アルトクラリネットとは:歴史・構造・音色・レパートリー完全ガイド
イントロダクション — アルトクラリネットの魅力
アルトクラリネットはクラリネット族の中でも中低域を担当する楽器で、独特の豊かな中低音域の音色を持ち、吹奏楽やクラリネット・クワイア、現代音楽の編成などで存在感を発揮します。オーケストラでは必ずしも常設される楽器ではありませんが、その色彩は編成や曲想によって非常に有効に使われます。本稿では歴史・構造・音域・演奏技法・レパートリー・管理のポイントなどを詳しく解説します。
アルトクラリネットとは(基本情報)
アルトクラリネットは一般にE♭管として分類される移調楽器で、楽譜上に書かれた音よりも低く鳴る特徴があります。通常はト音記号のまま移調して書かれ、実音は記譜よりも下方に位置します。ファミリー内ではB♭(ソプラノ)クラリネットより完全四度低く、バスクラリネットよりは高い音域を担います。音色は温かく深みがあり、ソプラノの明るさとバスクラの深さの中間にあたります。
歴史的な背景
アルトクラリネットの原型は19世紀前後に登場し、クラリネット・ファミリーの音域拡張の流れの中で発展しました。19世紀には管体やキィ配列の改良が進み、ボエーム式の導入で演奏性が向上しました。当初は吹奏楽や軍楽隊の色彩を増すために用いられ、20世紀に入ってからはクラリネット合奏(クラリネット・クワイア)や吹奏楽の編成で定着しました。しかし、20世紀中盤以降はバスクラリネットやサクソフォーンの普及により一時的に使用頻度が下がった時期もあります。近年は専門家やアンサンブルの関心が高まり、再評価が進んでいます。
構造と材質
アルトクラリネットは単簧(単リード)の木管楽器で、基本構造はソプラノクラリネットと似ていますが、管体が長くより太いボアを持ちます。素材は伝統的にガブンジ(アフリカ黒木/grenadilla)が主流で、学生用モデルには合成樹脂やプラスティック製のものがあります。キー・システムはボエーム式が主で、低音域を扱うための拡張キーや機構が付加される場合があります。ベルの形状やネック部分の曲げ方はメーカーやモデルによって差があり、音色や吹奏感に影響を与えます。
移調と音域
一般的にアルトクラリネットはE♭移調楽器で、楽譜に書かれた音よりも実音が短調で下方にずれて鳴ります。具体的には記譜音より完全六度下(移調としてはそのように扱われることが多い)で響くため、パート譜は移調表記に従って書かれます。編曲や伴奏と合わせる際はこの移調を正しく理解することが不可欠です。実際の演奏可能音域は機種や奏者の技量によりますが、ソプラノクラリネットより低く、バスクラリネットの最高域よりは高めの領域に位置します。
音色と演奏技法
- 音色の特徴:中低域が豊かでこもらない温かい響き。合奏では和声の中に柔らかく溶け込む一方、独奏的な扱いでは深みのある表情が可能です。
- リードとマウスピース:リードはソプラノに比べて厚めで大きめのものが用いられることが多く、マウスピースも口径が大きめ。これにより低音の安定と深みが得られます。
- 息づかいとアンブシュア:低域を安定させるために息の支えが重要。胴体の支持や腹圧の調整によってノイズや不安定な音を抑えます。
- フレージングと音量コントロール:中低域は響きが豊富な分、フレーズの立ち上がりや減衰を緻密にコントロールする必要があります。合奏ではブレンド(溶け込み)を重視します。
レパートリーと編成での役割
オーケストラ作品でアルトクラリネットの指定がある例はそれほど多くありません。代わりにバスクラリネットやバスーン、ホルンなどが同様の中低音域を担うことが多いからです。しかし吹奏楽やウィンドアンサンブル、クラリネット合奏では重要な色彩を与えるパートとして活用されます。特にクラリネット合奏作品、吹奏楽のアレンジ、現代音楽や独立した室内楽曲でアルトクラリネットを用いる作曲家が増えています。また、現代作曲家によるソロや室内楽のための新作も徐々に増加しており、楽器の音色的可能性を探る動きが活発です。
演奏上の注意とメンテナンス
- リード選定は音色と吹奏感に直結するため、複数のメーカー・厚さを試して自分の楽器に合うものを見つける。
- 管体の乾燥や亀裂を防ぐため、演奏後は定期的に内部を拭き、温度や湿度の急変を避ける。
- キー・パッドやコルクは消耗品であり、定期的なチェックと調整が必要。専門の技術者による調整を受けること。
- 運搬時は専用のハードケースやクッション材を使用し、ネックやベル部を衝撃から守る。
製作と主要メーカー
アルトクラリネットを製造するメーカーはいくつか存在し、プロ仕様から学生向けまでラインナップがあります。伝統的な木製モデルのほか、合成樹脂製のコストパフォーマンスの高いモデルも普及しています。メーカーごとの設計や調整で吹奏感や音色に差が出るため、購入や試奏の際は複数機種を比較することが重要です。
現代における位置づけと今後の展望
アルトクラリネットは一時期使用頻度が下がったものの、クラリネット・アンサンブルや現代音楽シーンの再評価により関心が回復しています。アレンジや新作の増加、録音やソロ活動の広がりにより、楽器としての価値は再び注目されています。教育面でもクラリネット・クワイアの普及や吹奏楽での利用により、将来的に演奏人口やレパートリーの拡充が期待されます。
まとめ
アルトクラリネットは音色の幅広さと中低域の温かさが魅力の楽器です。歴史的には世代や編成の変化で浮き沈みがありましたが、現在は多様な音楽シーンで再評価が進んでいます。演奏者にとってはリード選びや息づかい、楽器の管理が演奏の鍵となり、指導者やアレンジャーにとってはその特殊な音域をどう活かすかが課題であり楽しみでもあります。
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参考文献
- アルトクラリネット - Wikipedia(日本語)
- Alto clarinet - Wikipedia(English)
- Clarinet | instrument - Britannica
- International Clarinet Association(公式サイト)


