ライン入力とは?プロが教える仕組み・接続・トラブル対策ガイド
ライン入力とは
ライン入力(Line input)は、オーディオ機器間で「ラインレベル」の信号をやり取りするための入力端子です。ラインレベルはマイクレベルや楽器(ギター)レベルより高い電圧を持ち、ミキサーの出力、シンセサイザー、CDプレーヤー、オーディオインターフェースの再生信号などプロ用・家庭用機器の間で標準化された信号レベルです。ライン入力は主に信号の受け渡し(送信側のライン出力 → 受信側のライン入力)に使用され、プリアンプではなくラインロード(高インピーダンス)を前提としています。
ラインレベルの電圧と規格(プロ/コンシューマ)
ラインレベルには主に2つの基準があります。
- プロフェッショナル機器(+4 dBu): 業務用機器で標準。約1.228 Vrms(0 dBu = 0.775 Vrms を基準に計算)。バランス接続が主で、長いケーブルでもノイズに強い。
- コンシューマ機器(-10 dBV): 家庭用オーディオ機器で一般的。約0.316 Vrms。アンバランス接続(RCA等)が多い。
機器を接続する際は、送信側と受信側のレベルが異なると、音量不足やノイズ、クリッピングを招くため注意が必要です。多くのオーディオインターフェースやミキサーは、入力感度を切り替えられる(Mic/Line/Inst)仕様になっています。
コネクタと配線(TRS/TS/XLR/RCA)
ライン入力で使われるコネクタの代表例は次のとおりです。
- XLR(3ピン): バランス接続の代表。ピン1=グラウンド、ピン2=ホット(+)、ピン3=コールド(-)。主にプロ機器で使用。
- TRS(ステレオ端子のように見える3極プラグ): バランス(Tip=ホット、Ring=コールド、Sleeve=グラウンド)またはステレオ信号の1チャンネルとして使用。
- TS(モノラル2極)/RCA: アンバランス接続で短距離での接続に使われる。RCAは家庭用機器で普及。
バランス接続は差動信号を用いるため、同相に入るノイズを打ち消す(Common Mode Rejection)効果があり、長距離伝送やライブ環境で有利です。
インピーダンスの違いと重要性
ライン入力の入力インピーダンスは一般的に数kΩから数十kΩ(機器により10kΩ、47kΩなど)です。インピーダンス整合は重要で、ソース(出力)側の出力インピーダンスが低く、受け側の入力インピーダンスが十分に高いことが望ましい(電圧伝達に有利・周波数特性の劣化を防ぐ)。一方、エレキギターのパッシブピックアップなどは非常に高いインピーダンス(約1 MΩが望ましい)を必要とするため、直接ライン入力に接続すると音が痩せることがあります。楽器から直接録る場合はDI(ダイレクトボックス)を使ってインピーダンス変換・バランス化するのが一般的です。
ライン入力とマイク入力・インストゥルメント入力の違い
主な違いはゲインの要求とインピーダンスです。マイク入力は非常に低いレベルを扱うためプリアンプによる大きなゲインが必要で、通常は数百Ω~数kΩの入力インピーダンスを持ち、ファントム電源(48V)を供給することが多いです。インストゥルメント入力(Hi-Z)はギターなどのパッシブ楽器用に高インピーダンス(数百kΩ~1 MΩ)を提供します。ライン入力はこれらと比べゲインが低く、より高い電圧レベルを期待します。機器の入力切替を正しく設定しないとゲイン不足・過剰増幅・ノイズ発生・機器損傷の原因になります。
ゲインステージングとデジタル録音での目安
アナログのヘッドルームとデジタルのクリッピングを考慮して、適切なゲインステージングを行うことが重要です。デジタル録音ではピークがクリップする前に余裕を持たせることが推奨されており、平均レベルを-18 dBFS付近、ピークを-6 dBFS前後に収めるワークフローがよく使われます(機器によって最適値は異なります)。アナログ段階では、ライン入力に送る信号が入力の最大許容レベル(+4 dBu等)を超えないように、出力機器のボリュームやミキサーの送信レベル、パッドやアッテネータを活用してください。
