エアチャンバーとは何か?水撃によるトラブルを防ぐ重要な設備をわかりやすく解説

エアチャンバーとは

エアチャンバーとは、給水配管に取り付けられる「空気を利用して水圧変動を吸収する装置」のことです。
建物内の蛇口・電磁弁・機器が急に閉止されることで起きる“水撃作用(ウォーターハンマー)”を緩和し、配管や機器を保護する役割があります。

給水設備だけでなく、給湯配管や工業用配管でも使用される重要な安全装置の一つです。


なぜエアチャンバーが必要なのか?

水撃作用とは

蛇口・電磁弁・バルブなどが急閉した瞬間、流れていた水の慣性力が逃げ場を失い、配管内に瞬間的な高圧が発生します。
これを**水撃作用(ウォーターハンマー)**と言い、以下のトラブルを引き起こします。

  • 配管の振動・騒音(ゴンッ、カンッという音)
  • 逆止弁やバルブの破損
  • 給湯器・ポンプの故障
  • 配管接合部の水漏れ
  • 圧力上昇による重大事故

エアチャンバーは、この水撃力を空気のクッションで吸収し、配管系統を保護する役割を持っています。


エアチャンバーの仕組み

一般的なエアチャンバーは以下のような構造です。

  • 上部:空気層(クッションとして機能)
  • 下部:水と接する部分
  • 本体:縦型または横型の金属製チャンバー(ステンレスが多い)

水撃が発生すると、水がエアチャンバー内部に押し込まれ、空気層が圧縮されることで衝撃を吸収します。


エアチャンバーの種類

1. シンプルタイプ(空気溜まり式)

古くから使われる簡易型。
配管の立ち上がり部に空気溜まりを設け、その空気をクッションとして利用する方式。

メリット

  • 低コスト
  • 施工が簡単

デメリット

  • 長期使用で空気が失われる
  • 効果が薄れやすい(定期的なメンテナンスが必要)

2. ダイヤフラム式(メンブレン式)

内部にゴム膜(ダイヤフラム)があり、水と空気の接触を防ぐタイプ。

メリット

  • 空気が抜けないため効果が長持ち
  • メンテナンス性が高い
  • 現代の給水設備で主流

用途
蛇口・食洗機・洗濯機・電磁弁設備・ポンプ周りなど振動が出やすい箇所


3. ピストン式

ピストンで水と空気を完全に分離するタイプ。
耐久性が高く、工業用設備や高圧配管で使用されることが多い。


どこにエアチャンバーを設置する?

一般的な設置例

  • 洗濯機の給水栓
  • 食洗機の電磁弁近く
  • 給水ポンプ二次側
  • 逆止弁の近く
  • ボールタップがあるタンク周り
  • 給湯器接続部の周辺

振動・水撃が起きやすい部位に設置するのが基本です。


エアチャンバーのメリット

  • 水撃による配管の破損を防止
  • バルブ・逆止弁・ポンプなどの故障リスク低減
  • 給水・給湯配管の騒音を抑制
  • 機器寿命を延ばす
  • トラブルが起きやすい住宅リフォームや店舗設備で有効

設備トラブルの原因上位である「水撃音・振動」を防ぐために欠かせない装置です。


施工時・設置時の注意点

1. 配管径・圧力に応じた容量選定

エアチャンバーは「大きければ良い」わけではなく、配管圧力や機器の仕様に応じた適切な容量を選定する必要があります。

2. できるだけバルブや電磁弁の近くに設置

衝撃元から離れていると効果が薄れます。
特に電磁弁は急閉動作が多いため要注意。

3. 定期的な交換(特にシンプルタイプ)

空気が抜けると効果がなくなるため、数年単位での点検・交換が推奨されます。

4. 水平・垂直の方向

機器仕様に応じて設置方向が決められている場合があるため、施工前に必ず確認が必要です。


エアチャンバーと間違えやすい設備

エア抜き(エアベント)

目的:配管内の空気を排出
エアチャンバー:衝撃を吸収する装置
役割が全く異なります。

アキュムレータ(圧力タンク)

目的:圧力安定・ポンプの頻繁な起動を防止
エアチャンバーとは似ているが目的が異なる機器。


エアチャンバーが建物品質に与える影響

エアチャンバーの設置は、建物の給水・給湯設備の安全性と耐久性を高めます。

特に期待できる効果は次のとおりです。

  • 配管破損の予防
  • 機器寿命の延長
  • 騒音トラブルの解消
  • 管理コストの削減

水回りの機器が増えた現代の建築において、エアチャンバーは非常に重要な役割を担っています。


まとめ

エアチャンバーとは、給水・給湯設備で発生する水撃作用(ウォーターハンマー)を緩和し、配管・機器を保護するために設置される装置です。
住宅から商業施設、工場設備まで幅広く使用され、騒音防止・安全性向上・トラブル予防に欠かせない存在です。

適切な容量選定と設置位置が効果を最大限に発揮するため、設備設計・施工の知識が重要です。


参考文献(クリックして開く)