チャーリー・ヘイデン入門:歌うベースの魅力と聴くべき名盤ガイド
Charlie Haden(チャーリー・ヘイデン) — プロフィール
Charlie Haden(チャーリー・ヘイデン、1937年8月6日 - 2014年7月11日)は、アメリカのダブルベース奏者、作曲家、バンドリーダー。1950年代末から2010年代まで活動を続け、ジャズ史において「歌うような」ベース、深い音色、そして政治的・人道的なメッセージを音楽に込めたことでも知られます。オーネット・コールマンのカルテットで頭角を現し、その後リベレーション・ミュージック・オーケストラ(Liberation Music Orchestra)やQuartet Westなど多彩なプロジェクトを率いました。
経歴の概略と音楽的歩み
- 幼少〜初期:アイオワ州出身。子どもの頃から音楽に親しみ、家族とともにフォークやカントリーの演奏経験を積みた後、ロサンゼルスに移りジャズの世界に入ります。
- オーネット・コールマンとの協働(1959年頃〜):オーネットのカルテットに加わり、〈The Shape of Jazz to Come〉(1959)などの革新的な録音に参加。ハーモニーにとらわれない自由なアプローチ(フリー・ジャズ)において重要な役割を果たしました。
- 政治的・社会的表現:1969年に結成したリベレーション・ミュージック・オーケストラ(指揮・編曲は主にカーラ・ブレイ)が代表例。スペイン内戦や反戦歌などをジャズの編成で再構築し、音楽と政治を結びつける試みを実践しました。
- Quartet West(1980年代〜):映画音楽的な情緒や黒白映画のムードを持ち込んだグループ。ポップスやスタンダードを映画のワンシーンのように演奏することで、ヘイデンの「歌心」がさらに際立ちました。
- 幅広いコラボレーション:キース・ジャレットのアメリカン・カルテット、ゴンサロ・ルバルカバ、ハンク・ジョーンズらとのデュオ/トリオ作品、さらにはフォーク〜ルーツ音楽を扱ったアルバムまで、多様な共演を残しています。
演奏スタイルと魅力 — なぜ多くの人を惹きつけるのか
- 「歌う」ベースライン:ヘイデンの最大の特徴は、ベースがメロディを語るような「歌心」。単に和音を支えるだけでなく、シンプルでいて強く印象に残るフレーズで楽曲の感情を導きます。
- 音色とタッチ:深く豊かな低音と、弓(アルコ)と指(ピチカート)を状況に応じて使い分ける柔軟さ。音の立ち上がりや減衰のコントロールに優れ、余韻を残す演奏が得意です。
- スペースの取り方:音を詰め込みすぎず、沈黙や間(ま)を効果的に使うことで、ソロやアンサンブルの「呼吸」を作ります。これはフリー・ジャズの文脈でも、バラードや映画的アレンジでも一貫した魅力です。
- 政治性と人間性:音楽に対する社会的・人道的な視点を明確に持ち、リベレーション・ミュージック・オーケストラのようなプロジェクトでメッセージを伝えました。音楽が思想的な力を持ちうることを具体化した数少ないアーティストの一人です。
- 幅の広さ:アヴァンギャルドからラグタイム的なフォークまで、ジャンルを横断する柔軟性。ベース奏者としての技術だけでなく「音楽家」としての寛容さが、聴き手の層を広げました。
代表曲・名盤(初めて聴く人に勧めたい盤)
- The Shape of Jazz to Come(Ornette Coleman, 1959) — ヘイデンが参加した歴史的名盤。ジャズの概念を更新した演奏の中で、彼のベースが重要な役割を果たします。
- Liberation Music Orchestra(1969) — ヘイデン主導の政治的プロジェクトの第1作目。編曲のスケール感、重層的な表現、メッセージ性が強く出た傑作です。
- The Ballad of the Fallen(1983) — LMOの代表作の一つ。故国や戦争、亡命といったテーマを扱い、叙情性と強い社会性が融合しています。
- Charlie Haden & Gonzalo Rubalcaba — Nocturne(2001) — ラテン音楽的な美を持つデュオ作。静かな夜の世界を描き、ヘイデンの歌心が抑制的で深い形で現れます。
- Charlie Haden Quartet West(1987 以降の作品群) — 映画音楽的な情緒、ムーディなアレンジ、スタンダードの新しい解釈が楽しめます。Quartet West名義の作品群は情緒派リスナーに特におすすめです。
- Rambling Boy(2008) — ルーツ/フォークへの回帰を試みたアルバム。ヘイデンの幼少期の音楽背景が見える一枚で、人間的な温かみがあふれます。
注目のコラボレーションと影響
- オーネット・コールマン:自由な即興の世界での重要パートナー。ヘイデンはコールマンのアプローチを支えることで、ベースの可能性を拡張しました。
- キース・ジャレット(American Quartet):ヘイデンはここでもリズムとハーモニーの柔軟な支持役を務め、グループの創造的なサウンドに寄与しました。
- カーラ・ブレイ:長年の共同作業者であり、LMOでは編曲や指揮で強い結びつきを持ちました。
- 若い世代への影響:多くのベーシストやジャズ奏者がヘイデンの「フレーズの歌わせ方」やサウンド作りを学んでおり、現代ジャズのベース奏法に大きな影響を残しました。
聴きどころ/入門のコツ
- まずはオーネット・コールマンの初期録音(The Shape of Jazz to Comeなど)でヘイデンの「自由」な伴奏を聴く。
- 次にLiberation Music Orchestraでヘイデンの思想・表現の側面を体感する。曲の背景(歴史や歌の由来)を少し調べると理解が深まります。
- 静かなデュオ作品(Nocturneなど)で音色の美しさと余白の使い方を味わう。ヘイデンは「弾く」より「歌わせる」ことを重視するので、低音の余韻やフレージングに注目してください。
- Quartet Westの作品では、映画的なムード作りやメロディアスな解釈に耳を傾けると、ヘイデンの「語り口」がより身近に感じられます。
まとめ
Charlie Hadenは、技術的な巧さだけでなく「どう歌うか」を常に問い続けたベーシストです。フリー・ジャズの最前線で革新を支え、同時に社会的メッセージを音楽に込めることで聴衆の心に訴えかけました。深く暖かい音色、余白を活かすセンス、そしてジャンルを越える寛容さ——これらがヘイデンを単なる名手以上の存在にしています。はじめて聴く人には、オーネット期→LMO→NocturneやQuartet Westという流れで追うことをおすすめします。
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参考文献
- Charlie Haden - Wikipedia
- Charlie Haden Biography — AllMusic
- Charlie Haden obituary — The Guardian
- Charlie Haden, Jazz Bassist And Band Leader, Dies At 76 — NPR


