中級者が巡るクール・ジャズの深淵:5枚の名盤で読み解く新たな技巧

はじめに

クール・ジャズは、1940年代末に抑制された表現と繊細なアレンジを特徴とするモダンジャズの潮流です。本稿では、西海岸リリシズムから対位法的アレンジ、ボサノヴァ、変拍子、サックス間のインタープレイまでを5枚の名盤で探ります。

おすすめレコード5選

1. Art Pepper – Art Pepper Meets the Rhythm Section

代表トラック

Cole Porter作の「You’d Be So Nice to Come Home To」で、Pepperの情感豊かなアルトサックスが際立つ演奏が展開されています。

録音情報

1957年1月19日にロサンゼルスのContemporary Studioで録音。

背景

Art Pepperは当日朝に録音を知らされ、Red Garland、Paul Chambers、Philly Joe Jonesらマイルス・デイヴィス・リズムセクションと初共演というプレッシャー下で演奏を披露したと言われています。

学習ポイント

ホーンとリズムセクション間の即興的対話や、西海岸ならではのリズム感、Pepperのリリカルなフレージング技法を学べます。

2. Modern Jazz Quartet – Django

代表トラック

John Lewis作のタイトル曲「Django」は、弦楽器的なフーガ風アレンジと穏やかなメロディが特徴です。

録音情報

1953年6月25日から1955年1月9日にかけてニュージャージー州ハッケンサックで録音。

背景

1956年に12インチLPとしてまとめられた本作は、クラシック的な対位法を取り入れたスタイルを通じ「サード・ストリーム」の先駆けとされました。

学習ポイント

バロック音楽から着想を得た対位法のアレンジ技法や、ホーンセクションとリズムセクションの絶妙なバランスを学ぶのに最適です。

3. Stan Getz & Charlie Byrd – Jazz Samba

代表トラック

Antonio Carlos Jobim作の「Desafinado」で、GetzのテナーとByrdのギターによる繊細な対話が聴きどころです。

録音情報

1962年2月13日にワシントンD.C.のAll Souls Unitarian Church(Pierce Hall)で録音、同年4月20日にリリース。

背景

クリード・テイラーのプロデュースにより制作され、アメリカでのボサノヴァ・ブームを巻き起こした歴史的作品です。

学習ポイント

サンバとジャズを融合させたリズム感覚やボサノヴァ特有の空間的フレージング、異文化音楽の取り込み方を体得できます。

4. Paul Desmond – Take Ten

代表トラック

タイトル曲「Take Ten」は、5/4拍子を用いた『Take Five』の流れを汲む軽快なオリジナルナンバーです。

録音情報

1963年6月5日から25日にかけてニューヨークのウェブスター・ホールで録音。

背景

Desmondの初のRCAソロ小編成作品で、ギタリストJim Hallとの協働が改めてフィーチャーされています。

学習ポイント

不規則拍子(5/4・10/8)への慣れやギターとのインタープレイ、シンプルかつメロディアスな即興スタイルを学べます。

5. Lee Konitz & Gerry Mulligan Quartet – Lee Konitz Plays with the Gerry Mulligan Quartet

代表トラック

Jerome Kern作の「All the Things You Are」で、アルトとバリトンのサックスが自由自在に絡み合います。

録音情報

1953年1月23日・30日および2月1日にロサンゼルスのThe Haigほか複数会場で録音され、1957年にコンピレーションとして発売。

背景

当初10インチLPとしてリリースされたセッションを、未発表テイク追加でコンピレーション化した歴史的音源です。

学習ポイント

異なるサックス楽器間の対話的アドリブやクールな空気感の演出、限られた編成によるハーモニー構築を学べます。

まとめ

今回紹介した5枚は、西海岸リリシズム、大編成対位法、ブラジル音楽との融合、リズム的実験、サックス間の自由な対話といった多彩なアプローチを通して、クール・ジャズの奥深さと多様性を示しています。各作品の録音背景や技法的要点を意識しながら聴くことで、中級リスナーはさらなる発見と演奏技術の向上を得られるでしょう。

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