エンリコ・カルーソ入門:初心者〜コレクター必携のおすすめ名盤・聴きどころと盤選びのポイント
イントロダクション — エンリコ・カルーソの魅力
エンリコ・カルーソ(Enrico Caruso, 1873–1921)は、20世紀初頭のイタリアを代表するテナーであり、レコーディング史における最重要人物の一人です。彼の声は当時の録音技術を超えて多くの人々を魅了し、オペラの表現性や発声法に与えた影響は計り知れません。本コラムでは、カルーソ入門からコレクター向けの名盤まで、代表的なレコード(および再発盤)を厳選して紹介し、それぞれの聴きどころや選び方のポイントを解説します。
おすすめレコード(入門編)
ベスト・コンピレーション(初心者向け)
「Vesti la giubba」「O sole mio」「La donna è mobile」など、カルーソの代表曲を1枚で楽しめるコンピレーションはまず手に取りやすい選択です。音源は初期のアコースティック録音ですが、彼の声の色・表現・フレージングが分かりやすくまとまっています。複数レーベルから出ているため、ライナーノーツや音源の出典がしっかりしたものを選びましょう。
「O sole mio」「Vesti la giubba」単曲収録の名演集
これらの有名曲は録音ごとに表情が異なるため、単曲集でも楽しめます。まずは代表的な一録音を聴き、次に他の録音と比較するとカルーソの解釈の幅が分かります。
おすすめレコード(コレクター/研究者向け)
全集・完全盤(Complete Recordings)
カルーソの全録音を網羅したボックスセットは、時代順に彼の声や解釈の変化を追えるため、研究目的や本格的なコレクションに最適です。全集は複数レーベル(RCA、EMI、Naxos Historical、Marstonなど)から刊行されているので、音源の出典表示や復刻時の音質処理、注釈の充実度で選ぶのがよいでしょう。
時代別選集(初期録音・晩年録音を比較するセット)
カルーソの録音はおおむね「初期(1900年代前半)」と「晩年(1910年代〜1920年)」で声の色が変わります。これらを対照的に収めた再発盤は、歌手としての成熟や身体的変化が音にどう現れるかを聴き分けるのに役立ちます。
代表曲とそれぞれの聴きどころ
Vesti la giubba(「道化師」より)
カルーソの代名詞ともいえる一曲。劇的なクライマックスでの「叫び」とも言える表現が魅力です。歌詞の内面を声の色やダイナミクスで表現する技術を観察してください。
O sole mio(ナポリ民謡)
オペラ以外のレパートリーでもカルーソは高い評価を得ました。情感豊かなフレージングと明晰なイタリア語の母音処理が耳に残ります。
La donna è mobile(「リゴレット」より)
軽快なナンバーでもカルーソの声の美しさと明瞭なアーティキュレーションが際立ちます。旋律の歌い回しの工夫に注目してください。
E lucevan le stelle(「トスカ」より)
抒情的で内省的な場面。ポルタメントやビブラートの使い方、音の減衰の自然さなど、カルーソの“歌心”がよくわかる録音です。
聴くときのポイント(表現・技術の見どころ)
母音の鮮明さと語尾の処理
カルーソは母音を非常に整えて歌います。語尾まで明確に響かせるので、音声の核(フォーカス)や共鳴の仕方を確認してください。フレージングの自然さ
フレーズの呼吸配置や語感のつなぎ方が巧みで、短い録音時間の中でもドラマを作り出します。フレーズの始めと終わりの張り・緩めを聴き分けましょう。ポルタメントと装飾
当時の美学に基づくポルタメントや細かな装飾が多用されます。現代の演奏習慣と比較して、どのように感情を表現しているかを観察すると興味深いです。録音技術による制約を踏まえる
カルーソの録音はアコースティック録音が中心で、周波数帯域の制約やダイナミクスの歪みがあります。音質だけで評価せず、表現の核をつかむことが重要です。解釈の変遷を追う
同一曲の年代違い録音を聴き比べると、声質だけでなく表現の変化(例えばよりドラマティックになる/より円熟するなど)がわかります。全集や時代別編集盤を活用してください。
盤の選び方:実用的アドバイス
ライナーノーツと出典表示を確認する
どの原盤(Victor・Gramophone 等)から復刻したか、オリジナル・マスターがどう扱われているかは重要です。注釈が充実している再発盤を選ぶと良いでしょう。リマスタリングの方針をチェック
ノイズ除去やEQの過度な補正が施されていると音色が不自然になることがあります。オリジナルの雰囲気を保ちつつノイズ処理が控えめな復刻が好ましいです。複数バージョンを比較する
同じ曲でも再発ごとに音質が異なることが多いので、可能なら異なる復刻盤を聴き比べると良い発見があります。
カルーソのレガシー — 今日に残る影響
カルーソは「録音によって声が永遠に残る」ことを世に知らしめただけでなく、演唱スタイルやフレージング、舞台上のカリスマ性で後世のテナーに多大な影響を与えました。録音を通じて彼の解釈や声の個性を学ぶことは、古典的歌唱表現を理解する上で非常に有益です。
参考文献
- Enrico Caruso — Wikipedia(日本語)
- Enrico Caruso — Naxos(アーティスト紹介・ディスコグラフィ)
- Library of Congress — 検索結果(Caruso 関連コレクション)
- Internet Archive — Enrico Caruso(パブリックドメイン音源など)
- Marston Records — 歴史的録音復刻の情報(参考)
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