Mandarina Bavaria完全ガイド:香り・使い方・醸造テクニック(マンダリナバイエリア)

はじめに

マンデリナ・バイエリア(Mandarina Bavaria)は、近年のクラフトビールブームで注目を集めたシトラス系アロマホップの代表格です。名前の通りマンダリン(みかん)を想起させるフルーティーで鮮烈な香りを持ち、IPAやセッションエール、フルーツエールなど様々なスタイルで活用されます。本稿では、基本情報から醸造上の使い方、相性の良いスタイルやブレンド例、栽培・保存上の注意点まで、実践的かつ詳細に解説します。

基本情報と背景

Mandarina Bavariaはドイツ系の育種で生まれたアロマホップで、主にホール(コーン)やペレットで流通します。商業的には欧州を中心に広く使われており、柑橘類、とくにマンダリンやみかんのような香りが特徴です。苦味成分(α酸)はアロマ系としては中程度で、ブリューでの苦味付与よりも香り付け目的で使われることが多い品種です。精油組成にはリモネンやリナロール、ミルセンなどの柑橘・フローラル系成分が含まれ、これらがマンダリンに似た香気を生み出します(以下の参考資料参照)。

香り・風味プロファイルの詳細

  • 主要香味:マンダリン、タンジェリン、甘い柑橘の皮、ややトロピカルなニュアンス(みかんキャンディやオレンジピールの要素を含む)
  • 副次的特徴:軽いフローラルやスパイシーさ、グレープフルーツに近い爽やかさが感じられることもある
  • 香りの持続性:生産ロットや保管状態により変動するが、フレッシュなペレットではドライホップで良く際立つ
  • ボディへの影響:味わいを重たくしない性質があり、軽快な飲み口のまま柑橘のアクセントを加えるのに適する

醸造での使い方 — いつ、どのくらい投入するか

Mandarina Bavariaは香り付け目的で使うのが基本です。以下に一般的な投入タイミングと目安量を示します(ホームブルーイング/商業用でスケールは異なります)。

  • 煮沸序盤(苦味付与):アルファ酸が中程度とはいえ、主目的は香りなので煮沸初期での長時間投入は避ける。苦味を出したい場合は少量を用いる。
  • 煮沸終盤(アロマ取り):煮沸終了10〜15分前に入れると柑橘感を残しつつ揮発損失を抑えられる。
  • ホップスタンド/ウォールプール(ホットサイド):温度を70〜90℃程度に保ったウォールプールで20〜30分保持すると、鮮烈で凝縮された香りが得られる。沸騰させないことが重要。
  • ドライホップ(コールドサイド):最も典型的な使い方。ビールの発酵終盤〜2次発酵にかけて投入し、2〜7日間程度で香りが立つ。目安としてはホームブルー(20Lバッチ)で20〜60g、商業規模では0.5〜3.0 g/Lの範囲がよく使われる(レシピや狙いにより増減)。

ブレンドと相性の良いホップ

Mandarina Bavariaは単体でも強い柑橘アロマを出しますが、他ホップとブレンドすることで複雑さを増すことができます。代表的な組合わせは以下の通りです。

  • Citra:さらにトロピカル&グレープフルーツ系を加えたい場合に相性が良い。甘い柑橘と南国果実のバランスが取れる。
  • Mosaic:ベリーやトロピカルのニュアンスを加え、香味に厚みを出す。
  • Amarillo:オレンジやフローラルな柑橘感を補強するのに向く。
  • Hallertau BlancやNelson Sauvin:白ブドウやワイン的な香味を加えたい場合に有効(全体をフルーティーにまとめる)。

適したビアスタイル

  • ニューイングランド/ヘイジーIPA:モルトの甘さと相性が良く、ジューシーさを増幅する。
  • アメリカンIPA:ドライで柑橘推しの仕上がりに向く。苦味とのバランス調整が鍵。
  • セッションエール/ペールエール:軽快さを維持しつつ香りで個性を出すのに適する。
  • フルーツエール/サワー:フルーツビールに合わせると果実感を引き立てる。

実践的レシピ例(ホームブルー 20L、目安)

以下は香り重視のシンプルなレシピ例です。数値は目安なので好みにより調整してください。

  • ベースモルト:ペールモルト 4.5kg
  • クリスタルモルト:100g(香ばしさの下支え)
  • 糖化:65℃ 60分
  • 煮沸:60分。煮沸終盤にMandarina Bavariaを15分: 10g、5分: 10g
  • ウォールプール/ホップスタンド:70℃で20分、Mandarina Bavaria 20g
  • 発酵:Ale酵母 18〜20℃
  • ドライホップ:発酵終盤〜2次でMandarina Bavaria 30〜50g(2〜5日)

代替ホップと注意点

Mandarina Bavariaが手に入らない場合、AmarilloやCitra、Hallertau Blancなどで代替できますが、完全に同じマンダリン特有の香りを再現するのは難しいです。また、柑橘香は揮発性が高く、加熱や長期保存で失われやすいため、鮮度管理と投入タイミングが重要です。

栽培・流通・保存に関するポイント

  • 栽培:品種特性としては欧州で多く栽培されるが、栽培地域や収穫年によって香味は変化する。
  • 流通:一般的にペレットで流通することが多く、真空包装・窒素置換された状態で出荷されることが望ましい。
  • 保存:冷暗所または冷蔵(-18℃が理想)での長期保存を推奨。酸化や高温で香りが劣化するため、開封後はなるべく早めに使い切る。

よくある疑問とトラブルシューティング

  • 香りが出ない:古いホップや酸化したホップは香りが弱い。ドライホップの温度・期間やホップ量を見直す。酵母の活動やビールの残糖が香りの感じ方に影響する場合もある。
  • 苦味が強く出てしまった:煮沸初期に入れすぎると苦味が立つ。香り重視なら終盤投入やドライホップ中心にする。
  • 香りのバランスが悪い:単体で多量使用すると単調になることがある。フローラルやトロピカルなホップと組み合わせることで奥行きを出す。

まとめ

Mandarina Bavariaは、その名が示す通り“マンダリンのような”鮮烈で親しみやすい柑橘香を持つホップです。使い方としてはドライホップやホップスタンド、終盤の投入が最も効果的で、NEIPAやセッションエール、フルーツビールなどで高い効果を発揮します。香りは鮮度に大きく依存するため、購入後の保存や投入タイミングに配慮することが美味しく仕上げる鍵です。

参考文献