QMSとは何か?建築・土木の品質管理を支える仕組みをわかりやすく解説

QMSとは

QMS(Quality Management System:品質マネジメントシステム)とは、組織が提供する製品・工事・サービスの品質を継続的に向上させるための仕組みや管理体系のことです。
建築・土木業界では、施工品質・安全性・法令遵守を確保するために不可欠な概念であり、企業の信頼性にも直結します。

特にISO 9001に基づくQMSの構築は多くの建設会社で行われており、公共工事の入札要件になるケースもあります。


なぜ建築・土木にQMSが必要なのか?

1. 施工品質の安定化

建設工事は人・材料・機械・現場環境に左右されやすく、品質のばらつきが起こりやすい業種です。
QMSの導入により、作業手順や検査基準が統一化され、誰が作業しても一定品質を確保できる仕組みが整います。

2. クレーム・瑕疵の防止

品質不良は補修費用や信頼低下につながります。
QMSは「ミスの未然防止」「原因の究明」「再発防止」の流れを体系化し、瑕疵トラブルを大幅に減らすことができます。

3. 労働安全の向上

品質管理は安全管理とも密接に関連しています。
手順書やリスクアセスメントを通じて、現場の安全性を高める効果があります。

4. 入札・企業評価で有利になる

国土交通省の総合評価方式の入札において、ISO9001取得企業は加点されることがあります。
企業としての信頼性向上にもつながります。


QMSの基本要素

1. 品質方針

企業が「どのような品質を目指すのか」を明確にした方針。
経営者によって示され、全従業員が共有することが求められます。

2. マニュアル・手順書

作業工程・施工手順・検査方法などを文書化したもの。
誰が読んでも同じ品質で作業できるための基礎になります。

3. 記録(エビデンス)

施工写真、検査記録、材料証明書、出来形記録など。
品質を証明する書類であり、公共工事では必須。

4. 内部監査

自社のQMSが有効に機能しているかを定期的に評価する仕組み。

5. 是正・予防処置

不具合が発生した際に、

  • 原因分析
  • 対策実施
  • 再発防止策の検討
    を行うサイクルのこと。

QMSとISO9001の関係

ISO9001は「品質マネジメントシステム」に関する国際規格であり、QMSを客観的に評価する基準となります。

建設業でISO9001を導入するメリットは次のとおりです。

  • 工程管理の標準化
  • 施工計画書・手順書の精度向上
  • 品質記録の体系化
  • 顧客・発注者への信頼度向上
  • 入札での加点やイメージアップ

ISO9001はあくまで「型」であり、実際に機能させるかどうかは企業の運用次第です。


建築・土木におけるQMSの実例

1. 施工管理(プロジェクト管理)

  • 施工計画書
  • 品質管理計画
  • 危険予知活動(KY)
  • 工程管理
  • 出来形・品質検査

これらを体系化して記録・改善するのがQMSの役割です。

2. 材料管理

  • コンクリートの配合計画
  • 鋼材ミルシート
  • 配管機器の検査成績書

材料品質は建物性能に直結するため、QMSで管理します。

3. 外注管理

  • 協力会社の審査
  • 技術者の資格確認
  • 外注検査・評価

品質は下請けの施工品質にも依存するため、管理は必須です。


QMS導入によるメリット

品質の「見える化」

記録管理により、工程・材料・検査が明確になり、品質の裏付けができます。

ミスの減少

手順の統一とチェック体制の整備により、施工ミスや漏れを防止できます。

企業価値の向上

公共工事の評価点向上や元請企業からの信頼獲得につながります。

事業継続性の向上

属人的な管理から脱却し、組織として品質を保ち続ける仕組みが作れます。


QMS構築・運用のポイント

現場の意見を取り入れる

現場に合わない書類はただの負担になります。
実務者が使いやすい仕組みが重要です。

PDCAサイクルを徹底

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • Check(評価)
  • Act(改善)

品質は継続的な改善が前提です。

文書は必要最低限に

紙の山では運用できません。
デジタル化も有効です。


まとめ

QMSとは、企業が高い品質を安定して提供するための管理体系であり、建築・土木の施工現場で欠かせない仕組みです。
施工品質の向上、安全確保、ミスの削減、企業評価の向上といった多くのメリットがあり、ISO9001取得によって外部からの信用力も高まります。

建設業における品質は、企業の価値そのもの。
QMSを適切に運用することで、長期的な信頼と競争力につながります。


参考文献