煌めく幻想の交響詩──中森明菜『ファンタジー〈幻想曲〉』

『ファンタジー〈幻想曲〉』は1983年3月23日にリプリーズ・レコード/ワーナー・パイオニアよりリリースされた中森明菜さんのサード・スタジオ・アルバムです 。リリース直後の1983年4月4日付オリコン週間LPチャートで初登場1位を獲得し、同年4月25日付まで4週連続首位をキープしました 。収録先行シングル「セカンド・ラブ」は1982年11月10日にリリースされ、1983年度オリコン年間シングルチャートでも8位にランクインしています 。
発売以来、LP、CT、スーパーディスクLP、CD、紙ジャケット、180g重量盤、ラッカーマスターサウンド仕様など多彩な形態で再発され、現在もアイドルポップスの金字塔として多くのリスナーを魅了し続けています 。

背景とアルバム制作

1982年のデビュー作『プロローグ〈序幕〉』、続くセカンド『バリエーション〈変奏曲〉』に続く3部作の完結編として、約5か月ぶりに発表されたのが本作です 。
LP(L-12570)とカセット(LKF-8070)の2形態で同時発売され、初回カセット20万本はコレクター垂涎のグリーンカラーカセット仕様でした 。プロデューサーを務めたのは野原三紗子さん(日本テレビ音楽)、ディレクターは島田雄三さん、ミキサーは菊池功さんなどベテランスタッフが揃い、ジャケットデザインには持田恭男さん、フォトグラファーに野村誠一さんらが参加しました 。

全編曲を担当した萩田光雄さんの鮮やかなストリングス・アレンジによって、アルバムに統一感が与えられ、アイドルポップに留まらない幻想的な世界観を構築しています 。レコーディング前には「Akina Milkyway ’83 春の風を感じて」と題した自身初の全国コンサートツアーを敢行し、ステージパフォーマンスを経て完成度を高めたことも、本作の深みを増す一因になっています 。

楽曲解説:幻想への誘いと多彩な表情

全10曲+ボーナストラック1曲を通じて、モノローグ「明菜から……。」で幕を開ける本作は、まるでひとつの交響詩のように構成されています 。

  • 「瑠璃色の夜へ」:来生えつこさん作詞、佐瀬寿一さん作曲によるバラードです。夜景を彷彿とさせるシンセとストリングスが、切なくロマンチックな情景を浮かび上がらせます 。
  • 「アバンチュール」:岡崎舞子さん作詞、森一海さん作曲のアップテンポ・ナンバーです。フルートやギターが軽快に絡み、夜の都会を駆け抜けるような疾走感を演出しています 。
  • 「傷だらけのラブ」:伊達歩さん作詞、芳野藤丸さん作曲によるドラマティックなミディアムテンポです。エモーショナルなボーカルが胸を打ちます 。
  • 「目をとじて小旅行(イクスカーション)」:篠塚満由美さん作詞、茂村泰彦さん作曲の組曲風アレンジです。瞑想的な中間部が映像的なスクリーンワークを想起させます 。
  • 「セカンド・ラブ」:来生えつこさん作詞、来生たかおさん作曲による大ヒットシングルです。哀愁漂うメロディラインと深みのある歌声が、1980年代を象徴する一曲となりました 。
  • 「思春期」:売野雅勇さん作詞、芹澤廣明さん作曲による瑞々しいナンバーです。揺れ動く乙女心を繊細に歌い上げています 。
  • 「More もっと恋して」「アイツはジョーク」:伊達歩さん/米倉良広さん、そして中里綴さん/福島邦子さんのコンビ作を収録しています。ポップとユーモアが同居し、アルバムのラストを軽やかに彩っています 。

2022年ラッカーマスターサウンド仕様では、オリジナル未収録のB面曲「鏡の中のJ」をボーナストラックとして追加し、全編に新たな余韻を与えています 。

パッケージと再発の歩み

初出以降も再発は途切れず、1983年6月のスーパーディスクLP(SDM-15007)とCD(35XL-1)を皮切りに、1985年の廉価盤(32XL-84)、1991年の紙帯仕様(WPCL-412)、1996年のQ盤(WPC6-8184)、2006年の紙ジャケット完全限定盤(WPCL-10278)、2012年のSACD/CDハイブリッド(WPCL-11136)、2018年の180g重量盤LP(WPJL-10085)など、ファンの要望に応じた多彩な仕様が発売されています 。特に2022年のラッカーマスターサウンド仕様2CDセット(WPCL-13414~5)は、オリジナルマスターの質感を忠実に再現したと高く評価されています 。

チャート成績とセールス指標

『ファンタジー〈幻想曲〉』はオリコン週間LPチャートで4週連続1位を獲得し、26週にわたりランクインを続けました 。1983年4月18日付では48,380枚を売り上げ、トップを堅守しました 。同年の年間アルバムチャートでも4位にランクインし、アイドル史に残るセールスを記録しています 。

批評・評価

発売当時、週刊シネママガジンの澤田英繁さんは本作を「タイトル通りファンタジックな雰囲気も加味されている」と評し、その幻想的なアレンジと楽曲の完成度を高く評価しました 。CDJournalでは日本のロック&ポップス作品として分類され、後のリスナーからも「アイドルポップを超えた芸術性」として再評価を受けています 。

レガシーと現代的再評価

本作は“中森明菜3部作”の締めくくりとしてだけでなく、80年代J-POPが持つドラマ性とポップ性の融合を体現した名盤として語り継がれています。音質とアレンジの両面でオリジナルを超えるリマスターが施されるたび、ヴィンテージ・レコードの枠を超えて新たなファンを獲得し続けています 。音楽ストリーミングやハイレゾ配信でも根強い支持を集め、現在なお“幻想曲”は夢見るリスナーを別世界へ誘う一大叙事詩であり続けています。

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