ホーボーケン番号(Hob.)――ハイドン作品目録の歴史・構成・使い方を徹底解説

ホーボーケン番号とは何か — 概要

ホーボーケン番号(一般に Hob. や Hoboken と表記される)は、作曲家ヨーゼフ・ハイドン(Franz Joseph Haydn, 1732–1809)の作品を分類・番号付けした目録(パーソナル・カタログ)を指します。正式には『Thematisch-bibliographisches Werkverzeichnis』というテーマ入りの業績目録で、編纂者アンソニー・ファン・ホーボーケン(Anthony van Hoboken)が整理したものです。ホーボーケン番号はハイドン研究・脚注・ディスクグラフィーで広く用いられ、作品の同定(例えば交響曲第94番“驚愕”は Hob. I:94)において事実上の標準となっています。

編纂の歴史と背景

20世紀の前半まで、ハイドン作品の同定は出版された作品番号(Op.番号)や筆写譜、当時の出版社の目録に頼ることが多く、作品の同一性や真作性の判断に混乱がありました。アンソニー・ファン・ホーボーケン(1887–1983)は膨大な資料調査を行い、ハイドン作品を体系的に整理する必要性を感じ、各地の写本・版・出版物・音楽蔵書を検討して独自のテーマ・カタログの作成に取り組みました。

ホーボーケンの目録は、作品の冒頭主題(テーマのインキピット)を明示する「テーマ目録(thematic)」と、書誌的情報(版や写本の所在)を併せ持つ点で画期的でした。この方式により、同一の主題を持つ異伝や編曲、誤認作品の区別がしやすくなり、研究や演奏、録音の際に明確な参照が可能になりました。

目録の構成と番号付けの原則

ホーボーケン番号は大きく二段階で構成されます。まずローマ数字で「ジャンル(作品群)」を示し、その後にアラビア数字で作品個別の番号を付けるという方式です(例:Hob. I:104)。ローマ数字は交響曲や室内楽、ピアノ作品、オラトリオ、宗教音楽などのジャンル区分に対応しています。作品が複数の形で伝わる場合は小文字のアルファベットや付記で区別されることがあります。

この方式の利点は、ジャンルごとに同一スキーマで番号を振るため同種の作品群同士で比較・検索しやすい点にあります。作品番号は必ずしも作曲順を反映しません:同じジャンル内での付番は発見・整理の便宜上の順序であり、ハイドンの作曲年代を直接に示すものではない点に注意が必要です。

主要なジャンル区分の概略(概要のみ)

ホーボーケンはジャンル別に膨大な作品を整理しており、各ローマ数字は代表的なジャンルに対応します。ここでは全てを列挙するのではなく、研究や演奏で頻繁に参照される主要ジャンルを概説します。

  • 交響曲:ホーボーケン目録内で最も頻繁に参照されるジャンル。交響曲は Hob. I:1 から Hob. I:104 に至るまで番号が振られており、伝統的な交響曲番号(1–104)との対応が分かりやすい形で示される。
  • 室内楽:弦楽四重奏曲や弦楽五重奏、ピアノ三重奏等がジャンル別に整理されている。演奏会でよく扱われる弦楽四重奏曲群も固有のセクションにまとまっている。
  • 協奏曲・ソナタ・宗教曲・オペラ/声楽作品:これらも各ジャンルごとに区分され、作曲家の多様な制作が網羅されている。

引用の方法と表記例

学術書やプログラム・ノート、ディスクラベルでは Hob. を用いた表記が一般的です。表記の仕方としては「Hob. I:94」や「Hob. I/94」といった形式が多く見られます。日本語の文章では「ホーボーケン番号Hob. I:94」と注記すると明確です。

併記の工夫として、伝統的な番号(例:交響曲第94番)と Hob. 番号を合わせて示すことで、専門家と一般聴衆の双方にとって理解しやすくなります(例:「交響曲第94番『驚愕』 Hob. I:94」)。

ホーボーケン目録の功績と限界

功績としては、散逸していた資料群を整理して、ハイドン作品の同定と研究を飛躍的に進めた点が挙げられます。テーマ・カタログの形式を採ることで、写譜と版の突合、異伝の特定、誤伝の修正が容易になりました。また、録音や出版に際しての共通参照が確立されたことで、音楽学・演奏界双方で統一的に用いられる利点も大きいです。

一方で限界もあります。ホーボーケンの研究は膨大な資料に基づくものですが、その時点で入手できなかった資料や後の研究で新たに解明された作曲時期・真作性の問題については更新が必要になります。さらに、目録の編成方針(ジャンル別の章立てや付番のルール)は一種の恣意性を含むため、異なる視点からの再編成を求める声もあります。実際、いくつかの作品は後年の研究でハイドン以外の作曲家に帰属が変更されたり、逆に長らく疑問視されていた作品がハイドン作と再評価されることもありました。

現代の研究・デジタル化とホーボーケン番号

21世紀に入ってからは、図書館のデジタル化やオンライン目録の整備によりホーボーケン目録もデジタル資源と結びついて利用されることが多くなりました。多くの図書館・コレクションが写本や初版の画像を公開しており、ホーボーケン番号をキーにして原典にアクセスできる環境が整っています。

また、現代のハイドン研究ではホーボーケン番号を出発点に、筆跡分析・版の比較・出版史研究・音楽的スタイル分析を組み合わせて精緻な作曲年推定や真偽判定が行われます。これにより、ホーボーケン目録に基づく学術情報は補強・修正され続けています。

ホーボーケン番号を使う際の実務的注意点

  • 番号はジャンル内の便宜的識別子であり、必ずしも作曲年代順ではないことを明記する。
  • 同一作品に複数の版や編曲がある場合、付記や小文字で区別されることがある(例:a/b/c など)。目録記載の版情報を確認すること。
  • ディスクグラフィーや楽譜注文時は Hob. 番号に加え、作品名・調性・伝統番号(もしあれば)を併記すると確実性が高まる。
  • 最新の学術情報や再属性に注意する。特に真作性が疑われる作品については、最新図書やデータベース(Oxford Music Online、専門誌等)を参照すること。

実例:交響曲におけるホーボーケンの活用

交響曲は Hob. 目録が日常的に参照される代表的なジャンルです。代表例としては次のように表記されます。

  • 交響曲第94番『驚愕』 — Hob. I:94
  • 交響曲第104番『ロンドン』 — Hob. I:104

これらの表記により、同じ「第94番」や「ロンドン」といった通称に加え、ホーボーケン目録の確定した識別子を示すことで作品の出典が明確になります。特に異伝や版の差異が問題となる研究では、この識別子が重要な役割を果たします。

ホーボーケン番号と他のカタログ・番号との関係

作曲家の作品にはしばしば複数のカタログ番号や伝統的な番号が存在します。ハイドンの場合も Op.番号(出版上の番号)や通称、さらには研究者が編纂した他の目録との併記が見られます。学術論文や批評では、読者が混乱しないよう複数の識別子を併記することが推奨されます(例:「交響曲第94番『驚愕』 Hob. I:94, Op. 小番号(該当する場合)」)。

まとめ — ホーボーケン番号の意義

ホーボーケン番号はハイドン研究における基礎的ツールであり、作品の同定・比較・版の研究・ディスクグラフィーの整理に不可欠です。目録は完璧ではありませんが、膨大な一次資料を整理した業績は現在もなお研究と実務の礎となっています。現代ではデジタル資源と併用して最新の研究成果を反映させることが重要であり、演奏家や研究者は Hob. 番号を出発点に一次資料や最新文献へアクセスする習慣を持つとよいでしょう。

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参考文献