建築・土木で使われる鋼管の種類を徹底解説|規格・特徴・用途まとめ
鋼管は、建築設備、土木工事、プラント配管、構造材など、幅広い分野で使用される基本素材です。用途に応じて多くの種類が存在し、強度、耐食性、加工性、コストなどが異なります。本記事では、建築・土木現場で特に使用される鋼管の種類を体系的に解説します。
鋼管の種類は大きく3つに分類される
鋼管の種類は、主に以下の3つの視点で分類できます。
- 製造方法による分類(シームレス・溶接鋼管)
- 用途・規格による分類(SGP・STK・STPG・SUSなど)
- 素材(炭素鋼・ステンレス鋼・合金鋼など)
それぞれの分類を交えて、建築・土木現場で実際に使われる鋼管について詳しく見ていきます。
1. 製造方法による鋼管の種類
■ シームレス鋼管(継目無鋼管)
鋼塊を加熱・穿孔し、継目のない円筒状に成形した鋼管。
継ぎ目が存在しないため、高圧配管・高温配管に適しています。
特徴
- 高い耐圧性と強度
- 溶接部がないため信頼性が高い
- 高温環境でも使用可能
- 価格はやや高め
主な規格
- STPG370/410(配管用)
- SUS304TP-A/SUS316TP(ステンレス鋼管)
- STPA(高温高圧用)
用途
- ボイラー配管
- 冷温水・蒸気ライン
- 油圧・ガス配管など高圧系
■ 溶接鋼管(電縫鋼管/アーク溶接鋼管)
鋼板を丸めて溶接し管状にした鋼管。
安価で大量生産が可能で、建築・土木現場で最も使用されます。
特徴
- コストが安く調達が容易
- サイズ展開が豊富
- 建築・土木・設備で汎用的に使用
- 溶接部の耐圧性はシームレスに比べやや劣る
主な規格
- SGP(一般配管用炭素鋼鋼管)
- STK(一般構造用炭素鋼鋼管)
- STPW(溶接鋼管)
- 電線管(E管・C管)
用途
- 給水・給湯・消火設備
- 構造材(手すり・架台・鉄骨補強)
- 土木仮設(単管パイプ・支保工)
- 電気工事(配線用鋼管)
2. 用途・規格で分類される鋼管の種類
建築・土木では、JIS規格で用途が明確に分類されています。
■ SGP(一般配管用炭素鋼鋼管)
もっとも現場でよく使われる鋼管。
水・空気・蒸気など一般的な流体に使用されます。
特徴
- 価格が安い
- 加工性が高い(ネジ加工・溶接が容易)
- 亜鉛メッキ(白ガス管)も選べる
用途
- 給水・給湯、空気配管
- スプリンクラー配管
- 支持金物・架台
■ STK(一般構造用炭素鋼鋼管)
構造物を支えるための鋼管。
強度と靭性が重視されます。
特徴
- 曲げ強度・圧縮強度が高い
- サイズが豊富
- 足場や鉄骨の補強に最適
用途
- 仮設単管パイプ
- 手すり・支柱
- 建築鉄骨補強材
■ STPG(圧力配管用炭素鋼鋼管)
圧力がかかる配管に使用される高品質鋼管。
特徴
- 耐圧性が高い
- 蒸気・高温配管に対応
- シームレス・溶接どちらも存在
用途
- 冷温水配管
- ボイラー配管
- プラントの圧力配管
■ ステンレス鋼管(SUS304/316)
耐食性に優れ、サビに強い鋼管。
食品工場・病院・薬品工場の配管で必須。
特徴
- 錆びにくく長寿命
- 衛生的でクリーンルームに適合
- 溶接・フランジ接続など施工方法も広い
用途
- 給水・純水ライン
- 化学薬品配管
- 医療施設・食品工場
■ ライニング鋼管(樹脂ライニング)
SGP鋼管の内面に樹脂をライニングした鋼管。
赤水防止用途で学校・病院・集合住宅でも使用。
種類
- 硬質塩化ビニルライニング鋼管
- ポリエチレンライニング鋼管
- エポキシ樹脂ライニング鋼管
用途
- 生活用水配管
- 給水立て管・横引き管
- 長寿命化対策
■ 電線管(E管・C管)
電気工事用の鋼管。
特徴
- E管:厚鋼電線管(強度が高い)
- C管:薄鋼電線管(施工性が良い)
- ケーブル保護に使用される
用途
- 露出配管
- 機械室・電気室のケーブル保護
■ 鋼管杭(鋼管矢板・鋼管杭)
土木・基礎工事の代表格。
特徴
- 高強度で長尺が可能
- ねじり・曲げにも強い
- 大規模構造物の基礎に使用
用途
- 橋梁
- 高層建物の基礎
- 地盤補強
3. 素材による鋼管の分類
素材は性能・用途に直結する重要な要素です。
■ 炭素鋼鋼管
もっとも一般的で安価な鋼管。
建築設備・土木仮設・構造材まで広く使用。
■ ステンレス鋼管
耐食性・衛生性が求められる場所に必須。
■ 合金鋼管(クロムモリブデン鋼など)
高温高圧配管・ボイラーなど特殊用途に使用。
鋼管選定のポイント
鋼管を選ぶ際は次の条件が重要です。
- 流体(空気・蒸気・薬品・水など)
- 圧力・温度
- 腐食環境
- 施工方法(溶接・ねじ・メカニカル接合)
- コスト
- メンテナンス性(長寿命化対策)
まとめ
鋼管には多くの種類があり、製造方法、素材、規格、用途によって性能が大きく異なります。建築・土木分野では、SGP、STK、STPG、ステンレス鋼管、ライニング鋼管などが特に多く利用されます。適切な鋼管選定は、安全性、施工性、コスト、耐久性に直結するため、用途に応じた正しい知識が不可欠です。
参考文献
- https://www.jfe-steel.co.jp/
- https://www.jsa.or.jp/
- https://www.gfps.com/
- https://www.kobelco.co.jp/
- https://www.meti.go.jp/


