グリューワインとは?歴史・作り方・レシピと楽しみ方完全ガイド
イントロダクション — 冬の定番、温かいワイン「グリューワイン」
グリューワイン(Glühwein)は、赤ワインをベースにシナモン、クローブ、オレンジなどの香辛料や果皮を加えて温めたホットワインの一種で、ドイツ語圏を中心にヨーロッパ各地で冬季に楽しまれている飲み物です。クリスマスマーケットや屋外の催し物、家庭での団らんの場で提供されることが多く、寒い季節に体を温め、香りで気分を高めてくれます。
歴史と起源
温めたスパイス入りワインの起源は古代ローマにさかのぼるとされ、保存と風味付けのためにワインに香料やハーブを加えて温めて飲む習慣がありました。中世ヨーロッパでは香辛料が広まり、各地で独自の温めワインの文化が発展しました。現代的な「グリューワイン」という名称はドイツ語圏で定着したものですが、同様の飲み物はフランスの「vin chaud」、スカンディナヴィアの「glögg」、イタリアの「vin brulé」など、地域ごとに呼び名とスタイルが異なります。歴史的背景や材料の違いを通じて、各地域の気候や食文化が色濃く反映されています。
名前の由来
ドイツ語の「Glühwein」は直訳すると「輝くワイン」「赤熱させたワイン」といった意味合いを持ちます。語源は「glühen(赤く熱する、輝く)」に由来するとされ、温められたワインが温かく湯気を立てる様子や、加熱する過程で香りが立つさまを表現していると考えられます。
基本の材料と香辛料
基本的なグリューワインの材料はシンプルで、主に以下のものが用いられます。
- 赤ワイン(フルボディ〜ミディアムボディ)
- 甘味(砂糖、蜂蜜、アガベシロップなど)
- 柑橘類(オレンジやレモンの輪切りや皮)
- 定番スパイス:シナモン、クローブ、スターアニス(八角)
ここから、好みに応じて以下の材料を加えることが多いです。
- カルダモン、ナツメグ、ジンジャー
- ブランデー、ラム酒、アマレットなどのスピリッツ(アルコール感と深み追加)
- レーズンやアーモンド(特に北欧のグロッグで見られる)
基本的な作り方(レシピ例)
以下は家庭で作る際のスタンダードなレシピ例(約4杯分)です。
- 材料
- 赤ワイン 750ml(フルーティーで渋みが穏やかなもの)
- オレンジ 1/2個(スライス)
- シナモンスティック 2本
- クローブ 6〜8粒
- スターアニス 1〜2個(好みで)
- 砂糖 大さじ2〜4(甘さは好みに合わせて調整)
- 好みでブランデー 大さじ1〜2
- 作り方
- 鍋にワインを注ぎ、スライスしたオレンジ、シナモン、クローブ、スターアニスを入れる。
- 中火でゆっくり温める。沸騰させないことが重要(目安は70〜80℃):香りは立つがアルコールとデリケートな風味を保つ。
- 砂糖を加えて溶かし、弱火で10〜15分ほど香りを引き出す。
- 火から下ろし、好みでブランデーを加える。茶こしで漉してカップに注ぐ。
加熱は「沸騰させない」ことがポイントです。沸騰させるとアルコールが飛ぶだけでなく、ワインの風味が飛んでしまい、香辛料のエグみが出ることがあります。
ワインの選び方
グリューワインに合う赤ワインは、果実味がしっかりしているもの、タンニンが過度に強くないものが適しています。代表的にはメルロー、ツヴァイゲルト、シラーやカベルネ・ソーヴィニヨンの控えめなものなど。高級ワインを加熱するのは風味の面で必ずしも最適ではないため、手頃な価格帯のワインで十分良い結果が得られます。また、白ワインで作る白グリューワインや、ノンアルコール用にアルコールフリーのワインやぶどうジュースを使うバリエーションも人気です。
地域ごとのバリエーション
グリューワインは地域ごとにアレンジが豊富です。
- ドイツ・オーストリア:シンプルでスパイスを中心にしたスタイルが一般的。クリスマスマーケットで定番。
- スウェーデン等の北欧(グロッグ / glögg):レーズンやアーモンド、カルダモンを加え、しばしばブランデーやアクアヴィットで強化される。濃厚で甘めの傾向。
