AC/DCの軌跡と影響:歴史・音楽性・代表作を徹底解説
序章:なぜAC/DCは今も語り継がれるのか
オーストラリア出身のロックバンド、AC/DCは1973年の結成以来、シンプルかつ強烈なリフと圧倒的なライブパフォーマンスで世界中に影響を与えてきました。スコットランド生まれのヤング兄弟、マルコム・ヤング(リズムギター)とアンガス・ヤング(リードギター)を中心に組織されたバンドは、ボーカルの交代やメンバーの入れ替わり、悲劇や法的トラブルを乗り越えながらも、ハードロックの象徴としての地位を確立しました。本稿では、結成から現在までの歩み、音楽性、代表作、ライブの魅力、そして業界・文化への影響までを詳しく深掘りします。
結成と初期(1973–1978)
AC/DCは1973年、シドニーでマルコムとアンガス・ヤングによって結成されました。初期ラインナップは流動的で、初期のシングルやデモ録音にはラリー・ヴァン・クライデットやデイヴ・エヴァンスなどが関わりました。1974年にボーカリストとしてボン・スコットが加入すると、バンドは音楽的にまとまりを見せます。彼らのサウンドはブルースに根ざしたロックンロールを土台に、極めて直截的なリフと強固なリズムセクションで構築されました。
1975年発表の初期作『High Voltage』(オーストラリア盤)や、その後の『TNT』『Dirty Deeds Done Dirt Cheap』『Let There Be Rock』などでバンドは地元オーストラリアのみならず国際的な注目を集め始めます。1978年のライヴ・アルバム『If You Want Blood You've Got It』は、ステージでの彼らの凄まじい熱量を記録し、以降のスタジアム・ロック路線への道を開きました。
ブレイクと悲劇(1979–1980)
1979年の『Highway to Hell』は、商業的に大きな成功を収め、アメリカ市場でも大きな足場を築きました。同作はプロデューサーにロバート・ジョン“マット”ラングを迎え、より洗練された音作りとキャッチーなフックが加わった作品です。しかし1980年2月、ボン・スコットがロンドンで急逝。死因はアルコール関連と報じられ、バンドとファンに大きな衝撃を与えました。
ブライアン・ジョンソン加入と『Back in Black』の伝説(1980)
ボンの死後、AC/DCは解散の危機に直面しましたが、ボーカリストにブライアン・ジョンソンを迎えて活動を継続。1980年7月に発売された『Back in Black』は、喪失への追悼を込めた黒いジャケットと、怒涛のリフ群、ジョンソンのシャープなボーカルが融合した不朽の名盤となりました。本作は商業的に空前の成功を収め、世界的に数千万枚規模の売上を記録したとされ、ロック史上における最重要アルバムの一つに数えられます(世界的売上は推定数千万枚)。
1980年代以降の展開と代表作
1980年代に入ってもAC/DCは勢いを保ち、1981年の『For Those About to Rock We Salute You』などを経て、90年代・2000年代にもコンスタントに作品を発表しました。1990年の『The Razors Edge』からはシングル「Thunderstruck」が生まれ、ライブ定番曲として人気を集めました。2008年には長らく待たれた新作『Black Ice』をリリースし、世界中のチャートで成功を収めました。
メンバーチェンジと近年の動向
AC/DCの核はヤング兄弟にありますが、長年の活動で多くの入れ替わりがありました。マルコム・ヤングは健康上の理由(認知症と報じられる)で2014年にバンドを離れ、2017年に亡くなりました。マルコムの後任としては甥のスティーヴィー・ヤングが再び参加しました。ドラムではフィル・ラッド、サイモン・ライト、クリス・スレイドらが時期により交代。ベースはクリフ・ウィリアムスが長年務めましたが、一時的に脱退・復帰を繰り返しています。
2016年の『Rock or Bust』ツアーでは、ブライアン・ジョンソンが突発的な聴力問題のためツアー参加を断念し、Axl Rose(Guns N' Roses)が代役として一部公演でステージに立ちました。2020年の『Power Up』では、ジョンソンとアンガスらが再びレコーディングに参加し、作品は亡きマルコムへの捧げ物として発表されました。
サウンドと制作の特徴
AC/DCの音楽は極めてシンプルかつ強靭です。マルコムのリズミカルなリフ構築、アンガスの鋭いギターフレーズとステージング、無駄を削ぎ落としたリズム隊による盤石のグルーヴが特徴。歌詞はロックンロールの享楽、ストリートの物語、ユーモアと皮肉を交えた内容が多く、音楽的にはブルースロックを基盤にしたストレートなハードロックと言えます。
プロダクション面では、マット・ラングとの協働がターニングポイントで、よりキャッチーでクリアな音像が世界的な受容を後押ししました。以降の名曲群では、スタジアムでも通用する“ワンフック”と繰り返しの効いたアレンジが採用されています。
ライブの魅力とパフォーマンス
AC/DCのライブは“アリーナ・ロック”の典型です。アンガスの学校制服スタイルやチャックのきいたギターソロ、シンプルだが力強いステージングが観客を巻き込みます。曲構成はわかりやすく、コール&レスポンスや大合唱を誘発するため、世代を超えた観客動員力があります。音量、テンポ、視覚的演出(巨大な鐘、火薬、照明)などを効果的に使い、数万人規模の会場でも一体感を生むのが彼らの強みです。
論争と困難、そして復活
長年の成功の裏には困難もありました。ボン・スコットの急逝、マルコムの病気、フィル・ラッドの法的トラブル、ブライアン・ジョンソンの聴力問題など、数々の試練を経験しています。これらはバンドの存続を揺るがしましたが、都度回復し、時にメンバー交代や外部ミュージシャンの起用で乗り切ってきました。特に2010年代後半からの復帰・活動再開は、彼らの不屈の精神を示しています。
文化的影響と受容
AC/DCは純然たるロックの象徴として、映画、CM、スポーツイベントなどさまざまな場面で楽曲が使用されてきました。多くのミュージシャンに影響を与え、ギターリフの教科書的存在として若い世代にも学ばれています。保守的かつ原点回帰的なスタンスを貫くことで、トレンドに流されない普遍性を獲得しました。
まとめ:シンプルな破壊力が生む永続的価値
AC/DCの魅力は“簡潔さ”と“力強さ”にあります。複雑な技巧や過度の実験を排し、ロックの基本を極めることで多くのリスナーの心を掴んできました。紆余曲折や悲劇を経ながらも、彼らの音楽は世界中で愛され続けています。今後もその直截的なロックサウンドは、新たなリスナーを獲得し続けるでしょう。
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参考文献
- AC/DC 公式サイト
- Britannica - AC/DC
- Rock & Roll Hall of Fame - AC/DC
- Rolling Stone - AC/DC 関連記事
- AllMusic - AC/DC Biography
- RIAA - 認定記録
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