アストル・ピアソラのヌエボ・タンゴを象徴する4曲の深層解剖
アストル・ピアソラはアルゼンチン出身のバンドネオン奏者・作曲家で、伝統的なタンゴにジャズやクラシックの要素を融合させた「ヌエボ・タンゴ」を確立しました。本稿では彼の代表作4曲――『Libertango』『Adiós Nonino』『Oblivion』『Milonga del Ángel』――について、作曲背景や音楽的特徴、受容・影響を詳しく解説します。
1. Libertango
作曲の背景
『Libertango』は1974年にイタリア・ミラノで録音・発表されました。タイトルはスペイン語の「Libertad(自由)」と「tango(タンゴ)」を合成した造語で、クラシカルなタンゴからヌエボ・タンゴへの革新を象徴しています。
音楽的特徴と楽器編成
演奏時間は約2分49秒と短いながらも、緻密なリズムとモダンな和声が凝縮された構造が特徴です。初版の編成にはバンドネオン、ピアノ、エレクトリックギター、コントラバス、バイオリン、チェロなどが用いられ、従来のタンゴの編成を超えた多彩な音響を生み出しました。
受容と影響
この作品はヨーヨー・マやアル・ディ・メオラなど、クラシックやジャズ系アーティストにもカバーされ、世界的な人気を獲得しています。
2. Adiós Nonino
作曲の経緯
『Adiós Nonino』は1959年10月、ニューヨーク滞在中に父ヴィセンテ(愛称“ノニーノ”)の急逝を受け、追悼のために約30分で書き上げられた作品です。
メロディと構造
本曲は1954年にパリで作曲されたタンゴ『Nonino』のリズム部分を保持しつつ、新たに旋律を加筆・再構成したもので、深い郷愁と喪失感を喚起します。
後世への影響
哀愁を帯びた旋律はアルゼンチン亡命移民の心情を象徴すると評価され、世界中で多数のアレンジや録音が行われています。また、オランダ王室のロイヤルウェディングやフィギュアスケートのプログラムなど、セレモニーやパフォーマンスでも頻繁に用いられています。
3. Oblivion
制作と映画タイアップ
『Oblivion』は1982年に作曲され、当初はバンドネオン、ピアノ、コントラバスの小編成で発表されました。1984年にはマルコ・ベッロキオ監督の映画『Enrico IV』のサウンドトラックに採用され、映画音楽としても高い評価を得ました。
音楽分析
曲の所要時間は約4分で、ミロンガ由来のリズムを基調にしつつも、ゆったりとした旋律が「忘却(Oblivion)」のテーマと深く結びついています。
レコーディングとアレンジ
初版以降、多数の編曲が生まれ、ピアノソロ、クラリネット・オーケストラ編成、語り入りバージョンなどでも広く演奏され続けています。
4. Milonga del Ángel
エンジェル・シリーズの一部として
『Milonga del Ángel』は1965年に作曲された『天使の組曲(Serie del Ángel)』の第二楽章で、クインテート・ヌエボ・タンゴの編成でライブ録音された後、1986年のアルバム『Tango: Zero Hour』でも再録されています。
ミロンガのリズムと構成
本作はミロンガのリズムを基調とし、バンドネオンが抒情的に旋律を展開する一方、ヴァイオリンやギター、ピアノが自由な対話を繰り広げる構造が特徴です。
現代の演奏とレコーディング
多数の編曲・録音が存在し、チェンバロや弦楽アンサンブル、管弦楽、室内楽アンサンブルなど、多様な編成で演奏されています。
以上4曲はそれぞれに異なる作曲背景や編成、影響を持ちつつも、ピアソラが築いたヌエボ・タンゴの多彩な表現世界を象徴しています。彼の音楽を改めて深く聴き込むことで、タンゴの枠を超えた普遍的な感動を味わうことができるでしょう。
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