- フランス(vin chaud):果皮やスパイスを使うが、より軽やかでワインの果実味を生かした仕上がり。
- イタリア(vin brulé)やアルザス地方:地元のワインやスパイスの配合で個性が出る。
アルコールの取り扱いと安全性
グリューワインは加熱するとはいえ完全にアルコールが飛ぶわけではありません。加熱温度や時間により残存アルコール量は変わりますが、一般的に短時間の温めではアルコール分の大部分が残ることが多いです。そのため、妊娠中の方、未成年、アルコールを控える必要のある方にはノンアルコールの代替(アルコールフリーワインやぶどうジュース、スパイスシロップなどで風味をつけたもの)を提供するのが望ましいです。なお、加熱時に沸騰させるとアルコールの揮発が進みますが、同時に香りやフレーバーも失われがちです。
提供方法と器具
グリューワインは通常耐熱のカップやマグ、専用の陶製マグで提供されます。屋外のマーケットではよく持ち帰り可能なマグや紙カップが使われ、デポジット制を採用している場所もあります。香りを楽しむために小さな口のカップより広口のカップを使うと良い場合もあります。また、香辛料やオレンジのスライスを飾りとして一緒に出すと見た目も華やかになります。
食べ合わせ・ペアリング
グリューワインは甘さとスパイスの香りがあるため、以下のような食べ物とよく合います。
- ジンジャーブレッドやスパイスクッキー
- ローストナッツ、チーズ(ブリーやカマンベールなど柔らかめ)
- グリル肉やソーセージ(マーケットでの定番)
- フルーツタルトや焼きリンゴなどの温かいデザート
栄養・カロリーと健康への留意点
グリューワインはワイン自体のアルコールと砂糖が主なカロリー源です。1杯(約200ml)あたりおおよそ150〜250kcal程度になることがあり、砂糖やアルコール添加の有無で変わります。糖質制限やカロリー制限をしている場合は砂糖を減らしたり、無糖の代替甘味料やノンアルコールベースで作ることを検討してください。また、香辛料は消化促進や体を温めるとされる一方で、胃腸が弱い人は刺激を感じる場合があります。
市販品と家庭用の違い
市販されているグリューワインには、加熱済みで瓶詰めされたもの、濃縮シロップや粉末タイプの「グリューワインミックス」、加熱不要のボトル入り製品などがあります。市販品は手軽さが利点ですが、スパイスの配合や甘さが一定であるため、家庭で作る場合のように細かな調整は難しいことがあります。家庭で作る場面ではスパイスの配合、加熱時間、使用するワインの種類を変えることで自分好みの一杯を作れるのが魅力です。
実用的なコツとバリエーションのアイデア
- 香辛料は軽く潰すか布袋に入れて煮ると取り出しやすく、過剰抽出を防げます。
- オレンジの皮は白い部分(アルベド)をなるべく避けると苦味を抑えられます。
- 甘さは最後に加えて調整する。加熱中に濃度が変わることがあるためです。
- 白ワインやロゼで作る「ホワイトグリューワイン」も爽やかで魅力的です。スパイスはカルダモンやレモンピールを強調すると合います。
- ノンアルコール版はスパイスと柑橘を加えたぶどうジュースやりんごジュースをベースにするのがおすすめ。
まとめ
グリューワインはシンプルな材料と作り方で冬の時間を豊かにしてくれる飲み物です。歴史的には古代から続く温めワインの伝統に根ざし、地域ごとに多彩なアレンジが存在します。家庭で作る場合はワインの選び方、加熱温度と時間、スパイスの配合に気を配ることで、自分好みの一杯を実現できます。妊娠中や未成年にはノンアルコールの代替を用意するなど、安全面にも配慮しましょう。ぜひ様々なスパイスや酒精の追加で自分だけのオリジナルグリューワインを試してみてください。
参考文献
Mulled wine — Encyclopaedia Britannica
Mulled wine recipe — BBC Good Food
Deutsches Weininstitut (German Wine Institute)


