトライアドでも音の配置(オクターブや間隔)によって印象が大きく変わります。密集(close position)と広がり(open position)、テトラコード的な分散和音、テンションを避けるための第七音の省略など、アレンジや編曲ではボイシングの選択が非常に重要です。ピアノやストリングスでは中声部の滑らかな動きを優先し、ギターではフィンガリングの都合で特定のインヴァージョンが多用されます。
トライアドの機能的応用(進行と代理)
トライアドは和声進行の単位として、シンプルなI-IV-V-Iから複雑な循環進行や代理和音(代替和音)に応用されます。例えば、IV→V→Iの進行は典型的なサブドミナントからドミナントへ向かう動きです。代理としては、平行調(parallel)や相補的な三和音(例: viがIの代理として機能する場合)を使って色合いを変化させます。また、スラッシュコード(分数和音)や一時的な転調(モジュレーション)ではトライアドが短時間の機能を担います。
拡張と重ね合わせ
トライアドはさらに7thや9thなどのテンションや、クラスターや複合和音の基礎として使われます。ジャズではトライアドの上にテンションを付加してその和音の色を調整する手法が一般的で、例えばCmaj7はCのトライアドに長7度を加えたものです。さらにトライアドの転回や重ね合わせ(triad pairs)を用いることで、現代的なハーモニーを生み出すことが可能です。
実践的な聴音・識別法
耳でトライアドを識別する訓練は非常に実用的です。長短の判別はまず最初に習得すべきで、次に増減の特定、転回の識別、低音の動きによる機能認識を行います。例えば、長三和音は明るく開放的、短三和音は暗く落ち着いた響き、増・減は不安定と覚えるとよいでしょう。実践では単純なI-IV-V進行を聴き取り、その中のトライアドの構成音を当てる練習が有効です。
楽器別の扱い(ピアノ・ギター)
ピアノではトライアドは左右のハンドリングやポリフォニーの中で自由に分配できます。ギターでは指板上のポジションにより同じトライアドが異なる音色で演奏されます。ギター特有の省略音(5thを省くなど)やバレーコードによって、実用的なボイシングが多数存在します。ベースや打楽器との組み合わせで低音の質感が変わるため、アレンジ時は低音の選択に注意が必要です。
和声分析と作曲への応用
作曲においてトライアドはモチーフの和音的基盤となります。メロディとの関係性(和音の構成音がメロディ音とどう結びつくか)を設計することでフレージングやリズムに一貫性を与えられます。さらにモード混淆(モーダル・インターチェンジ)や二次ドミナント(V/Vなど)を用いると、トライアドベースの進行に彩りを与えられます。
誤解と注意点
トライアドは単純に“三つの音”だからといって必ずしも単調になるわけではありません。ボイシング、転回、リズム、対位法的処理により非常に多様な表現が可能です。また、平均律の下での理論は純正調や歴史的調律と微妙に異なるため、特に古楽や調律に敏感な演奏では注意が必要です。
練習課題と学習法
- 各キーで全ての三和音(I〜vii°)を弾き、長/短/増/減を耳で判別する。
- トライアドの三つの転回を用いてスムーズなベースラインを作る練習。
- ポピュラー進行(I-vi-IV-Vなど)をトライアドで編曲し、ボイシングを変えて比較する。
- 倍音列を意識して純正調での長3度・短3度の響きの違いを聴く。
まとめ
トライアドは音楽理論の核であり、和声の基礎、分析、作曲、演奏表現すべてにおいて不可欠です。種類・転回・ボイシング・機能・調律といった多面的な視点から深く理解すると、シンプルな三和音だからこそ得られる表現の幅と運用の自由度が見えてきます。
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参考文献
MusicTheory.net — 基本理論と耳コピーの教材
Kostka, Payne『Tonal Harmony』(教科書ページ)
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