Chico O'Farrillのおすすめレコードと聴きどころ — アフロ=キューバン・ジャズ入門
Chico O'Farrillとは
アルトゥーロ“チコ”・オファリル(Chico O'Farrill)は、キューバ生まれでニューヨークを拠点に活動した作曲家・編曲家・バンドリーダーです。ビッグバンドの豪華な編成感とアフロ=キューバンのリズムを高い音楽語法で融合させ、戦後のラテン・ジャズ/アフロ=キューバン・ジャズの文脈で重要な役割を果たしました。本稿では、彼の音楽を深掘りするためのおすすめレコードと聴きどころを解説します。
なぜ彼のレコードを聴くべきか
Chicoの仕事は単に“ラテン風のリズムを付けたジャズ”に留まりません。複雑で洗練されたブラスのハーモニー、ポリリズムの扱い、そしてジャズ的な即興とキューバンの伝統的なパターンを整然と組み合わせる技術は、編曲・オーケストレーションの教科書的価値があります。聴くことでリズム感と和声感、そしてアレンジメントのアイデアが格段に深まります。
おすすめレコード(入門〜深掘り)
Machito and His Afro-Cubans(Machitoの録音集/Chicoのアレンジ入り)
解説:Chicoが編曲者/アレンジャーとして重要な実績を残したのがMachito率いるアフロ=キューバンのオーケストラとの仕事です。これらの録音群は、ビッグバンド編成でのアフロ=キューバン音楽の完成形を知るうえで欠かせません。聴きどころはブラスのユニゾンとリズム隊の緊密な連携、典型的なモントゥーノ・パターンをジャズ的パラダイムで扱う手法です。"Afro-Cuban Jazz Suite"(作曲/編曲作品としての代表作)
解説:Chicoの代表的な大型作品の一つで、楽章ごとにジャズとアフロ=キューバンの要素を構築的に展開します。オーケストレーションの見事さ、複層的なリズム配置、ブラスとパーカッションの対位が学術的にも聴きごたえがあります。全体の流れを追うことで彼の音楽語法が明快に理解できます。Chico O'Farrill(リーダー作/50s〜60sのビッグバンド録音)
解説:リーダー名義で残したアルバム群は、Chico自身が指揮する編曲の純度を味わえる好資料です。典型的なビッグバンド・サウンドにキューバンのリズムが浸透しており、ブラスのハーモニーやソロの配置、スコアの緻密さがストレートに伝わります。オリジナル盤/リイシューともに聴き比べると面白いでしょう。1990年代以降のリーダー復帰作/後期録音(再評価期の録音)
解説:晩年にかけて彼は再びリーダー作で創作活動を行い、若い世代の奏者と共演した録音が知られています。これらは初期の伝統的な録音と比べ、モダンな録音技術と新しいアレンジ解釈が混在しており、作品の継続性と変化を比較するのに適しています。編集盤・コンピレーション("Essential"や"Complete"系)
解説:Chicoが関わった多数のセッションは単一のアルバムにまとまらないことが多いので、編集盤やコンピレーションで年代順に聞くと流れが掴みやすいです。ライナーや注釈が充実した盤を選ぶと背景事情の理解も進みます。
各盤の具体的な聴きどころ(楽曲分析の切り口)
編曲の構造を見る:イントロ、テーマ提示、ソロ→リフによる再提示といった大枠がどのように組み立てられているかを追ってください。Chicoはブラス群を用いた段階的なビルドアップが巧みです。
リズムの多層性:クラーベ、コンガ/ボンゴ/ティンバレスなどのパーカッションが担う役割を意識して聞くと、ジャズのスウィング感とキューバンのグルーヴが同時進行する面白さが見えます。
ハーモニーの使い方:ブラスや木管でのテンションのつけ方、クロマティックな移動、モーダルな色付けが効果的に使われます。特にリード・トランペットやトロンボーンのハーモニー進行に注目してください。
ソロ配置と対話:ソロイストが入るタイミングやその前後のバッキング・リフの変化に着目すると、編曲がソロをどう支えているかがわかります。
レコード選びの実践的ヒント(音源/盤を選ぶ観点)
まずはストリーミングやリイシューで曲を確認し、気になる演奏のオリジナル盤の存在を調べるとよいです。
ライナー・ノートや解説が充実している国内外のリイシュー盤は理解を深めるのに役立ちます。特に編曲や編成に関する注記があると嬉しいです。
編集盤(コンプリート・セッション)や年代順にまとめたボックスは、作品の変遷を追うのに向いています。まずは入門的な編集盤から聴き、気に入った録音のオリジナル盤を探すと効率的です。
聴きどころを掘り下げるための勧め方
一曲を繰り返し聴き、編曲のパートごとにフォーカスを変えると理解が進みます。例えば一回目は全体の流れ、二回目はリズム隊(特にクラーベとベースライン)、三回目はブラスのハーモニーとソロの関係性、という具合です。譜面が入手できればスコアと対照するのが最も学びが深い方法です。
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