PAD、アッテネータ、クリッピング対策
ライン入力やマイク入力にはしばしばPADスイッチ(-10 dB、-20 dB 等)が付いており、過剰な入力を抑えることができます。特にライブでのライン出力接続や、強電圧の機器(一部のキーボード、パワードスピーカーのライン出力など)を接続する際はPADを活用してプリ段の歪みを防ぎましょう。万一スピーカーレベル(スピーカー出力)を誤ってライン入力に接続すると機器を故障させる恐れがあるため、スピーカーレベルの取り扱いには細心の注意が必要です。
DIボックス、リアンプ、アイソレーショントランスの活用
楽器(特にギター)をライン入力に接続する際は、DIボックスを使って高インピーダンス→低インピーダンスへ変換し、バランス化してノイズを低減できます。逆にライン信号をアンプのギター入力へ送りたい場合はリアンプボックスを使ってインピーダンスを合わせます。グラウンドループによるハムが発生する場合は、アイソレーショントランスやグラウンドリフトスイッチ(注意して使用)で解決することが多いです。
ファントム電源についての注意
ライン入力自体は通常ファントム電源(48V)を必要としませんが、ミキサーやインターフェースでマイク/ライン共通の入力を備える場合、ファントムが有効になっていると一部機器やケーブル接続機器に悪影響を与えることがあります。特に古い機器や一部のDI、リボンマイクなどはファントム電源で破損する恐れがあるため、ライン機器を接続する際はファントムがオフになっているか確認してください。
実践的な接続例
- キーボード→オーディオインターフェースのライン入力: TRSバランスケーブルを使い、インターフェースをラインモードに設定。必要に応じてパッドを使用。
- ミキサーのラインアウト→レコーダー/インターフェースのライン入力: レベル(+4/-10)を揃え、長距離ならバランス(XLR/TRS)を選ぶ。
- ギター→DI→ミキサーのライン入力: DIでバランス化してからXLRで接続。ライブでのノイズ低減に有効。
- パワードスピーカーのライン出力→別のライン入力: 出力レベルを確認し、スピーカーレベルではないことを確認して接続。
トラブルシューティング(ノイズ・音量不足・歪み)
ノイズが出る: ケーブルをバランスに変える、グラウンドループ対策、DIやアイソレーションの導入を検討。音量が小さい: コンシューマ→プロのレベル差を確認(-10 dBV vs +4 dBu)、入力感度の切替をチェック。歪む/クリップする: 送信側の出力を下げる、受信側のPADを入れる、ゲインを適正に設定。
ライブ/ホームスタジオでのベストプラクティス
・接続前に機器の取扱説明書で入出力の規格・最大レベル・インピーダンスを確認する。・長距離は必ずバランス接続を使う。・録音時はデジタルクリップを避けるために余裕を持ったレベルにする。・異なる機器間でレベル規格が違う場合はDIやレベルコンバータ、パッドを使って整合する。・ファントム電源は接続前にオフ/オンを適切に管理する。
まとめ
ライン入力はオーディオ機器同士の基本的な接続を担う重要なインターフェースです。プロフェッショナル(+4 dBu)とコンシューマ(-10 dBV)の違い、バランスとアンバランス、インピーダンス整合、ゲインステージング、PADやDIなどのツールの使い方を理解すれば、ノイズや歪みを防ぎ、最適な音質を得ることができます。接続前に機器仕様を確認し、必要に応じて適切な変換を行うことが長持ちする機材運用と高品質なサウンドの鍵です。
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参考文献
- Shure: What is line level?
- Sweetwater: Line Level vs Mic Level
- Sound On Sound: Understanding Microphone Preamps
- Wikipedia: Audio signal levels
- Rane: Line Level, Microphone Level and Instrument Level


