作品概観 — 交響曲第2番 K.17とは
交響曲第2番 変ロ長調 K.17(Köchel表記では Anh. C 11.02 と併記されることがある)は、モーツァルトに帰属する初期の交響曲群の一作として伝えられる作品です。作曲年代はおおむね1764–1766年の間、モーツァルト一家のヨーロッパ旅行期にあたるとされ、作曲者がまだ少年であった時期に位置づけられます。編成は弦楽にオーボエ2本、ホルン2本を加えたいわゆる古典派初期の小編成で、通常は3楽章構成(速—緩—速)のイタリア風シンフォニアの形式を踏襲しています。
成立と出自の問題 — 帰属と年代についての考察
K.17という番号はモーツァルト作品目録(Köchel katalog)における付番の経緯の中で、付番や補訂が繰り返された結果、原資料の不確定さを反映しています。特にK.17には『Anh.』(付録)表記が付される版があり、これは原典譜や自筆譜の欠如、あるいは作曲者帰属の曖昧さを示しています。したがってこの作品は長らくモーツァルトの少年期作品として扱われてきた一方で、近年の研究では家族(例えば父レオポルト)の関与や当時の他作曲家の影響を指摘する見解もあります。確実な自筆譜が存在しないため、成立年についてはおおむね1765年前後とされるのが通説です(ロンドンやハーグ滞在期の影響を受けた可能性があるとされます)。
楽章構成と特徴
典型的な3楽章構成を持ち、標準的には以下のように示されます。
- 第1楽章:Allegro — 活発で明快な主題に始まるソナタ形式(ただし完全な古典期のソナタ形式というよりはイタリア・シンフォニアの影響が強い)
- 第2楽章:Andante(またはAdagio相当)— 柔らかく歌うような弦の扱い、短い対位や簡潔な和声進行で中間楽章として安定感を与える
- 第3楽章:Presto(またはAllegro)— 活気ある終了楽章。リズムの切れ味と合奏の緊張感で締めくくられる
第1楽章の主題は素朴で明朗、短いフレーズの繰り返しと対位を用いて進行することが多く、まだ成熟した古典的動機展開というよりは素材の提示と反復で構成されています。和声面では変ロ長調を基調にしつつ属調や近接する調に軽く移動するに留まり、劇的な遠隔転調は見られません。
楽器編成と音色(演奏上のポイント)
編成は当時の標準的な小オーケストラで、弦(第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ/コントラバス)にオーボエ2、ホルン2を加えます。現代の演奏ではフルートやクラリネットは通常用いられません。演奏上のポイントは以下の通りです。
- バランス:ホルンとオーボエが和声の輪郭を補強する一方、弦のテクスチャが中心となるため、古楽器の軽やかさを意識したバランス設計が効果的です。
- テンポ感:楽章ごとの対比をはっきりとさせる。第1楽章は躍動感を保ちつつも過度な速さは避け、主題の形を明確にすること。
- 装飾とアーティキュレーション:当時の演奏慣習に倣い、短い装飾やフレージングの自由度を適切に用いることで、簡潔な素材に表情を与えられます。
様式的背景と影響
この時期のモーツァルト(あるいはその周辺の作曲家)は、イタリアのオペラ・シンフォニアやロンドンで流行したシンフォニア様式の影響を強く受けていました。短い楽句、明快なリズム、簡潔な和声進行はイタリア的な感覚を反映しています。またJ.C.バッハや当時のロンドン楽壇で目にした作品群から得た技法が、若きモーツァルトの交響楽語法の基礎になったと考えられます。K.17が必ずしも完全にモーツァルト単独の独創によるものかは議論の余地があるものの、当時の音楽的潮流をよく示す例であることは確かです。
楽曲分析(各楽章の細部)
第1楽章は短い動機の反復と転調を伴う提示部、対比を見せる展開部(ただし現代の成熟したソナタ形式ほど複雑ではない)、再現部により構成されることが多いです。第2楽章は歌謡的な旋律が中心で、和声進行の中で主題が順次的に移動する簡潔な設計。第3楽章はリズムを強調した短いフレーズの連結で終結へ導く、軽快なフィナーレです。全体を通じて動機の発展は控えめで、素材の提示と対比で作品が成り立っている点に注意すると、当時の交響曲像を理解しやすくなります。
版と楽譜の入手
自筆譜が欠けるため、現代の版は写譜や後世に残された版を基に復元・校訂されたものが中心です。公開スコアとしては国際楽譜ライブラリ(IMSLP)などに写譜や公刊譜が収録されている場合があり、演奏や研究を行うにはこれらを参照するのが便利です。校訂版を選ぶ際は、注釈や出典表記が明確な版を選ぶと当時の実演慣行や異稿を比較できます。
聴きどころ・鑑賞のためのガイド
この交響曲を聴く際には、以下の点に注目すると作品の魅力をより感じられます。
- 短いフレーズが織り成す明朗さ:主題提示のシンプルさが作品の美点であり、反復と微妙な変化に耳を澄ますと表現の幅が見えてきます。
- 古典初期のオーケストレーション感:少人数編成ならではの透明なテクスチャを味わうこと。古楽器演奏が持つ軽やかさで聴くと、当時の音色に近づきます。
- 成立背景の曖昧さを楽しむ:誰がどの程度関与したかという議論自体が、この時代の音楽制作の実像を映す鏡になります。様式的特徴と資料学的問題の双方に関心を向けると発見が増えます。
まとめ
交響曲第2番 K.17は、モーツァルト(あるいはその周辺の作曲家)に帰属される少年期作品の典型例として、古典派交響曲発展の初期段階を知る上で貴重な資料です。自筆譜の欠如や帰属問題が残るため学術的には注意が必要ですが、音楽そのものは明快で親しみやすく、当時の様式感覚を直に伝えてくれます。演奏・鑑賞の際には編成とバランス、フレージングの簡潔さに着目すると良いでしょう。
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