建築・土木で使われる鋼管の基礎知識|種類・特徴・用途まで徹底解説

鋼管(こうかん)は、建築・土木分野において極めて幅広く利用される材料です。高い強度と加工性、耐久性を備え、構造部材から配管、仮設材、電気設備、地盤補強まで多岐にわたる用途を持ちます。本記事では、鋼管の基本的な定義から種類・特性・代表的な用途・選定時のポイントまでを詳しく解説します。


鋼管とは?

鋼管とは、鋼(スチール)を円筒形に成形した管材の総称です。鋼の持つ強度・靭性・耐久性を生かし、建築・土木・プラント設備・エネルギー分野など、多くの産業で不可欠な素材となっています。

鋼管は大きく以下の特徴を持ちます。

  • 高強度・高剛性で優れた耐圧性がある
  • 溶接・ネジ切り・曲げ加工などの汎用的な加工が可能
  • 腐食対策を施すことで長寿命化が容易
  • サイズ規格が豊富で、用途に応じた選定がしやすい

鋼管の主な種類

鋼管は製造方法、材質、用途によって分類されます。それぞれの特徴を理解することで、適切な選定や設計に役立ちます。

1. 製造方法による分類

● シームレス鋼管(継目無鋼管)

鋼塊を穿孔し、継ぎ目のない円筒状に成形した鋼管。
特徴:

  • 高圧配管、油圧配管など安全性が求められる用途に最適
  • 継ぎ目がないため、耐圧性・耐食性に優れる

代表規格:SUS系ステンレス鋼管(SUS304TP-A など)、炭素鋼継目無鋼管(STPG370 など)


● 溶接鋼管(電縫鋼管・アーク溶接鋼管)

鋼板を丸めて溶接し、筒状に成形した鋼管。
特徴:

  • 量産が容易で安価
  • 一般建築配管、構造用鋼管、ダクト支持など幅広く使用

代表規格:SGP、STK、STW、鋼製電線管(E管・C管)


2. 材質による分類

● 炭素鋼(カーボンスチール)

もっとも一般的。
例:SGP(配管用炭素鋼鋼管)、STK(構造用炭素鋼鋼管)
用途:給水・給湯、消火設備、ガス、構造材など


● ステンレス鋼管

耐食性が高く、サビに強い。
例:SUS304、SUS316
用途:食品工場、病院、化学プラント、屋外配管など


● 合金鋼管

高温や高圧環境で使用される特殊鋼。
例:クロムモリブデン鋼管(STBA)など
用途:ボイラー、熱交換器、高温配管


用途別に見る鋼管の使われ方

鋼管は建築・土木のあらゆる場面で使われます。以下に代表的な用途を整理します。

● 建築設備配管

  • 給水・給湯
  • 冷暖房(冷温水・蒸気)
  • 消火設備(連結送水管・スプリンクラー)
  • 排水通気

● 土木分野

  • 仮設材(単管パイプ、支保工)
  • 杭基礎の鋼管杭
  • 水道・ガス・下水の埋設配管

● 構造部材

  • 鉄骨の柱・梁補強
  • 手すり・架台・支持金物
  • 足場材

● 工場・プラント分野

  • 高温・高圧配管
  • 化学薬品ライン
  • 食品衛生ライン(ステンレス)

鋼管選定のポイント

鋼管を選定する際は、以下の条件を総合的に検討する必要があります。

1. 流体の種類と性質

  • 水、蒸気、ガス、化学薬品など
    → 腐食性が強い場合は SUS316 などを選定

2. 圧力・温度条件

  • 高圧ならシームレス鋼管
  • 高温配管なら合金鋼管

3. 施工方法

  • 溶接接合
  • ネジ接合
  • メカニカルジョイント(ハウジング etc.)
    → 工期・現場環境で最適な方式を選ぶ

4. コスト

  • SGPは安価
  • SUSは高価だが長寿命
  • 仕上げ・メンテナンスも含めて検討

5. 耐久性・メンテナンス性

  • 錆びやすい環境ではステンレスやライニング鋼管が有利

鋼管の表面処理

環境に応じた表面処理は耐久性に直結します。

  • 溶融亜鉛メッキ鋼管(白ガス管):屋外や湿気の多い場所で使用
  • 塗装(防錆塗装・耐熱塗装):腐食・熱対策
  • ライニング加工(樹脂ライニング):赤水防止

鋼管のサイズ表示(呼び径)

鋼管は 呼び径(A 又は φ) で管理されます。

例:

  • 13A(1/2インチ):一般的な家庭給水
  • 50A(2インチ):消火設備・工場配管
  • 100A(4インチ):メイン管路

呼び径は外径とは異なるため、規格表の確認が不可欠です。


まとめ

鋼管は建築・土木・設備・プラントなど、あらゆる分野で使われる基本かつ重要な素材です。製造方法、材質、用途、耐圧・耐熱性、表面処理など、正しい知識を持つことで、安全で合理的な設計・施工が可能になります。特に近年は耐食性や施工性を高めた多様な鋼管が登場しており、現場のニーズに合わせた適切な選定が求められます。


参考文献

※クリック可能なリンク形式でまとめています。