ビール審査員とは？資格・審査手順・現場で求められるスキルを徹底解説

はじめに：ビール審査員の役割とは

ビール審査員（ビアジャッジ）は、コンテストや品質管理、商品開発、教育など多様な場面でビールの官能評価を行う専門家です。外観、香り、味わい、口当たり、後味、スタイル適合性といった観点から客観的に評価し、メダルや評価点、フィードバックを提供します。消費者の嗜好や市場動向を踏まえつつ、ビールの品質や個性を正確に読み取ることが求められます。

ビール審査の基本：何を、どのように評価するか

審査は一般的にブラインド（銘柄非表示）で行われ、審査員はスコアシートに基づいて評価を記録します。代表的な評価項目は次の通りです。

• 外観：色、透明度、泡の持続性・質感
• 香り（アロマ）：ホップ、モルト、発酵由来のエステルやフェノール、オフフレーバーの有無
• 味わい（フレーバー）：甘味、苦味、酸味、バランス、モルトやホップの風味
• 口当たり（マウスフィール）：ボディ感、炭酸の刺激、アルコール感の強さ
• 後味（アフターテイスト）：キレ、残渣、嫌な余韻の有無
• スタイル適合性：そのビールが掲げられるスタイルガイドラインに適合しているか

これらの情報を総合して点数化し、審査が進められます。大会や団体によってスコア配分や細かい定義は異なりますが、透明性・再現性のある評価が原則です。

審査の流れ：大会における実務的手順

通常のコンペティション審査の流れは以下のようになります。

• エントリー受付・サンプリング管理（ロット管理、鮮度確認）
• ブラインドサービング（温度管理、適切なグラス使用）
• 個別審査（各審査員がスコアシートへ記入）
• パネルディスカッション（上位候補の比較討議）
• 最終決定とフィードバック提供

審査は通常、複数名の審査員（パネル）で行い、個人の嗜好バイアスを相殺します。上位を決める段階では飲み比べを行い、順位を確定します。

必要な知識とスキル

優れたビール審査員に求められる要素は多岐にわたります。

• 官能評価の基礎：嗅覚・味覚トレーニング、オフフレーバーの識別
• ビアスタイルの理解：各地ビールや歴史的背景、スタイルガイドラインの知識
• 醸造技術の基本知識：原料（麦芽、ホップ、酵母、水）、製法の影響
• コミュニケーション能力：建設的なフィードバックを示す力
• 倫理・プロフェッショナリズム：利害関係の開示や公平性の維持

加えて、長時間のテイスティングに耐えられる体調管理や、繊細な感覚を維持するための生活習慣も重要です。

認定制度とトレーニング（国際的な例）

国際的にはいくつかの認定プログラムがあり、最も知られているものにBJCP（Beer Judge Certification Program）や、嗜好・提供に焦点を当てたCicerone Certification Programなどがあります。これらは審査技術やスタイル知識、筆記・実技試験を通じて一定の基準を確認します。認定は審査の信頼性を高め、審査員同士の知識の共通基盤を作ります。

国内でも大会や民間の講座でトレーニングを受けられる機会が増えており、まずは地元のコンテストでステュワード（補助）として参加し、実務を学ぶ道が一般的です。

審査員の現場での留意点と倫理

審査の公正性を担保するため、以下の点は厳守されます。

• ブラインドジャッジング：銘柄や醸造所情報は伏せる
• 利害関係の開示：審査対象の醸造所と利害関係がある場合は辞退すること
• 健康・衛生管理：風邪や体調不良時は審査を控える
• 一貫した評価基準の適用：個人の好みで評価基準を変えない

これらは審査の信頼性を保ち、受賞の価値を守るための基本的なルールです。

審査の活用分野：大会以外の仕事領域

ビール審査員のスキルはコンテストにとどまりません。主な活用分野は次の通りです。

• 品質管理（醸造所の出荷検査、官能評価による異常検出）
• 商品開発（レシピ作成、ターゲット嗜好の分析）
• 教育・執筆（セミナー、コラム、書籍の執筆）
• イベント運営（フェスやテイスティングイベントの審査・コンサル）

ビール審査員になるための具体的ステップ

未経験から始める場合の典型的なステップは以下の通りです。

• ビールの基礎知識を学ぶ（スタイル、原料、造り方）
• 日常的にテイスティングを行い、オフフレーバー識別などの官能トレーニングを行う
• 地元の審査イベントでステュワードや見学者として参加し、実務を経験する
• BJCPなどの認定試験や民間の講座を受講して資格取得を目指す
• 経験を積み、パネル審査や教育活動を通じて信頼を築く

継続的な学習と実務経験が何より重要です。また、審査員コミュニティに参加してフィードバックを受けることも上達の近道です。

まとめ：ビール審査員のやりがいと注意点

ビール審査員は嗜好のプロフェッショナルとして、ビールの品質向上や文化の発展に寄与する役割を担います。技術的な知識と鋭い感覚、倫理観が求められますが、学べば学ぶほど深みのある世界が広がります。興味のある方はまずは身近なテイスティングやイベント参加から始め、段階的に経験と資格を積んでいくことをおすすめします。

参考文献

• Beer Judge Certification Program (BJCP)
• Cicerone Certification Program
• Brewers Association（World Beer Cupなどの主催団体）
• European Beer Star（国際的なビールアワードの例）
• Institute of Brewing & Distilling（醸造学の専門機関）

投稿者プロフィール

エバープレイ編集部

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