スロージンフィズ完全ガイド:歴史・レシピ・作り方・アレンジ
イントロダクション — スロージンフィズとは何か
スロージンフィズ(Sloe Gin Fizz、和名で「スロー・ジン・フィズ」「スロージンフィズ」と表記されることが多い)は、ジンフィズ系カクテルの一種で、ソーンベリー(スロー、学名 Prunus spinosa)を漬け込んで作るスロージン(スロー・ジン)をベースにした爽やかな炭酸カクテルです。基本要素は、スロージン、シトラス(通常レモン)、糖分、そしてソーダ。元のジンフィズより甘みと果実感が強く、色は赤〜深いルビー色になります。
歴史的背景
スロージン自体はイギリスで古くから家庭で作られてきた果実酒・リキュールです。スロー(アキグミ、ソーンベリー)を摘み、ジンと砂糖で漬け込む手法は18〜19世紀には一般的になっていました。ジンフィズは19世紀のアメリカ・ヨーロッパで流行したカクテルファミリーで、ジン、柑橘、砂糖、炭酸水というシンプルな組み合わせが特徴です。スロージンフィズはその応用版として生まれ、20世紀前半のカクテル本やバーのレシピで見られます(ジンフィズ系統の起源については諸説ありますが、19世紀後半〜20世紀初頭に確立されたとされています)。
材料(クラシックな基本レシピ)
- スロージン:45ml
- レモンジュース(フレッシュ):15〜20ml
- シュガーシロップ(1:1):10〜15ml(甘さは好みで調整)
- ソーダ(水/炭酸水):適量(トップアップ、約60〜90ml)
- 氷:シェイキング用とグラス用
- (オプション)卵白:1/2個分〜1個分(シルキーな口当たりを好む場合)
上の分量はバー標準の目安です。スロージンの甘さや酸味の強さによって、レモン汁やシロップの量を微調整してください。
作り方(基本の手順)
- シェーカーにスロージン、レモンジュース、シュガーシロップ、(卵白を使う場合は卵白も)を入れる。
- 卵白を使う場合は、まず“ドライシェイク”(氷なしで強くシェイク)して泡立てるとクリーミーな泡が立ちやすい。30〜60秒程度が目安。
- 氷を加えて再度強くシェイクし、冷やす(ダブルシェイクすると泡が安定する)。
- ロンググラス(コリンズグラスやハイボール)に氷を入れ、ストレーナーで注ぐ。卵白使用時は二重にこす(ダブルストレイン)と滑らか。
- 炭酸水でトップアップし、軽く一回混ぜる(炭酸を潰さないよう注意)。レモンスライスやチェリーを飾って完成。
テクニックのコツ
- 材料はフレッシュなレモン汁を使うこと。缶や瓶の酸味とは風味が異なります。
- 卵白を使う場合は、衛生面を考えて低温殺菌された卵や市販の卵白製品、またはヴィーガンであればアクアファバ(ひよこ豆のゆで汁)を代用するのが安全です。
- ドライシェイク(氷なし)→ウエットシェイク(氷あり)の順を守ると、泡が安定してクリーミーになります。
- 炭酸水は注ぐ直前に冷やしておき、注ぐ時は静かにトップアップすると泡が美しく残ります。
味の特徴と評価
スロージンはスローの果実味と糖分、そして時にアーモンドのようなほのかな渋み(核の風味由来)を持ちます。スロージンフィズはそれをレモンの酸味が引き締め、炭酸が清涼感を加えるため、甘さと酸味のバランスが鍵になります。アルコール感は通常のジンフィズよりマイルドで、デザートカクテルに近い部類ですが、レモンを効かせることで飲みやすく爽快な一杯になります。
自家製スロージンの作り方(基本レシピ)
スロージンは市販でも多数ありますが、自家製はよりフレッシュで好みの甘さに調整できます。代表的な漬け込み比率は以下の通りです。
- ジン:700ml(1本)
- スロー(ソーンベリー):約450〜600g(摘みたて、傷んだものは除く)
- 砂糖(グラニュー糖またはブラウンシュガー):200〜400g(好みで調整)
- 漬け込み期間:最低6週間、理想は3ヶ月〜6ヶ月
作り方:スローの表面に小さな切り込みを入れて(果実が破裂しないよう注意)、ジンと一緒に瓶に入れる。砂糖を投入して振り混ぜ、冷暗所で保存。週に一度瓶を軽く振って糖が溶けるようにし、色と味が十分に出たら濾して瓶詰めする。時間が経つほど風味はまろやかになります。
アレンジ・バリエーション
- 卵白を加えてクリーミーに(“シルク・スロージンフィズ”のような仕上がり)。
- レモンの代わりにライムを使うとシャープさが増す。
- スロージンの代わりにブラックベリーリキュールやチェリーリキュールを試すと別の果実味が楽しめる。
- ソーダの代わりにトニックやスパークリングワインで上品な変化をつける(スパークリングだと「スパークリング・スローフィズ」)。
合わせる料理・シーン
スロージンフィズは甘さと酸味のバランスが良いため、白身魚のカルパッチョや軽めのチーズ(フレッシュチーズ、シェーブル)と相性が良いです。季節としては秋〜冬の果実収穫後からホリデーシーズンにかけての提供に向きますが、レモンの爽やかさで春夏でも楽しめます。デザート代わりとしてクランブルやタルトと合わせるのもおすすめです。
衛生・安全上の注意
- 卵白を生で使う場合は、免疫が低い人や妊婦は避けるか、低温殺菌済み卵を使用してください。
- 自家製スロージンを作る際は清潔な瓶を使用し、保存は冷暗所で。完成後は冷蔵庫での保存が望ましいが、アルコール度数が高ければ比較的長持ちします。
- スローの採取時には食用に適した果実であることを確認し、農薬等に注意してください。
市販ブランドと購入のポイント
スロージンは伝統的な英国メーカー(例:Sipsmith、Hayman's など)がラインナップしていることが多く、各社で甘さやスローの浸出度が異なります。購入時はアルコール度数(通常25〜30%程度が多い)、砂糖の量、香りの強さをチェックすると良いでしょう。カクテル用途なら甘めのものをレモンで引き締める方が扱いやすいです。
まとめ — 家庭でもバーでも楽しめる一杯
スロージンフィズは、クラシックなジンフィズに果実の深みと甘さを加えた、親しみやすくバランスの良いカクテルです。自家製スロージンを用意すれば、季節感のある特別な一杯が楽しめます。基本のレシピを押さえ、卵白やトニック、スパークリングワインなどでアレンジすることで、パーティーからしっとりとした晩酌まで幅広い場面に対応します。安全面にも配慮しつつ、自分好みのスロージンフィズを見つけてください。
参考文献
- Sloe gin — Wikipedia
- Gin fizz — Wikipedia
- Sloe Gin Fizz — Difford's Guide(レシピと解説)
- BBC Good Food — How to make sloe gin
- Serious Eats — The Dry Shake Technique(卵白を使うシェイク技術)
- Liquor.com — Sloe Gin Fizz(モダンレシピ)
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