アニバル・カルメロ・トロイロが紡ぐ黄金時代の珠玉タンゴ4選

このコラムでは、20世紀中頃のアルゼンチン・タンゴ黄金時代を代表するバンドネオン奏者アニバル・トロイロの人気曲4曲を取り上げ、その背景や録音エピソード、楽曲の魅力を詳しく解説します。トロイロが自身のオーケストラで1940年代に残した『Quejas de bandoneón』『Toda mi vida』『Sur』『La cumparsita』は、いずれもタンゴの定番として今なお愛され続けており、各曲が持つ叙情性や革新性、そして当時のダンス風潮との関わりを深掘りすることで、トロイロの音楽的遺産を多角的に味わうことができます。

はじめに

アニバル・カルメロ・トロイロ(通称「ピチュコ」)は、1914年7月11日にブエノスアイレスで生まれ、1975年5月18日に同地で逝去したアルゼンチンのバンドネオン奏者、作曲家、アレンジャー、オーケストラ指揮者です。彼が率いたオルケスタ・ティピカは、1940年代から1950年代にかけて社交ダンスシーンをリードし、ミロンガからコンサートスタイルへの移行期においても革新的な演奏を展開しました。

人気曲解説

1. Quejas de bandoneón

『Quejas de bandoneón』は、Juan de Dios Filibertoが1918年に作曲したタンゴ作品で、当初はピアノ用に書かれていましたが、トロイロは1944年9月27日に自身のオーケストラでアストル・ピアソラの編曲による演奏を録音し、バンドネオンの叙情的な響きを前面に押し出した決定版として知られるようになりました。以降、世界各地のタンゴオーケストラで定番曲とされ、その深い感情表現が多くの愛好家を魅了し続けています。

2. Toda mi vida

『Toda mi vida』は、1941年3月4日にトロイロ自身が作曲し、ホセ・マリア・コンツルシが作詞を手掛けたタンゴで、当時はフランシスコ・フィオレンティーノを歌手として録音されました。切なくも情熱的な歌詞とメロディは、ミロンガ(社交ダンス)において高い人気を博し、現代でも多くのタンゴ歌手がレパートリーとして取り上げる代表作となっています。

3. Sur

『Sur』(スペイン語で「南」)は、トロイロ作曲、オメロ・マンシが作詞を担当したタンゴで、1948年2月23日にエドムンド・リベロの歌唱で初めて録音されました。失われた愛やバリオ(庶民地区)への郷愁を叙情的に描写した歌詞は、ブエノスアイレス南部の風景と人々の人生を重ね合わせ、多くのタンゴ愛好家の心を捉え、シティタンゴの傑作とされています。

4. La cumparsita

『La cumparsita』は、ヘラルド・マトス・ロドリゲスが1916年に作曲し、1924年にパスカル・コンツルシが歌詞を付けた世界的に最も有名なタンゴですが、トロイロのオーケストラによる1943年11月5日のインストゥルメンタル録音は、その哀愁を帯びた表現力で特に高い評価を受けています。トロイロ版はバンドネオンのソロとオーケストラのダイナミクスが見事に融合し、タンゴのアンセムとしての地位を不動のものとしました。

おわりに

アニバル・トロイロが残したこれら4曲は、タンゴ黄金時代を象徴する名曲であり、バンドネオンの可能性を極限まで引き出した演奏と叙情的なアレンジが特徴です。情感豊かなメロディとリズムが融合するこれらの作品は、タンゴ初心者から玄人まで幅広い層に愛され続けており、今日でも演奏会やミロンガの定番レパートリーとして欠かせない存在となっています。


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