バッハ BWV56『われは喜びて十字架を負わん』徹底解説 — 音楽・詩・演奏の魅力
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概要 — BWV56とは何か
バッハのカンタータ BWV56 «Ich will den Kreuzstab gerne tragen»(邦題:『われは喜びて十字架を負わん』)は、ソロ・バスのために書かれた教会カンタータの代表作です。一般に1726年にライプツィヒで作曲され、教会暦の「後日曜(トリニティ)」の一つ、特に第19トリニティ日(19th Sunday after Trinity)用に想定されたとされています。楽曲は全5曲構成で、バス独唱の情感豊かな語り口と、オーボエと弦楽器を中心とした伴奏が特徴です。
タイトルとテキストの意味
原題「Ich will den Kreuzstab gerne tragen」は直訳すると「私は喜んで十字の杖(Kreuzstab)を担おう」という意味で、十字架や苦難を生涯の旅路になぞらえたプロテスタント的な信仰告白を表しています。ここでの“Kreuzstab”は単なる十字架の象徴ではなく、人生の重荷や旅の支え、受難と救いの両義を帯びる比喩です。歌詞は個人的な信仰、苦しみの受容、そして最終的な天上の安息へと至る希望を語るもので、バッハの宗教観と深く結びついています。作詞者は明確に特定されていませんが、18世紀初頭の敬虔主義や説教文学の影響が色濃く見て取れます。
編成と形式
BWV56の編成は比較的シンプルですが効果的です。ソロ・バス独唱、オーボエ独奏(録音や上演によってはヴァイオリンやフルートで代替されることもあります)、弦楽合奏(ヴァイオリン、ヴィオラ等)および通奏低音(チェンバロ/オルガンとチェロ、またはコントラバス)という構成が一般的です。5つの楽曲配列は、アリア—レチタティーヴォ—アリア—レチタティーヴォ—アリア(最終はややアリオーソ的)という典型的なソロ・カンタータの形をとります。
各楽章の概観と音楽的特徴
第1曲:アリア
冒頭のアリアは、十字架を担う決意と希望を宣言する性格をもちます。独唱バスが主旋律を歌い、オーボエや弦が応答する形で信仰の旅路を描写します。リズムや伴奏の動きは歩みを想起させ、苦難を受けながらも確信に満ちた進行が表現されます。第2曲:レチタティーヴォ
語りの部分ではより個人的で内省的な詩行が登場します。簡潔な通奏低音伴奏により、言葉の意味が際立つよう仕立てられており、歌詞の苦悩や神への寄せる信頼が直接的に伝わってきます。第3曲:アリア(「Komm, o Tod」系のイメージ)
中央部のアリアはしばしば「死」や「眠り」をテーマにした祈願を含み、ゆったりとしたテンポと抑制された伴奏で死の受容と安らぎが描かれます。ここでの音楽的な色彩は暗転と慰めの双方を持ち、オーボエの柔らかな旋律が人間の嘆きと慰めを象徴することが多いです。第4曲:レチタティーヴォ
再び語りが入り、信仰の確信や天上の分配への期待が語られます。短いながらも劇的な和声進行や終結感を持ち、最終曲へと橋渡しをします。第5曲:アリア(またはアリオーソ的終結)
終曲は静かな喜びと安堵の表現で締めくくられます。個人的な祈りが宇宙的な救済感へと拡大するように書かれており、バスの朗々たる声が天への信頼を歌い上げます。音楽的には希望を象徴する上昇進行や和声の安定が用いられます。
音楽的・宗教的解釈のポイント
BWV56を理解する鍵は「旅」と「十字架」という二つのモチーフの関係です。歩みのリズム、下降と上昇の旋律、短調と長調の切り替えなどを通して、作曲者は苦難の受容とそれに続く救済を音で語ります。また、バッハは歌詞の語り口に敏感に反応し、重要語句に対してカデンツァや伴奏のテクスチュアを変化させることで、言葉の意味を増幅します。
演奏上の解釈では、バスの語り口(declamation)の自然さ、テキストの明瞭な発音、オーボエと弦のバランスが重要です。アリアでは内面的な確信を、レチタティーヴォでは言葉の語感と抑揚を重視することで、この作品の物語性が際立ちます。
歴史的背景と位置づけ
1720年代半ばのライプツィヒはバッハにとって充実した制作期であり、教会音楽のための作品群を次々と生み出していました。BWV56は声楽的に単独で完結する性格が強く、礼拝での使用のみならず、独立した演奏会用レパートリーとしても適するため、後世において広く愛奏されています。バッハのソロ・カンタータ群のなかでも特に個人的で詩的な側面が強く出ている点で高く評価されています。
演奏史と現代の受容
BWV56は比較的編成が小さいため、古楽器演奏の潮流とともに再評価され、世界中のバス歌手がレパートリーに取り入れています。現代の演奏では原典主義に基づくテンポ設定や、通奏低音の扱い、歌唱の発話性を重視した解釈が多く見られます。礼拝での実演だけでなく、コンサートや録音で単独に取り上げられることも多く、聴衆に強い印象を残します。
聴きどころと鑑賞ガイド
- 第1曲の歩むようなリズムとオーボエの対話に耳を傾け、歌詞の決意表明がどう音で表されているかを追ってください。
- 第3曲の「死」への受容の表現は、静けさの中に深い慰めが込められています。オブリガート楽器の音色とバスの語りのバランスに注目すると良いでしょう。
- 全体を通して、バッハがテキストの語尾やアクセントに如何に精妙に反応しているかを観察してください。短いレチタティーヴォにこそ、作品の精神が凝縮されています。
終わりに
BWV56『われは喜びて十字架を負わん』は、個人的な信仰と人生観を音楽で深く表現した傑作です。簡潔な編成と明快な劇的構成を通して、苦悩を受け入れつつも希望に向かう人間の姿が描かれます。礼拝の場でもコンサートホールでも、その静かな力は聴き手の胸に強く響き続けます。
参考文献
- Bach Cantatas Website — BWV 56
- Bach Digital — Cantata BWV 56
- IMSLP — Cantata BWV 56 (score)
- Wikipedia — Ich will den Kreuzstab gerne tragen, BWV 56
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