モーツァルト「エクスルターテ・ユビラーテ」K.165の魅力を徹底解剖:歴史・構成・演奏のポイント
作品概要と時代背景
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのモテット「エクスルターテ・ユビラーテ(Exsultate, jubilate)K.165(K.158a)」は、1773年にミラノ滞在中に作曲されたとされる独唱モテットです。当時のイタリアで活躍していた歌手のために書かれた劇的で華やかな作品で、宗教的テキストを題材にしながらもコンサート用のアリア的要素が強く、独唱ソロの技巧と表現を前面に出しています。
作曲の目的と初演歌手
作品はカストラート(当時の名歌手)向けに書かれたと伝えられており、作曲の経緯には諸説ありますが、ミラノで活動していた優れた歌手に委嘱・献呈されたことが通説です。モーツァルトはイタリア滞在でオペラの仕事に携わる一方、宗教曲やコンサート曲にも手を伸ばしており、本作はその一例として位置づけられます。
タイトルとテキストの意味
ラテン語題「Exsultate, jubilate」は「踊れ、喜べ」の意で、祈りや感謝をうたう祝祭的な呼びかけから始まります。テキストは典礼の定型文そのものというよりは、モテット(独唱または声楽合唱のための宗教的な短曲)の伝統に連なる詩篇風のラテン語テキストで、しばしば個人的・感情的な信仰表現が込められています。
編成と調性
楽曲は独唱(原則としてカストラート相当のソプラノ音域)と小編成オーケストラのために書かれています。典型的には弦楽器群を基盤に木管やホルンが彩りを添える編成で、軽やかさと明るさを両立させた伴奏が特徴です。全体の主要な調はヘ長調(F major)とされ、快活で祝祭的な色調が支配します。
形式と音楽的特徴(詳細分析)
本作は通奏した「一連の大きなアリア」として捉えることができます。大まかに分けると、
- 快活で華やかな導入部(Exsultate, jubilate)— 明晰なリズムと跳躍を含むヴォーカル・パッセージ
- 抒情的・歌謡的な中間部(感情の深化と対位法的な絡み)— ソロの歌詞表現に重心を置いた叙情的な箇所
- 技巧を見せる終曲「Alleluia」— 短く鮮烈で高音域のアジリタ(アジリタ=華麗なパッセージ)を含むフィナーレ
特に最後の「Alleluia」は、聴衆に強い印象を残す技巧的な部分で、音階的跳躍や連続する高音の装飾があり、当時のカストラートの声力と艶を最大限に活かすよう設計されています。モーツァルトの美しい旋律感覚とともに、技巧的な側面が見事に融合しているため、コンサートのアンコールや録音で人気の高い曲になりました。
演奏上の留意点と解釈の方向性
原作がカストラートのために書かれていることから、現代の演奏ではソプラノ(女性歌手)やカウンターテナーによる演奏が多く行われます。解釈上の重要点は以下の通りです。
- 声の性質に応じたキー選定:原調のまま演奏されることも多いが、歌手の声域や音色に合わせて微調整(移調)する場合もある。
- 装飾とカデンツァ:モーツァルト期には即興的な装飾が慣例だったため、現代の歌手も適切な装飾や技巧的なパッセージを自ら構築して歌うことが期待される。ただし過度の装飾は音楽の流れを損なうので節度が必要。
- フレージングと呼吸の配分:長い旋律線を滑らかに歌う一方、アジリタ部分では明晰な発音とリズム感を保つことが求められる。
- オーケストレーションのバランス:弦楽器主体だが、木管・ホルンの響きを活かしつつ、歌が埋もれないよう細心の注意を払う。
受容とレパートリーとしての位置づけ
「エクスルターテ・ユビラーテ」は、その高い音楽性と技巧性により、宗教音楽としてだけでなくコンサートでの人気曲となりました。レパートリーとしてはカストラート時代の名残を示す代表的な一曲で、色彩感豊かな旋律と華やかな終曲は多くの歌手と指揮者に愛されています。また声楽教育の場でも、技巧訓練やフレージングの教材として採り上げられることがあります。
録音・名演の紹介(展望)
歴史的にも多くの名歌手が取り上げており、録音も豊富です。原調でのダイナミクスや高音域の扱い、装飾の処理など演奏ごとに特色が出やすく、聴き比べによって本作の多面的な魅力を味わうことができます。近年は古楽的アプローチ(古典派の演奏慣習やピリオド楽器)でも再解釈され、テンポ感や伴奏の透明性が変化をもたらしています。
作品番号(K.165 / K.158a)について
本作はカタログ番号としてK.165が一般に用いられますが、古いカタログや注記ではK.158aと表記されることもあります。これはケッヘル(Köchel)番号の整理替えや訂正によるもので、同一作品を指す異表記として理解されます。
演奏会での扱いと現代的意義
教会音楽としての伝統とコンサートピースとしての魅力を併せ持つ本作は、礼拝の場のみならずリサイタルや交響楽団の協演プログラムでも頻繁に登場します。歴史的背景を知ることで、テキストの宗教性と音楽表現の祝祭性がより深く味わえるでしょう。
まとめ(作品の魅力)
「エクスルターテ・ユビラーテ」K.165は、モーツァルトの旋律美と声楽技巧への深い理解が結実した作品です。短くも強烈な印象を残すフィナーレのAlleluiaは、聴衆を即座に惹きつける一方、内部には抒情と技術が巧妙に織り込まれています。カストラートの伝統を感じさせる一方で、現代の歌手が多様な解釈を加えうる幅広さも持ち合わせており、時代を超えて愛される理由がここにあります。
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参考文献
- IMSLP(楽譜と情報)
- Encyclopaedia Britannica: Exsultate, jubilate
- Neue Mozart-Ausgabe(モーツァルト全集/参考資料)
- AllMusic(演奏史・録音解説の参照先)
- Oxford Music Online / Grove Music Online(作品論・作曲者論)
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