モーツァルト『コントルダンス ニ長調 K.565a』──舞踏曲の系譜と作品の深掘り

はじめに — 小さいながらも興味深い舞曲

モーツァルトの名を冠する作品の中に、『コントルダンス(Contradance / Contredanse) ニ長調 K.565a』という表記を目にすることがあります。本稿では、この比較的小品に焦点を当て、時代背景、舞曲としての性格、楽曲の構造と演奏上のポイント、さらには版や真贋(帰属)に関する問題までをできるだけ丁寧に検証します。資料の状況や学術的扱いには曖昧さが残るため、その点も明示して読み進めてください。

コントルダンスとは何か — 社交舞踏としての位置づけ

コントルダンス(contradance / contredanse)は、イギリス発祥のカントリーダンスがヨーロッパ大陸に伝わり発展した類の社交舞踏です。18世紀後半になると宮廷や都市の中流以上のサロンで広まり、フランス語圏では〈contredanse〉、英語圏では〈country dance / contradance〉の名で親しまれました。二拍子や四拍子の軽快なリズム、反復される二部形式(A–A–B–Bのような構造)を持ち、作曲家は舞踏会向けに短く切れ味のある曲を書きました。モーツァルト自身も宮廷や貴族の舞踏会のためのダンス曲を手がけており、こうした小品群は当時の社交生活を反映しています。

K.565a の位置づけと資料状況(注意事項)

K.565a と番号付けされる『コントルダンス ニ長調』については、モーツァルト作品目録(ケッヘル目録)や後代の編纂で扱いが一定しないことがあります。現存する写譜や出版譜が限定的で、ある版ではモーツァルトの手になる可能性が示唆される一方、他の版や研究では帰属が疑わしい作品として注記される場合もあります。したがって、K.565a を巡る記述には「真作/偽作/不確定」といった立場の違いがある点に留意してください。

楽曲の音楽的特徴(一般的特徴の検討)

資料が乏しい小品についても、コントルダンスというジャンルに期待される音楽的特徴から多くを読み取ることができます。以下はK.565a に典型的に想定される要素です(個々の版による差異はあり得ます)。

  • 拍子とリズム:明確な二拍子系(2/4や2/2)で、ダンスの歩調を支える規則的なリズムを持つ。
  • 形式:短い二部形式や反復を伴うシンプルな構造(A–A–B–B)。各セクションは58〜64小節程度にまとまることが多い。
  • 和声と進行:古典派初期の機能和声に基づき、主調と属調を中心にした分かりやすい調性進行。序盤はトニックから始まり、セクション終わりに向けて属調への短い流れが生じる。
  • 旋律:軽やかで反復的な主題、短いモチーフの展開、しばしばシンコペーションや装飾を伴う。
  • 編成:ピアノ(またはフォルテピアノ)独奏や小編成の室内楽・オーケストラ用の編曲が一般的に流通した。

舞踏曲としての機能と聴きどころ

社交の場で用いられる舞曲は、演奏される場面(舞踏会・サロン・家庭)に応じてテンポや装飾が変化します。K.565a を聴く・演奏する際のポイントは次の通りです。

  • テンポ感:拍の安定が最重要。速すぎると踊りの感覚が失われ、遅すぎると舞踏としての鮮度が落ちる。実践的にはやや快活なテンポが適する。
  • フレージング:ダンス的な呼吸を意識して短いフレーズごとに自然な息継ぎや減衰をつける。
  • 装飾とアゴーギク:当時の演奏慣習に従い、過度なロマンティックなレガートよりも明晰なアーティキュレーションが望ましい。
  • ダイナミクス:小さなコントラストを効果的に用いることで、反復部分の違いを明確にする。

版の問題と真贋(帰属)を巡る議論

K.565a のような小品は、モーツァルトの自筆譜が欠ける場合、後世の写譜や出版社の付与した番号を手がかりに研究されます。しかし、写本の筆跡、和声の用い方、旋律の様式といった音楽学的指標によって真作性を疑う場合もあります。学術的な研究や最新版の作品目録(ケッヘル第何版)で扱いが更新されることがあるため、最新の目録・デジタル・エディションを参照するのがよいでしょう。

楽譜・録音の探し方とおすすめの聴き方

資料が限られる作品は、以下の方法で情報収集すると効果的です。

  • デジタル音楽図書館(例:IMSLP、Digital Mozart Edition)で写譜や刊行譜を確認する。
  • ニュー・モーツァルト・アウスガーベ(Neue Mozart-Ausgabe:DME)などの学術版が扱っているか確認する。学術版は作品の帰属や版情報が注記されている場合がある。
  • 複数録音を比較する。演奏解釈(テンポ、装飾、ダイナミクス)による違いが分かりやすい小品は、聴き比べで当時の演奏慣習を感じ取りやすい。

作品をどう味わうか — 音楽史的な見地からの提案

K.565a のような短い舞曲は、モーツァルトの交響曲やオペラのような“大曲”とは異なる役割を持ちます。軽やかさや即時性、社交的用途のための機能美を味わうことが重要です。同時に、もしモーツァルト自身の手になるとすれば、幼少期から成熟期に至るメロディ作法や和声感覚の一端を垣間見ることができます。逆に帰属が疑わしい場合でも、当時の“モーツァルト風”スタイルがどのように模倣・流通したかを研究する格好の題材となります。

まとめ

『コントルダンス ニ長調 K.565a』は、短くシンプルでありながら18世紀後半の社交舞曲文化を反映する興味深い一例です。資料の乏しさや帰属問題があるため、扱う際には版情報や目録の注記を確認することが重要です。演奏面ではダンス感を保ちながら明晰に音楽を語ることが求められ、聴衆にとってはモーツァルト的な旋律の魅力や古典派の均整の美を手軽に体感できる機会となるでしょう。

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参考文献